第61話 忍び寄る悪意
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第61話 忍び寄る悪意
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俺が最初に探索した遺跡を遺跡Aとするなら、今回発見した地下都市遺跡は遺跡Bだな。
俺は遺跡Bを探索するのだが、さすがに数千軒もある建物全てを回るのは無理だ。マンパワーが足りない。
それに数軒回ったが、何も出てこない。
「よし、プリママにここの情報を与えよう。そしたら、あの人が勝手に探索してくれる」
それに情報を与えれば、数カ月、もしかしたら数年、この遺跡にこもって出てこないかもしれない。そしたら俺の平穏が保たれるじゃないか!
「グフフフ。俺の天下じゃーっ!」
そんなわけで、さっそくホルトンの町に帰ることにした。
「俺は帰ってきたぞー!」
と叫んでみた。
ま、誰もいないから叫べるんだけどね。
ジュブレール大森林から出て、冒険者証を見せてホルトンの町に入る。敬礼!
そのまま冒険者ギルドへ向かうと、冒険者が増えてくる時間帯だった。
メリンダさんの受付にも冒険者が並んでいる。
よし、帰ろう。俺は混雑は嫌いだ。
回れ右して1歩踏み出す。
ドンッ。
「グベッ」
俺は衝撃を受けて倒れ込んだ。
俺はファイアドラゴンの火炎を防ぐほどの魔力結界を体に纏わせているのでダメージは追わないけど、転倒などは普通にする。
どんなモンスターが俺を襲ったのか、魔力触手を用意する。
「クライドーッ!」
俺を押し倒したのは、プリママだった。
「……何で俺を押し倒しているのですかね、プリママ」
「クライドが帰ってきたから!」
「俺が帰ってきたら、押し倒すのですか?」
「だって、すぐに逃げるから」
「逃げませんけど?」
むしろ、あんたを追い出して……ゴホンッ、なんでもないよ。
「書置きをして自分だけ遊んでいただろ!」
「遊んでないですよ」
「あたしはな! あれからトルテンに酷い目に遭わされているんだぞ!」
しらんがな、そんなこと。
「風呂に入りたいのに、トルテンは入らせてくれないのだ!」
「はいはいって、プリママは家に帰ることが許されたんですか?」
「うぅぅぅ。聞くも涙、語るも涙なのだ!」
「ただの書類仕事でしょ?」
「……地獄の書類仕事だ」
「ギルマス! こんなところで何をしているのですか? 早く書類を片づけてください。さもないと、また家に帰ることができませんよ」
サブマスがプリママの首根っこを掴んで引きずっていった。
「ま、待つのトルテンッ!? 今日はクライドが帰ってきたのだから、親子の親睦をだな!」
「仕事が終わったら帰っていいですよ」
すごい目力だ、トルテンさん。
トルテンさんは30前くらいの女性文官系ギルド職員なんだけど、唯一プリママを御し得る人物である。あの眼鏡の奥にある瞳に見つめられたプリママは、なぜか蛇に睨まれた蛙のようになるのだ。
「がんばれー」
一応、応援をしておく。
これで後から文句を言われても応援したと言えるからな。
しかし、旅に出て10日くらいしか経過してないけど、プリママは家に帰ったのか……。
また家を掃除しないといけないと思うと、頭が痛くなるよ。
と思ったんだけど、家は汚れていなかった。どうやらマジで帰らせてもらえないようだな。今後も《《是非》》そうしてほしいものだ。
今度、サブマスに菓子折りを持っていこう。このままずーーーっとプリママをお願いします、と意味を込めて。
そうすれば、遺跡Bのことを教える必要はないしね。
とりあえず、埃が少し積もっているので、軽く掃除するか。
夕方、俺はゆっくりと湯に浸かり、美味しい酒をクイッとする。
「平和だなー」
平和が一番だよねー。
明日はお菓子を作ってサブマスのトルテンさんに持っていこーっと。
「しかし、何者かなー?」
俺が冒険者ギルドから帰ってきてから、ずっと家を監視している人たちがいる。容姿から警備兵や冒険者ではなさそうだ。
プリママはいないですよー。もしくは俺がいるから空き巣はできませんよー。などと思うのだが、どうも俺が対象のような気がする。
彼らは俺が家に帰る途中で俺をつけ始めたからなー。
俺のストーカーなら、5人も一度に現れるのはおかしい。何かを探っているのか、それとも俺を襲う気なのか?
その夜、午前2時頃だろうか、5人にさらに3人が加わり、うちの敷地内に入ってきた。
はい、不法侵入決定。
4人は裏口の鍵を簡単に開けて家の中に侵入し、2人は俺の部屋の窓の外に陣取る。残った2人は表と裏の見張りですか。組織だった動きですねー。
静かなのに迅速に俺の部屋の前に至る4人。ドアノブに手をかけ、ゆっくりとドアが開かれる。俺の部屋のドアは自慢じゃないが、開ける時に蝶番がキキキッと鳴るんだよ。その音がないなんて、素晴らしい腕だ。
俺の部屋に入ってきた4人は、ベッドを取り囲む。俺の寝顔を確認すると、1人が布を取り出した。
俺の鼻と口をその布の覆う。どうやら眠り薬のようなものが塗られているようだ。
ちょっとだけジタバタして抵抗するが、手足を押さえつけられて身動きが取れない。
うん、俺の演技は素晴らしいな。
魔力循環で薬を体外へ排出したので、意識ははっきりしている。
俺は縄で縛られ、さらに袋に入れられ、1人に担がれて家を出る。
闇に紛れ、警備兵の巡回に引っかからないように酒場の倉庫に入った。この時点で4人は俺の魔力フィールド外へと消えている。
数時間後、俺は樽に入れられ、トラックに載せられ堂々と門を通って出ていく。
しかし、このトラック、静かだな。自動車とかもそうだけど、基本的にはエンジンはない。タイヤを回す力をマジックアイテムでやっているらしい。
それはともかく、乗り心地が悪いなー。ファーストクラスとは言わないが、せめてグリーン車にしてほしいものだ。




