第49話 Sランク昇格試験の概要
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第49話 Sランク昇格試験の概要
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マダムが財宝の確認をしているのをよそに、俺は本部長と向き合って座った。
「アアメンター様の紹介状には、クライド君をSランクにするように、とある」
「え? Aランクになったばかりですけど?」
「ホホホ。君が持ち込んだモンスターは、SSランクもあったようだの」
本部長は紹介状をエルさんに渡す。
「お前、SSランクまで狩っていたのか。メタルトロルを持ち込んだからSランクを狩ることはできると思っていたが、本当に人騒がせだな」
「モンスター討伐は冒険者の本分ですから」
「ホホホ。よきかな、よきかな。ダーベン君、【雷神の鉄槌】は王都にいるかの?」
ん、【雷神の鉄槌】? グランベルさんたちがなんで出てくるの?
「いえ、【雷神の鉄槌】は依頼で王都を離れています。予定では、あと半月は帰ってこないかと」
「ふむー。他にSランク以上の者がいればばいいのだがのぅ」
「あの、なんでSランク以上の人が関係あるのですか?」
「なんだ、あの年増は説明してないのか?」
年増というのは、ホルトンのギルマスのことだよね。何も聞いてないけど? そもそもですねー……。
「俺がSランクに昇格する話も聞いてませんが? 今聞きましたから」
「ホホホ。アアメンター様は相変わらずじゃのう」
「本部長。相変わらずで済ませていい話ではないですよ。注意してください」
「しかしのう。アアメンター様は儂より年上じゃからのう」
は? 本部長より年上? えええっ!?
本部長は70近い年かと思うけど、それ以上って何歳なんだよ、あのギルマス!? てかさ、さっきから本部長があのギルマスに『様』をつけているんだが? どっちの立場(役職)が上なわけ?
「この件に関しては、年齢は関係ないかと。立場上、あいつに注意ができるのは、本部長だけなんですから」
「ホホホ。アアメンター様には、儂が子供の頃に助けてもらった恩があるんじゃよ。彼女には弱いんじゃよ、儂」
子供の頃に助けたって……100歳はいってそうだな。美魔女じゃなくて美熟女だったか。熟々に熟れてそうだな。
「とりあえず、Sランクの件はダグム君に確認するかの。ちょっと呼んできてくれるかの」
エルさんがダグムという人を呼びに出ていった。
「しかし、クライド君もなんぎじゃのう。あのアアメンター様に目をつけられるとは」
「あの人、ヤバいのですか?」
「ヤバいってものじゃないのじゃ。アアメンター様は儂が生まれた時にはすでにSSSランクのソロ冒険者として名を馳せていたのじゃ。ガリゴリの武闘派での、儂なんか一瞬で肉塊にされてしまうのじゃ」
「は、はぁ……苦労しているんですね」
「そうなのじゃ。なんで儂の部下にアアメンター様がいるのか、不思議でならんのじゃよ……」
哀愁が漂ってくるんですけど?
しかし、そんな化け物がホルトン支部のギルマスなら、1人だけAランクに昇格できる権限を持っているのも納得だよ。
で、本部でしかできないSランク昇格を、やれと言っているわけだ。
なんで俺をそんなにランクアップさせたいわけ!? 怖いんですけど!?
二度とホルトンの町にいかないほうがいいのだろうか? いや、もしいかなかったら、地の果てまで追いかけてきそうだよ、あのギルマス。
怖っ!?
エルさんが品のよさそうなオジサマを連れてきた。
「編成部長のライドー・ダグムです」
「Aランク冒険者のクライドです、よろしくお願いします」
マダムはまだ財宝に夢中で話には一切入ってこない。そんなマダムをちらりと見てため息を吐くダグムさん。
「彼のSランク昇格試験用の護衛なら、【雷鳴】がシュバットにいるはずです」
「おお【雷鳴】が隣町にいたのか。すぐに呼んでくれるかの」
「分かりました」
護衛? 俺に護衛をつけるの? なんで?
「Sランクに昇格させるには、その実力をこの国に認められる必要があるんだよ」
「え? エルさん、それってどういう意味ですか?」
「Sランクからは貴族待遇だから、試験があるってことだ」」
「……試験とか聞いてないんですけど?」
「文句があるなら、あの年増に言えよ」
「怖いこと言わないでくださいよ」
「諦めろ」
なんてこったー!
エルさんが詳しく教えてくれたけど、Sランク昇格はギルドと国が認めないと駄目らしい。
そこで国が指定するSランクのモンスターを、期限内に討伐して納品する必要があるのだとか。その際に不正がないか、監視をするのがギルド職員で、その職員を護衛するのがSランク以上の冒険者になるらしい。Sランクのモンスターを狩るのだから、Sランク以上の冒険者が護衛につかないと危険なのだとか。
俺はSランクに上げてと、一言も言ってないのですけど?
すぐに隣町の冒険者ギルドに確認が行われ、返事がきたそうだ。
「え、早くないですか!?」
「転送箱で手紙を送ったんだ」
「て、転送箱、ですか」
「手紙やちょっとしたものなら一瞬で送れるものだ」
「そんなものがあるのですね」
「古代文明の遺産だ」
古代文明、すげーなー。あの遺跡のボックスもかなり高度な技術で作られていたから、そういったものがまだ残されているかもしれない。今度もっと詳しく調べよーっと。
「明日の午後に【雷鳴】の4人が王都に到着します」
「うむ、重畳、重畳。あと国に連絡はしたのかの」
「先ほど宰相府に使者を送りました」
「ご苦労じゃったな。やっぱりダグム君は優秀じゃ。儂、引退するから、本部長しない?」
「要りません」
ガーンッと擬音が聞こえてきそうなくらい、落ち込む本部長。このお爺さん、面白いな。




