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第9話 迷い猫をプロデュース⑨ 最も効果的な平和的解決方法

 *



「か、改造ってなに? 私一体何をされちゃうの!?」


 タケオから突然の改造宣言に、瑠依は激しく動揺した。

 動揺しても意外とテーブルマナーはキチンとしていた。

 口の中にモノを入れて喋らないし、ちゃんと箸とお椀を置いてから身振り手振りを交えながら驚いている。


「言っただろう。学校の連中を見返してやるんだ。二度とお前が舐められないよう、その見た目を改造する」


「そ、そんな、いいよ……そんなことしなくても……」


 瑠依はシュンっと肩を落とした。

 どちらも瑠依には馴染みのない言葉だった。


 自分はただ誰も害せず、誰にも害されないことが望みなのだ。

 見返すとか、舐められないようにとか、そんなことは考えたこともなかった。


「じゃあ具体的にどうするんだ。このまま学校に行ったらお前、昨日よりも酷いことされるんじゃないのか?」


「それは――」


 みんなが自分のことを友だちとすら思っていないことは話を立ち聞きしたことでわかってしまった。落書きがされた鞄はその場に瑠依がいなかったことの報復と考えられる。


 もしも今のまま学校に行ったとしても、彼女らがただ静かに瑠依を放っておいてくれるとは思えない。きっと直接的か、あるいは間接的か、とにかく本格的なイジメが始まることが予想される。


「――ッ」


 ブルっと、瑠依は震えた。

 やっぱりそれは嫌だ。

 怖い。たまらなく怖い。


 でもいつまでも逃げてはいられない。

 イジメと向き合い、家にも――叔母さんとも話し合わなければならない。

 と、そこまで考えたところで、瑠依は自分が大きなミスをしていることに気づく。


「あ――! わ、私、家に連絡――無断外泊しちゃった!?」


 瑠依は今更ながらその事実に気づく。

 いくら冷たいとはいえ、彼女の保護者は明確に叔母さんなのだ。

 家に帰らず、勝手に外泊したとなれば迷惑をかけてしまうだろう。


 だが――


「それに関しては問題ありません。私が瑠依さんの家に連絡をしておいた……と昨夜言ったでしょう。大人の方が話がスムーズだろうと、家の者を使いました。ええ、瑠依さんの叔母様、大変恐縮されていましたよ」


「そ、そうなの……?」


 なんて手回しの良さだろう。

 というか恐縮? 家の者?


 そうか、タケオくんのこの家から察するに、ご両親はとっても有名なヒトなのかも……。あれ、でも愛理ちゃんはお母さんが違うって言ってたような……。


「ああ、だからこれから二週間、お前は自分の家に帰らなくていい。ついでに学校にも行かなくていい。休学届を出しておいた」


「出したのは私ですが。正確には私の家の力を使っておきました」


「えええッ!?」


 家にも学校にも行かず、二週間も私は何をすればいいの!?


「だから言っただろう。その間にお前自身が変わるんだ。相手を害さず、お前も害されないための平和的解決法はそれはしかない。イジメの内容を聞く限り、原因はお前の見た目や衛生状態、そしてそれは家庭環境が起因してるみたいだからな」


 確かに……。家に居場所がない。お風呂に入れない。その結果、不衛生で学校のみんなに迷惑をかけている……。住環境を変えて、健康的な生活をし、見た目に気をつければ、学校でのイジメはなくなるかもしれない……。


「中身はすぐには変えられないかもしれない。でも見た目だけでも自信がつけば、少しずつお前自身も変わっていける。そのために俺も手伝う。お前の叔母さんに許可は貰ってる。今日から二週間、ここに住んで、特訓する。そして二週間後、いきなり学校に行って生まれ変わったお前自身をお披露目するんだ。その方がインパクトが強いからな」


「…………」


 瑠依は、タケオの話を聞いていて、最初こそ「そんな迷惑はかけられない」と思った。


 でもタケオの行動力は凄まじく、何もせずにまごまごしている瑠依に対して、具体的な解決策を提示してくれる。


 自分たちはまだ子供。明確にできることとできないことがある。

 でもタケオと愛理は、その辺の大人たちよりもずっとできることがあるようだった。


 これは、いいのではないだろうか。タケオたちの言葉に甘えても……。

 このままイジメられ続けたり、転校したり、不登校になってしまうよりも、とても前向きで、誰も傷つかない方法なのではないだろうか――


「わ、わかった……。私、やる……! いえ、お願いします! 私、変わるから、協力してください!」


 瑠依は立ち上がり、ペコリと頭を下げた。

 二人の視線を感じる。顔上げると、「ああ」とタケオは頷き、「かしこまりました」と愛理は笑みを浮かべた。


「よし、それじゃあ早速始めるぞ」


「は、はい、えっと、まずは何を……?」


 タケオは畳まれたジャージの上下を瑠依に渡す。


「それに着替えろ。そうしたらまずは中庭をランニングだ」


「え?」


 突然の体育会系っぽい発言に瑠依は目が点になった。


「お前痩せすぎ。まずは食事、そして運動と睡眠。目標体重はプラス5キロな。有酸素以外にもうちにはウェイトジムの部屋もあるから、適度に筋肉もつけていくぞ」


「えええっ!?」


 運動が苦手な瑠依は顔面蒼白になった。

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