第20話 旅立ち
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第20話 旅立ち
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「は? 旅に出るだと?」
「はい。世間を見て回ろうかと思いまして」
「そうか、まあ冒険者は自由だからな。好きにすればいい。だが、コルディーノ侯爵は毎年晩餐会を開催している。来年も開催されるだろう」
「つまり、来年も儲けさせてもらえるということですね」
「今年の請求額を見て、来年は買い取り額を抑えてくるかもしれないがな」
「ギルドはボッタくっているのですか?」
「お前のせいだよ!」
「俺は普通にリフィナンテスを納品しただけじゃないですかー」
「全部大型のな! おかげで買い取り額が例年の3倍くらいになったぞ」
「予算は大丈夫だったのですか? 支払いはちゃんとされました?」
「踏み倒しなんて認めないさ。耳を揃えて全部支払いさせるから、そこは心配するな」
「ギルドって、エグいですね」
「お前がエグいんだよ」
何はともあれ、俺は受付オッサンに挨拶を済ませた。
次はバドランドさんにも挨拶をする。
「なんだと、旅に出るだ? いいじゃねぇーか。男なら広い世界を見て大きくなるものだ。でっかくなって帰ってこい」
「はい。お世話になりました」
最後にグランベルさんたち【雷神の鉄槌】に挨拶をする。
今日【雷神の鉄槌】がいるのは、事前調査で分かっていたから、飲食コーナーで酒を飲んでいた。
「おう、クライド! お前も飲め!」
俺の顔を見るなりエールを勧めてくるのは、グランベルさんだ。
「ありがとうございます。ただ、俺はこれから旅にでますので、皆さんにご挨拶をしたくてきました」
「旅だと? どこにいくんだ?」
「適当に行き当たりばったりですね」
「気ままな旅か! いいねぇ、俺もそういうのをしてみたいぜ!」
グランベルさんが背中を叩いてくる。痛いんで、止めてください。
「クライド君がいなくなると寂しくなるわね」
「俺もミルキーさんに会えないのは寂しいです」
「あら嫌だわ。ウフフフ」
その巨乳は眼福です。また必ず拝みにやってきます。
「クライド、どこにいっても気合でなんとかなる! 気合いだぞ!」
「はい、ミリアさん。気合ですね!」
ミリアさんも背中を叩くのは止めてください。マジで痛いです。
「いい酒を見つけたら送ってくれよ」
「あ、そうだった。ドゴゴンさんだけじゃないですが、【雷神の鉄槌】の皆さんにこれを」
9-5のマジックバッグからヒーリスの樽を出す。32ℓの樽だから、そこそこ大きい。
「ヒーリスという酒です。お世話になったお礼です」
「お、ヒーリスか。分かっているじゃねぇか!」
ドゴゴンさんは樽を抱えて飲み出した。
「クライドがどこにいっても、精霊の加護がありますように祈っているわ」
「ありがとうございます、リンリーリンさん」
エルフの多くは精霊を信仰していると聞いている。彼女もその1人だね。
最後に頭を下げ、感謝を伝える。
「短い間だったけど、お世話になりました」
「「元気でな!」」
「「元気でね」」
「酒じゃー!」
俺は笑顔を残して冒険者ギルドを出た。
「さて、気の向くまま足の向くままにいきますか!」
すっかり寒くなったが、革物店で購入した温度調整機能つきマントのおかげで温かい。
空も青く澄み渡り、俺の旅立ちを祝ってくれているようだ。
一応、1カ月ほど面倒をかけた宿の人たちにも挨拶したし、革物店の店主にも挨拶した。
これで思い残すことなく、王都を出られる。
王都の玄関口である大橋を渡ると、俺は森へと入っていく。
そこであることを試してみようと思っている。
魔力結界を展開する。楕円型で下部には穴が開いていると思ってくれればいい。
アイテムボックスから藤の籠を取り出す。
もう気づいた人はいるかな?
魔力結界と籠を1本の魔力触手で繋いでいく。さらに魔力触手の先を魔力結界の穴の下に固定し、そこで熱魔法のヒートを発動させる。
もう分かったかな? これは気球だ。ヒートで温まった空気が魔力結界内に溜まると、徐々に籠が浮いていく。
浮き上がっていく籠には、当然俺が載っている。籠は魔力触手で編んでもよかったが、いちいち編むのは面倒なので籠は職人に作ってもらった。
はたから見たら、森の中から藤の籠が浮いていく絵だな。UMAかUFOかといった感じの光景だろうね。
地上がドンドン遠くなっていく。俺はここでもう1本触手を出して魔力結界の横から風魔法のウィンドで風を当てる。これで移動方向を自分で選択できるわけだ。
自然の風任せの旅もいいけど、海のほうに流されたら寂しいから、ある程度はこちらでコントロールする。
急ぐ必要はないけど、歩いていくのは面倒だから優雅に空の旅と洒落込みます。
「このマントのおかげで寒くないし、本当にこのマントを買ってよかった」
人間が豆粒くらいにしか見えないような高度を維持する。これで人間からも鳥か籠か見分けがつかないだろう。
「ふっふふんふーん♪」
鼻歌を奏で、地上を観察する。
森や山、道や草原、町や村がよく見える。
「お、自動車が襲われているぞ。盗賊かな?」
ここからでは小さくてよく見えないが、襲われているのは、トラック、普通乗用車、そして黒塗りの高級車だ。
「自動車のほうが悪者かもしれないしなー」
助けるにも、事情が分からないと手が出せないな。




