表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双貌日記〜天才作家 言葉紡の記録係〜  作者: pippo
真実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/60

天ノ川家1

 はーい


 という声と共に出てきたのは、見た目は五十代、いや四十代にも見えるほど若々しい女性である。少し垂れ目がちで優しい顔立ちと、アニメだったら確実に登場時の背景が暖色系であろうというような温かな雰囲気を纏っている、そんな女性である。人は見た目にはよらないとはいうけれども、この人は確実に優しく温かい人物なのだと思わせる、そんな女性だった。


「先日電話させていただいた休屋と申します。」


 休屋警部は先生の前に一歩出て、警察手帳と名刺を見せながら挨拶をする。そして、先生や僕たちのことを順に紹介する。


 その説明を聞きながら、その女性は一人一人の顔を見てにっこりと微笑む。その笑顔はどこか月夜さんを彷彿とさせる。この女性が綺羅星兄妹の母方の祖母であるということはおそらく間違いないだろう。


 祖母とは言うものの、全く見えない。似ていないと言うことではなく、その女性があまりにも若々しいからである。綺羅星兄妹が20歳であるということを考えると、最低でも祖母は五十代中盤から後半、ないしは六十代であるはずだが、美魔女とでもいうのだろうか。さすがは綺羅星兄妹のお婆様といった感じだ。それにしてもではあるが。


「あなたは、天ノ川晴子(あまのがわはるこ)さんでお間違い無いですか?綺羅星星歌(せいか)、旧姓天ノ川星歌さんのお母様の。」


 休屋警部は一応の確認として、女性に名前を尋ねる。


「はい、私は天ノ川晴子と申します。」


 そう言いながら晴子さんは会釈する。


「では、中へどうぞ。」


 玄関の扉を開けながら、僕たちを家の中へと案内してくれる。


 僕たちはそのまま客間へと案内される。客間には旦那さんと思われる男性が座っている。こちらも優しそうな顔立ちの男性だが、晴子さんとは違って年齢相応の顔には皺が刻まれている。おそらく六十代ほどだろう。


「よくいらっしゃいました。私、天ノ川陸(あまのがわりく)と申します。」


 男性が立ち上がりながら僕たちに挨拶する。


 今回も休屋警部が先頭に立って僕たちのことを紹介してくれる。お互いに挨拶を済ませると、テーブルを挟んで陸さんの向かい側に、僕と先生と休屋警部が。そして、その横にホームズさんが座る。


「それで本日のご用件というのは、」


 晴子さんがお茶を出してくれて、一息つくと陸さんが話を切り出す。


「はい、本日お伺いしたいのは、8年前の娘さんの事故、及び先日のお孫さんの事件についてのお話です。」


 休屋警部がそう答える。


「まあ、正しくは伺うというより、伝えなければならないことがあるということ。それと、とあるものについての確認なんだがね。」


 先生が横から口を出す。


「娘の・・・。星歌の事故ですか。」


 陸さんは悲しそうな表情を浮かべる


「今回のお孫さんの事件をきっかけに、我々で再捜査した結果。8年前の事故は、実は事故では無いということがわかりました。」


 休屋警部が落ち着いた口調で陸さんと晴子さんに伝える。しかし、二人とも対して驚いたような表情は見せない。その様子を見たホームズさんが横から口を出す。


「その様子ですと、お二人はわかっていたのですかな?」


「確信を持っていたというわけではありませんが、薄々そうなのでは無いかと思っていました。」


 陸さんが遠くを見つけるような瞳で話す。


「あの事故が起きた時の警察や綺羅星家の対応は、実に冷ややかなものでした。時期当主であり娘の夫である天翔(あまと)くんが亡くなったというのに、詳しい捜査は行われていないようでしたし、早々に二人の火葬が済まされ、私たちの元には娘の遺骨と私物が少し送られてきただけでしたから。」


「そんな、」


 僕は思わず声を漏らしてしまう。


「何か事情を知っていたのでは?」


「いいえ。娘や天翔くんからはほとんど何も聞いていませんでした。娘が嫁に行ってから、そっちはどうなんだい?と尋ねたことは何度かありましたが、微笑みながら大丈夫と答えるだけでした。天翔くんからは、彼の父親である玄空さんのお話を少し聞いたくらいですね。」


 ホームズさんの質問に陸さんは首を振りながら答える。その時のことを振り返って何か思うところがあるのかもしれない。


「何を聞いたんですか?」


「玄空さんは、非常に権力というものに固執していて、息子である天翔くんから見ても異常であると。玄空さんに権力が集中している限り、星歌も虹日ちゃんたちも安心して暮らせる環境を作ることはできないから、私が当主になるまでは少しばかり辛抱してほしいというようなことを言っていましたね。」


「虹日くんと月夜くんのことについては?」


「知っていました。その経緯まで。」


「ほう。」


 先生は目を細める。


「私たちの娘である星歌は、天翔くんとは幼い頃からの知り合いでした。きっかけはなんだったかな?同じ小学校というわけでも近所というわけでも無いのに、仲が良かったんです。成長するにつれ、彼らはお互いに好意を持つようになったようで、そのまま付き合い始めました。しかし、天翔くんは綺羅星家の次期当主ですからね。当然のように反対されたようです。玄空さんが決めた相手との婚姻が予定されていたんです。ですが、そこは天翔くんがなんとか説得したようです。条件として必ず後継を出産するという条件をつけられて。」


「よく説得できたものだが。今考えると、その時からすでに玄空の計画は始まっていたのかもしれないね。」


 先生が呟く。


「星歌はあまり体が強い子ではありませんでした。そんな中で出産のプレッシャーと重なったのか、出産の時に体を壊してしまい、なんとか双子を出産できたものの、もう子供を産むことができない体になってしまったんです。」


「なるほどね。それでか。」


「玄空さんの認めた結婚の条件は、後継を産むことでしたがそれができなくなってしまったんです。それを知った玄空さんは星歌と別れ、新しい妻を迎え入れることを指示したそうです。しかし、それには天翔くんが断固として拒否しました。それに激怒した玄空さんは、新しい妻を迎え入れるか、生まれた双子の長子を男児として育て、時期当主候補とするか選べと選択を迫ったそうです。」


「そんな選択・・・。」


「天翔くんはどちらも拒否していたそうですが、私たちや星歌を人質のようにとられたことで、家族を守るためにやむなく後者を選んだそうです。」


「それで虹日くんが男として生きていくことになってしまったということだね。」


 陸さんが瞳を閉じながら静かに頷く。


「その時点で既にミスター玄空の恐ろしい計画は決定していたのかもしれないね。」


「天翔くんも言っていました。玄空さんは権力というものにとらわれていると。いずれその力が子供達にも及んでしまうかもしれない。だから、自分がなんとかするのだと。」


「8年前の事故には不審な点が多くあった。それらは全て玄空による警察への圧力だったというわけだ。国家権力すら意のままに操るとは、恐ろしい男だよ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ