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魔力使いのまったり冒険者クライド  作者: 大野半兵衛


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第88話 最後の面会

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 第88話 最後の面会

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 メッサーラ子爵から話を聞き、屋敷に泊めてもらい、宰相に会うことになった。

 朝一で城に入ると、ノータイムで宰相の部屋に案内される。宰相の部屋の前で待っていた人たちに睨まれたんですけど……。


「久しぶりだね、クライド・アアメンター」

「ご無沙汰しています」

「遺跡調査の件、色々聞いているよ。かなり多くの遺物が発見され、我が国に利益をもたらしてくれたようだ。感謝する」

「いえいえ。あれは趣味の一環でやったことですから」

「趣味か、それで大規模な、しかも手つかずの遺跡を発見し、多くの遺物を持ち帰るのだから、君の手腕には感服するよ」


 宰相から褒め殺しに遭う。


「なんでも今度はSSSランクに昇格するとか。おめでとう」


 さすがは宰相、お耳が早いことで。


「昇格の話はありますが、決まったわけじゃないです」

「そうでもないと思うがね。昨日のうちに国王陛下の承認はすでに出ているから、すぐに昇格試験の話があると思う」


 え、国王の承認がもう出たの? SSS昇格の話が出たのが昨日なのに? 昨日のうちに国王が承認? どんだけ早いんだよ!?

 SSSランクは国王と本部長クラスの承認があれば、昇格試験を受けることができるらしいが、昇格試験の内容はまだ聞いていない。


「さて、本題だが」

「ベルデナーグ家のことですね」

「そのベルデナーグ家を継ぎたくないそうだね」

「せっかく冒険者として自由に生きているのです。煩わしいことが多い貴族には、戻りたくはないですね」

「そう思わせておいてからのー、受諾、は?」


 どこの芸人だよ? あんた宰相だろ?


「ないです」

「そうか……残念だ。では、1つ提案というか、頼みがあるのだが」

「頼み? なんですか? できることなら、善処します」

「ベルデナーグの家臣と使用人で、まともな者たちを引き取ってくれないかね」

「ん? まとも、と言いますと……?」

「王都の屋敷では、コールギウス他3名、領地のほうで5名、合わせて8名を引き取ってくれると、助かるのだがね」


 メッサーラ子爵からリストを受け取る。目を通すと、コールギウス他7人の名前は全員知っている。この8人はクライド君の記憶でも、ちゃんとした家臣と使用人だった。


「なぜこの8人を?」

「ベルデナーグ伯爵親子を捕縛するにあたり、他の者の身元もしっかり調べた。その際に多くの不正が明らかになり、そういった不正にかかわってない者がその8名だったのだ」


 仮にも伯爵家だから、家臣や使用人の数は100人を下らない。それなのにたった8人しかまともな人がいないとか……。あの親子が上だから、まともな人材が育たなかった……いや、その前にまともな人事ができてなかったんだろうな。


「その8名とその家族を路頭に迷わせるのは、心苦しい。そこで、伯爵位を継ぐ継がないは別としても、君にその8名を任せたいと思ったのだ」

「しかし、俺はしがない冒険者ですし、ホルトンに拠点を構えています。伯爵家に仕えていた人が俺の下で働きたいと言うでしょうか?」

「それなら問題はない。君の下で働きたいと意思表示した者しか、そのリストには載っていない」

「……そうですか。分かりました。この8人とその家族は俺のほうで引き取ります」


 ホルトンの家の管理をしてもらう人を雇おうと思っていたところだ、コールギウスなら適任だからね。


「そうか、それはよかった! 感謝する」

「ちなみに、その他の人たちはどうなったのですか?」

「多少のことは目をつむり身分の剥奪だけで済ましているが、看過できないことをしていた者らは奴隷として鉱山送りにした」


 細かく聞いたら、6割くらいが鉱山送りになったそうだ。酷い状態だったのがそれだけで分かる。


「君の父と弟に、会っていくかね?」


 俺はまったく未練も何もないけど、クライド君はそうじゃない。あの2人を最後まで肉親だと思って死んでいった。

 なんでそこまであの2人をと思うのだが、クライド君は家族の絆というものに飢えていたのかもしれないな。


「そうですね。会わせていただけますか」

「分かった。メッサーラ君」


 メッサーラ子爵についていくと、地下へと入っていった。

 地下牢に幽閉されているのね。貴族なのに、すごく雑な扱いなんだ。

 いくつもドアを通過し、至った場所はまさに監獄だった。煌びやかな城の地下にこんな陰湿な場所があるとはなー。


「君の父は既に正気を失っている。弟のほうは元々正気だったのか疑問だ」


 俺もそんな疑問を持っている。気が合うね、メッサーラ子爵。

 鉄格子の向こうに伯爵がいた。目が逝ってしまっていて、壁に向かってブツブツ何かを呟いている。


「時々奇声を発しているらしい」

「そうですか」

「この人は、どうなりますか?」

「貴族なのに闇ギルドを使っていたからね、死罪は免れないよ」

「そうですか……もう二度と会うこともないので、5、6発殴っていいですか?」

「え!? ……それは」

「冗談です」

「そ、そうか」


 俺は伯爵に声をかけなかった。何を言えばいいのか、俺では分からないのだ。


 ゴッガイルは冷たい床の上でふて寝していた。

 俺たちが近づくと、目を開けた。虚ろな目だったが、数秒後にカッと見開き、飛び上がるように起きて鉄格子越しの俺に迫った。


「貴様! クライドフェールン!」


 飛びかかってきたゴッガイルは、鉄格子にぶつかって止まる。

 伸ばされた腕は、酷く汚れていた。


「ゴッガイル。お前はこんな末路が希望だったのか?」

「貴様のせいだ! 貴様がいなければ!」


 まともな神経じゃない。全部俺のせいにして、自分の行動を振り返らないのでは、更生することもないだろう。

 もっとも、この世界において犯罪者に更生など望んでいない。報復的懲罰や罪に見合った罰を与えるだけだ。

 前世の国が甘いのか、この世界が厳しいのか、俺には判断できない。だが、ゴッカイルは考えればこうなる未来があると分かるはずなのに、考えずに動いて自滅した。


「ゴッガイルは女性を攫い、監禁し、強姦し、そして殺した。闇ギルドとも繋がっている。死罪は確定だ」


 メッサーラ子爵の声は冷淡なものだ。同情の余地はないんだろう。

 ま、こうなることを望んだのは、俺なんだけどさ。

 このために、伯爵とゴッガイルの情報を闇ギルドのボスからもらったんだ。

 俺についてはただやり返すだけが、2人はあまりにもバカなことをしていた。さすがの俺もそれを知って見て見ぬふりはできず、その情報をメッサーラ子爵のデスクに置た。

 この人、できる宰相の側近といった感じだから、対処してくれると思っていたけど、ちゃんとやってくれたんだと思ったよ。


「聞いたか、ゴッガイル。お前は罪人として死罪が決定だってよ」

「うるせーっ! てめぇだけは許さねぇ!」

「何を許さないんだ?」


 ゴッガイルの腕を掴む。俺がこの世界で目覚めた直後ならクソみたいな体力しかなかったが、今の俺はしっかり鍛えている。

 素の握力は結構上がっているし、さらに魔力循環の身体強化があれば、硬い石を砕ける。そんな俺がゴッガイルの腕を握れば、どうなるか。でも、砕かない。

 心の奥底にいるクライド君が悲しんでいるからだ。お前はそんなクライド君をゴミのように扱ったが、俺は何もしない。正規の処罰を受けて逝け。


「こ、この野郎! 離せ、離さねえか!」

「ゴッガイル。人にはな、越えてはいけない一線というものがある。お前はそれを越えてしまった」


 何を言っているのか分からない顔だな。


「もう会うことはないだろうが、最後にこれまで虐げてきた人のことを思い起こすことだ」


 ゴッガイルは最後まで叫んでいた。俺の背中に罵詈雑言を浴びせてきた。クライド君がこんなことで納得するかは分からないが、これ以上は俺があいつを殺しそうだから、足早に立ち去った。


「ああ、そうだ。ロイメスは隠居した」

「ロイメス? ……ああ、あの男爵か」

「気にしてなかったのかい?」

「気になると思います?」

「……一応、君も知り合いだったようだから、隠居して家督を譲ったとだけ知らせておくよ」

「そうですか」


 そんなものに興味はないよ。



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挿絵(By みてみん)

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