第59話 旅に出ます。探さないでください
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第59話 旅に出ます。探さないでください
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「暇だなー……モンスターでも狩りにいくか」
ホルトンに帰ってきてから10日、プリママはまだ帰ってきていない。このままずっと帰ってこなくていいと思う。俺の心の平穏のためにも、是非帰ってこないでくれ。
古代文明の本はプリママに取り上げられてしまった。まあ、それであの人の気が済んだのだから、構わない。
ギルドにいくと、また捕まりそうだから、”しばらく旅に出ます”と書置きをしてそのまま家を出ていく。
すっかり秋の香りに変ったホルトンの町中を歩く。市場では秋の味覚が多く売られている。
「クライド君。買っていかないのかい?」
果物店のお姉さんから声がかかる。
「昨日買ったばかりじゃないですかー」
しかも、店にあった果物を全部購入したんだよ。
「あら残念」
「また買いにきますね」
「待っているわー」
投げキッスされ、俺も返しておく。
顔は人並みだけど、愛嬌があるお姉さんだ。
門を出る時に、兵士さんが敬礼してくるので、軽く頭を下げて応える。
門を出る時はスルーだけど、門を入る時は身分証の提示が必要になる。身分証がないと、保証金が必要になるらしい。
「さて、どっちにいこうかなー」
人気のないところから、飛び上がる。一気に上空1,000mに上昇すると、結構遠くまで見渡せる。
ジュブレール大森林の先はまったく見えない。どこまでも森が広がっているようだ。
「こんな広い森に、遺跡が1カ所しかないなんてあり得ないよな?」
誰にも発見されていない遺跡があるかもしれない。そう考えると、ジュブレール大森林を隅々まで探し回るのもいいかもしれない。
プリママと1カ月探して発見できなかったけど、あの時は飛んでなかった。森の中を這いずるように探し回っていたので、範囲はそこまで広くない。
ま、空を飛んで探しても、そう簡単に発見できるわけがない……あれ……。
「発見しちゃったかも」
やっぱり日頃の行いがいいと、こうやって神様がご褒美をくださるんだよ。プリママは改心しなさい。
「しかもあの遺跡よりも規模が大きい?」
魔力フィールドが広大な地下空洞を捉えた。ただ、地下のため、空洞がある程度しか分からない。
「どこかに出入口があると思うんだけどなー」
出入口を探して飛んでいると、モンスターが近づいてくるのが分かった。
魔力フィールドの索敵範囲には入ってないが、圧倒的な存在感を感じる。
「おっと、これはデカいぞ」
気配を感じたほうに目を向けると……。
「うん、ドラゴンだな」
トカゲを大きくし、蝙蝠羽を4枚つけた感じのものだ。
俺の知識の引き出しから引っ張り出した情報と照合すると、ファイアドラゴンだと思われる。鱗は赤く、口から火を吹き、高速で飛び、体長は20mほどある巨大なSSSランクのモンスターだ。
どうやら俺をターゲットにしているみたいだね。
初めてSSSランクモンスターに出遭ったけど、やっぱり迫力が違う。
ファイアドラゴンは真っすぐ俺に向かって飛んでくると、その巨大で凶悪な顎を開く。顎の中で真っ赤な炎が膨れ上がっていく。
「いきなりかよ」
火炎放射のように吐き出された火炎は、100m以上の距離を一瞬でゼロにした。
火炎は魔力結界に激突し、激しい炎が周囲の温度を一気に上げる。
「さすがはドラゴン。SSSランクだな」
上空1,000mにいる俺を攻撃したにも関わらず、火が飛び散りジュブレール大森林へと落ち、木々を焼いていく。
「森林破壊反対!」
この下には遺跡があるんだ。貴重なものが燃えたらどうするんだ!
「フフフ。俺を怒らせたようだな」
静かなる怒りに身を焦がした俺は、魔力触手を伸ばした。
ドラゴンは巻きついた魔力触手を振り払おうと暴れるが、俺の魔力触手は一度絡みついたら離さないのだ!
上空1,000mの戦いは、魔力をチューチューした俺の勝利で終わった。
どれほど硬い鱗を持っていても、俺の0.1mにも満たない魔力触手は、鱗の隙間から入り込み、皮と肉を突き進んで魔力にアクセスできる。
「フフフ。ドラゴンは美味しいかな? SSSランクだから期待できると思うだよね!」
ファイアドラゴンをアイテムボックスに収納したら、顔がにやけてしまう。
眼下の森林火災は何もしてないけど、鎮火されつつある。
ファイアドラゴンの火炎は一瞬で木々を燃えやし尽くすため、延焼するほど燃えていなかったのがよかったようだ。あんなのがいても、森が燃やし尽くされていないのは、そういった理由があるからかな。
「よし、今日は野営し、ドラゴンを解体して、肉を食うぞ!」
急ぐ旅ではないし、遺跡は逃げない。
腰を据えて探索するためにも、美味しい食材は多いほうがいい。
ファイアドラゴンの火炎が焼いた広い場所に降り、早速解体を始める。
5本の魔力触手を駆使してサクサクと解体しいていく。
鱗も皮も血も内臓も肉も骨も牙も爪も無駄にはしない。ドラゴンは全てのものが最高の素材だとモンスター辞典に記載されていたから、全部回収する。




