第47話 エルさん
+・+・+・+・+・+
第47話 エルさん
+・+・+・+・+・+
「5体で4,500,000Gだ。どれもいい状態だが、メタルトロルは皮以外使えんから、安いんだ」
「構いません」
査定表をもらった俺は、受付に向かう。
「こんにちは」
「……帰ってきたのか」
冒険者ギルドで仏頂面をしている受付オッサンに声をかけた。
「ちょっと野暮用ができまして、一時的に帰ってきました」
「そうか。で、何か用か?」
「まずは換金をお願いします。全部預けますので」
査定表と冒険者証を出す。
受付オッサンは目を細め、冒険者証を見ている。
「Aランクになったようだな」
「それはホルトンのギルマスが上げてくれたのです。未だに人は殺してませんけどね」
「ホルトンだと……ふん。あの年増か」
なんか既視感が……。
ホルトンの美魔女ギルマスは、王都のギルド員に評判が悪いのだろうか。俺は元42歳のオッサンなので、あのギルマスの容姿はありなんだけどなー。中身《性格》がクズだとあれだけど。
「ギルマスをご存じなのですか?」
「本来ならあいつが王都本部の本部長になっているはずだな」
「えええ、そうなんですか? そんな方が、なんでホルトンの町のギルマスをしているのですか?」
「あいつは戦闘狂なんだよ。休みの日には、今でもモンスターを狩りにいくらしいぞ」
人は見かけでは分からないと言うが、あの美魔女がまさかの戦闘狂だったとは……。
「ほら、換金は終わったぞ」
「あ、はい。ありがとうございます」
預金の明細と冒険者証を受け取り、アイテムボックスに収納する。
「で、他にも用があるんだろ?」
「はい。本部にいくことになったのですけど、誰か信頼できる方を紹介していただけないでしょうか」
冒険者ギルドにも色々な職員がいる。信用できる人もいれば、そうでない人もいる。
この受付オッサンの紹介なら、確かな人だと思うんだ。俺の勘だけど。
「本部だと? 何をした?」
「悪いことはしてませんよ」
「それもあの年増の指示か?」
「はい。ちょっと遺跡でお宝を発見したので、その買い取りについて王都本部に相談を、と」
俺は声をひそめて、わざとらしく耳打ちする。
「……こっちへこい」
受付オッサンが顎をしゃくって、俺を奥へと連れていく。会議室に通された。
「ここなら誰にも聞かれん。で、遺跡だと? お前、あんなところへいったのか」
「冒険者なら遺跡探索はやっておかないといけないでしょ?」
「……そんなものは、命あっての物種だ。1人でいったのか」
「今のところ仲間はいません」
でも、ボッチじゃないからね! 弟子は3人いるんだから!
「何を発見したんだ」
「これがそのリストです」
紹介状は封書なので開けるわけにいかないけど、リストは封書じゃないから見せても大丈夫。
「はぁー。よくこんなものを発見したな」
「運がよかったようです」
「明日、朝10時にここへこい。本部へ連れていってやる」
「同行してくださるのですか?」
「お前1人でいかせると、騒ぎを起こしそうだからな」
「酷い言われようですね。俺は騒動なんか起こさないですよ?」
「嘘言え。アルガード支部からお前がロイメス男爵家と揉めたって回ってきたぞ」
「ロイメス男爵……ああ、あの見当違いのおバカさんの家ですね」
「ここではいいが、外でそんなこと言うなよ」
「もちろんですよ」
お口にチャック。
「ロイメス男爵家は評判の悪さでは、このアシュドール王国一だからな。できるだけ関わるなよ」
アシュドール王国というのは、クライド君が生まれたこの国のことだ。俺からすれば、ロクでもない国だけどね。
「俺は関わるつもりはないのですが、ただ領内を通っただけで犯罪者扱いですからね、あの男爵家」
「お前がそれだけ悪党に見えたんだろう」
「悪党の男爵家から見た悪党ということは、善人ってことですね! そうです、俺は善人なのです!」
「……呆れてものが言えんわ」
とりあえず、明日の10時に王都本部へ連れていってくれることになったので、今日は引き上げることにした。
「そういえば、お名前を聞いてなかったですね」
俺としては受付オッサンでもいいんだが、それを本人に言うのはね。
「……俺はエルグラッフェ・ダーベンだ」
家名があるということは貴族かもしれないな。放蕩が過ぎて家を追い出された線もあるな。
あれ、追放? なんだ、お仲間じゃん!
「ダーベンさんですね。明日はよろしくお願いします」
「ダーベンは呼ばれ慣れん。エルと呼べ」
何、何、愛称で呼んでほしいの? もう、欲しがりなんだからー。
「分かりました、エルさん」
まあ、Sランク以上の冒険者は貴族待遇が与えられるというし、エルさんもその口かもしれないな。
貴族待遇だと、家名を名乗れたりするしね。




