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魔力使いのまったり冒険者クライド  作者: 大野半兵衛


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第44話 ホルトン支部のギルマス

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 第44話 ホルトン支部のギルマス

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「ああ、そうだ。遺跡でこんなものも手に入れました」


 俺は本を1冊出した。


「まったく読めませんけど、好事家とかに売れませんかね?」

「……おいおい、好事家どころじゃすまないぞ、これは」

「え?」「遺跡にこんな完全な形の本が残っていたことなんてないだよ。発見された本はどれもまともに読めるようなものはないんだよ」

「そうなんですね」

「そうなんですね、じゃないぞ。金塊や宝石なんかよりも、こっちのほうが面倒なことになるぞ」

「……え?」

「学者連中がこの本に群がってくるだろうな」

「学者ですか……そうですか……」

「本は何冊あるんだ?」

「《《持ち帰ったのは》》10冊です」

「持ち帰った、ということはもっとあったんだな」

「そうですね」

「お前、マジで学者連中に狙われるな」

「えー、勘弁してくださいよー」


 学者といえば、基本は貴族出身だ。貴族家の当主もいるが、多くは次男以降の家を継げないような人たちだ。それでも貴族家の関係者に変りはない。

 俺は貴族なんて大嫌いだ。

 クライド君のあの家族たちを見たら、関わり合いになりたいとは思えない輩だ。


「じゃあ、本のことは内密にしてください」

「売れば金になるぞ?」

「金塊や宝石だけでも十分な金額になりますよね」

「まーそうだな」

「本は出しません。なんなら燃やしてもいいです」

「おいおい、そんなことが学者に知られたら、殺されかねんぞ。あいつら、知識欲の塊だからな」

「面倒くさいですね」

「面倒くさいヤツらだな、まったく」

「絶対に言わないでくださいね」

「分かった分かった。ただし、もっとモンスターを狩ってこい。それで黙っていてやるぜ」

「賄賂ですか。いいでしょう。交渉成立ですね。モンスターを狩ってきます」

「王都にいった後でいいからな」

「はい」

「おっと、忘れるところだった。さすがに俺だけで決めるわけにはいかんからな。ギルマスを呼んでくるぜ。その本のことは言うなよ。ギルマスも学者肌だからな」

「了解しました」


 その後、ホルトン支部のギルマスを連れてきた。


「ギルマスのプリダリ・アアメンターよ」

「Dランク冒険者のクライドです」


 ギルマスは30歳くらいに見えるけど、めちゃくちゃ綺麗な人だ。美魔女っぽい。

 よく見ると、ギルマスの耳が少し尖っている。おそらくエルフの血が入っているのだと推測する。どうりで綺麗なわけだ。エルフは総じて美男美女しかいないらしいからね。

 俺は遺跡探索で金塊などのお宝を発見・回収したことを、ギルマスに報告した。


「あの遺跡にこんなものがあったのね。私も昔はあの遺跡に2度ほどいったことがあるけど、モンスターの密度が濃くて大変だったわ」


 この会話で分かるように、ギルマスは元SSSランク冒険者だったらしい。ジョルゴスさんがこっそり教えてくれた。


「ところで、クライド君はSSランクモンスターを筆頭に、多くの高ランクモンスターを納品してくれたそうね」

「たしかにSSランクモンスターなどを換金しました」

「そんなクライド君が、なんでDランクなの? Sランクは無理だけど、私の権限でAランクに上げましょう」


 マジか。俺はDランクでまったり冒険者をして暮らしていきたいんですけど。


「俺がモンスターを盗んでギルドに持ち込んでいるとは、思わないのですか?」

「そうであっても構わないわ。ギルドとしてはSSランクモンスターを持ち込んでくれたのが、クライド君なのだから。それが実績というものよ」

「なるほど……討伐できる、討伐した、そういったことではなく、納品した事実が大事なわけですね」

「SSランクモンスターを狩っても、ギルドに納品しなければ、ギルドにはなんのメリットもない。そうでしょ?」

「その通りですね」

「それに、クライド君が身の丈に合わないランクに昇格したら、自分の寿命を縮めることになりかねないわ。強制依頼なんかは拒否できないわけだし」


 強制依頼はモンスターが町を襲うコースで移動していたり、モンスターのテリトリーが変わったりした際の調査など、ギルドから発せられる強制的な依頼だ。

 冒険者は強制依頼を拒否することができないので、そういった時に実力に見合っていないランクの人は死ぬ可能性が高くなる。


「ですが、Cランクに上がる際に人を殺す必要がある、と聞いたのですけど?」

「君は人を殺したことはないの?」

「ないですね」

「殺す覚悟はある?」


 俺がまったりと冒険者を続けるためなら、殺しもできると思う。でも、進んで誰かを殺したいとは思わない。


「ないですね」

「フフフ。正直ね。でも、問題ないわ。対人戦で強制依頼が発せられたことは過去にないし、もしもの場合は殺さずに無力化すればいいのよ」


 盗賊退治は基本的に国や貴族家の仕事になる。町や地域の治安維持は領主の責任だからね。

 冒険者はモンスター相手に戦うことがメインで、対人戦の通常依頼は滅多にない。

 それでも護衛依頼をしていると、モンスターばかりを相手にするわけじゃないので、人を殺せない冒険者はCランクに上げない基本的なルールがあるけど、SSランクモンスターを狩れるような冒険者をDランクにしておくとギルドの損失になるから、ギルマス権限でAランクに上げることができるらしい。


「もっともAランクに上げることができるのは、このホルトンの町が2つの魔境に接している危険な場所にあるからよ。他の冒険者ギルドの支部ではそういうわけにいかないわ」

「なるほど……でも、お断り―――」

「これは決定事項よ。クライド君はAランクに昇格ね」


 マジっすか!?


「ガハハハ。気難しいギルマスに気に入られるとはな! よかったじゃねぇーか!」

「……ありがとうございます」



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