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友人がオレ/俺好みの美少女になってたんだが?  作者: 濃支あんこ


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自分だけじゃなきゃ美味しくない その1

 現在進行形で、梅吉は窮地に立たされていた。いや厳密に言えば窮地に立たされているのは青仁なのだが、当の本人が自分の状況を自覚していないため、梅吉だけが苦しむ羽目になっている。

 以下、状況説明である。


「なー梅吉、俺後どれぐらいで戦力外通告受けると思う?」


 状況その一。現在二人はぼちぼちやって来る文化祭の準備に駆り出されている。


「むしろまだ受けてなかったのかよ。道理でまだなんかペタペタやってると思ったわ」


 状況その二。本日の時間割には体育は含まれていない。


「いやなんか、うちのクラス思ってたんより部活動の出し物の方に行ってる奴が多いらしくって。猫の手どころか俺というクソ不器用の手も借りたい状況なんだとよ」

「マジ?ってことはオレなんか絶対解放される訳ないってことじゃん。うっわめんどくさ!」


 状況その三。体育着なんか持っている訳がない青仁(今日に限ってアンダーパンツを履くのを忘れたっぽい)(アホ)(何も考えてない)が制服姿で一切の気を払わずにしゃがみ込み、ペタペタと段ボールにペンキを塗りたくっている。


 つまり──青仁のパンツが梅吉含め第三者に丸見えになっているのである!!!絵に描いたようなラッキースケベだ!!!!!


「てかさ、お前なんかさっきからずっと後ろ気にしてるけどなんかあんのか?」

「え、オレそんな後ろ向いてた?気のせいじゃね?」


 それだけならば梅吉(たまたま持っていた体育着着用)は、天に感謝を捧げさりげなくガン見する程度で終わらせていたのだが、あいにく現場はクラスメイトが数多く残る教室である。


 故に梅吉は先程から必死に位置取りを工夫し、なるべく青仁の対面に居座る形で奴のパンツをクラスメイトの目から隠す業務に勤しんでいた。絶対に見せてなんかやらない、青仁のパンツを見ていいのはオレだけだ、という強い意思である。


「はあ……。まあいいや、それよりこの無限ペンキ塗りいつになったら終わるんだ?」

「オレが切ってる段ボールにも塗るらしいから、多分当分解放されないと思う」

「クソじゃん。俺ふて寝していい?程々の時間で起こして」

「別に良いけど、んなことしたら多分実行委員に殺されるぞ」

「……作業するかー」


 ちなみに今日の青仁のパンツはグレーのタータンチェックである。布地の頼りなさ的にブラジャーとはセットではない、し◯むらとかイ◯ンあたりで三枚セットとかで売られている安物と見た。梅吉の理想とする近所に住んでるえっちなおねーさん的には落第点ではあるが、青仁らしいと言えばらしい。


 ……まあ、これはこれで正直ちょっと良いのだが。


「腹減った」

「言いながらなんか口に放り込んでんじゃん」

「オレ的にはなんかこう、もっとがっつり食いてえんだよ。具体的には今とっとと終わらせてサ◯ゼ行きてえ気分なんだわ」

「おーいいなサイ◯。俺も行きたい。あーでもこれ、夕飯時になる前に解放されんのか?」

「うちの最終下校時刻次第じゃね?何時か覚えてねえけど。おーい誰かー、最終下校時刻って何時だっけ?」


 左手でメ◯トスを口に放り込む作業を、右手でナイフを動かす作業をしながら適当な会話の応酬を続ける。

 なお適当に全体に向けて投げかけた問いの返答は、我が校の最終下校時刻はそこそこ遅い時間、といったものであった。辛い。


「うわ俺無理だわ。流石にサ◯ゼでがっつり食った直後にいつもの量の夕飯は無理。せめて夕飯かサイ◯どっちかじゃねえと。でも多分今から夕飯いらねえって言ったら殺されるんだよな」

「大変だなー。オレ今日姉貴に最初っから夕飯外で食って帰るって言われてるから、夕飯元々外食のつもりだから。別に時間とか関係ねえんだよな」

「お前ん家のそういうとこだけは羨ましいわ。多分俺がそれできるようになるの、それこそ大学生になってからとかだし」


 赤山家は現在週の大半が梅吉と姉の二人体制で運営されている為、この手の融通が効くのである。まあ高校生としては一般的ではないことは重々承知しているので、別に青仁が来れなくても特に何かを思う訳でもない。若干残念だな、とは思わなくもないが。


 なおどちらの辞書にもサ◯ゼリヤでの食事を少量で済ますという真っ当な意見はないものとする。腹ペコ男子高校生(概念)の目の前にメニュー表を置かれた状態で、そんなことができたら苦労しないし、それこそサイゼ〇ヤに対して失礼だろう。


「別に自由っつってもそこに面倒が伴う以上、そんな楽しいもんでもないぞ」

「知ってる。だから俺は今この自由になんかいい感じにペンキを塗ってくれ、というオーダーで死ぬほど困ってる。マジでどうすればいい?あとちょっとでも気を抜いたら制服にペンキ飛んでおしまいになる気がするんだけどこれもどうすればいい?」

「無理そう」


 そして、時に自由とは責任と面倒が伴うことをその身一つで体現した青仁が途方に暮れていた。現実なんてこんなものである。だがここで梅吉ははたと気がついた。


 制服にペンキが飛びそう→危ない→オレの体育着貸そうか?オレの方がお前よりかは確実に汚さないし、という流れに持っていけることを!


「……」


 なるほど我ながらIQが一億あるとしか思えない素晴らしい作戦だ。こうすれば梅吉の衆目から青仁のパンツを守る為の戦いは、何事もなく終わりを告げることだろう。だが待ってほしい、それ即ち梅吉も青仁のパンツを拝むことができなくなる、ということではないか?


 パンチラ及びラッキースケベというものは心の栄養素である。このクソッタレなエロスのエの字もない枯れた砂漠という名の現実に舞い降りたオアシスを、こうも簡単に手放してしまっていいのか?


「お前なんか手止まってるけどどうしたんだ。エネルギー切れか?」


 そもラッキースケベとは、物にはよるが少なくとも今回は本人に自らがスケベな状態になっている自覚がないものである。古今東西、所謂無知シチュというものは素晴らしき存在であると語られて久しく、いや個人的な好みとしては何もかもを知り尽くしているお姉さんに手取り足取りナニをシて欲しいのだがそれはともかくとして、一般論として青仁に無知シチュは似合うだろう。


「燃費悪すぎるだろ。おら燃料だぞー、食え食えー」

「ぐえっ」


 まあ色々考えている間に青仁に無理矢理メン◯スを袋ごと口に突っ込まれたので、嫉妬VS性欲の戦いに苛立ちが加勢した結果、無事性欲が勝利したのだが。


「お前……メント◯は一個ずつ味合わないとすぐなくなっちゃうだろうが……!」

「なんかフリーズしてたからついやっちまった、反省も後悔もしていない。ところで今思いついたんだけどメン◯スのアソートになってるやつを一気に口の中に放り込んでみたら面白そうじゃね?」


 奴が平常運転を極めているせいで、余計に苛立ちポイントが溜まっていく。もうこのまま欲望のままスカートの中に頭突っ込んでも許されるんじゃないか。流石にラッキースケベの域を超えている気がする。


「頼むから勝手にやってろオレを巻き込むな」

「今度スーパーで見かけたらちゃんと二個買っておくな」

「頼むから会話って奴をしてくれないか???」


 何故こいつは食が絡むと軽率に会話不能生命体と化すのか、それがわからない(ブーメラン発言)。


「話全然変わるんだけどさ、ペンキって手洗いで落ちると思う?」

「……とりあえず水道ダッシュしてきたら?」

「行ってきまーす!」


 しかも梅吉が二重の意味で助け舟を出そうと考えていた間に、既に事故を引き起こしていると来た。やはりこいつを文化祭準備の頭数に入れるのはよろしくないのではないか、とぱたぱたと水道に向かって消えていった背を見送りながら思う。今のところ被害は自身の制服で収まっているようだが、そのうちペンキをぶちまけてジ・エンドとかやりかねない。


「そういや、お前らさっきからなんかこっち見てたけどどうしたんだ?ん?」


 ところで、先程までいくらから感じていたはずの視線が綺麗さっぱり消えたのだが。一体全体どういうつもりだ?と梅吉は笑顔()でクラスメイトの男子達に問い詰めた。


「い、いやぁ~……?」

「そ、空島が危なっかしいなあって、思ってただけっていうか~?」

「ほーん、そうかそうか、つまりきみはそんなやつなんだな」


 予想通り、作業に集中しているが故の汗である、と言い訳が効かない類の汗をだらだらと流しながら野郎共は答えを返す。なので梅吉は殊更に笑みを深めて言った。


「裁判長ォ!判決を!」

「被告人を百合に不用意に介入した罪で死刑とする!」


 流石我らが学級委員こと裁判長、適切な沙汰を下してくれた。いやまあぬるっと百合判定を食らっている所については異議申し立てをしたいところだが、この際罰を下してくれるならなんだって良いので無視させてもらう。

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