表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
69/154

29

「くそっ、ずるい奴らめ……」


 扉を開けると、既に赤目は巨人を召喚していた。この様子だと、防御魔法も発動中に違いない。


「召喚される前に倒す、という作戦はダメだったね」

「まあ、さすがに都合良くはいかないわよね」


 赤目が号令をかけると、巨人がうなりながら迫ってきた。混紡を振り回しながら、僕らを叩き潰そうとしてくる。

 腕の長さと棍棒の長さからリーチが掴みづらく、可能な限り距離をとって逃げ回るしかない。


「うおっと、あぶねー! 今、ぶおんって風圧きたぜ!」


 アルコはローブのせいか、もともとの体力のせいか、逃げ回るのが遅く、巨人に狙われがちなようだった。時間はなさそうだ、早く作戦を実行しないと。


「ファイアアロー!」


 成宮さんが火の矢を放つ――が、見えない壁に弾かれてしまう。


「やっぱり、防御魔法もかけられてるみたいね!」


 巨人の攻撃を避けながら再度弓を放つが、やはり弾かれる。


「じゃあ、魔法ならどうだ!?」


 アルコが杖を回し、風の力を充填しながら赤目へ接近する。

 杖を振り魔法を発動させようとした時――


「ギイッ!」


 ゴブリンが少しだけ呪文を唱えたあと、杖を地面に打ち付け赤い電流を発生させた。

 電流は蛇のように這い寄りまとわりつき、アルコを動けなくする。


「これならどうだ!」


 金縛りの隙をつき、剣で赤目を叩き切る――が、これも弾かれてしまう。


「剣もだめか!」

「アルコが!」


 見ると、巨人がアルコに迫っていた。

 金縛りでアルコは逃げられない。

 このままでは成宮さんと同じ運命に――

 次の瞬間、アルコのもとに走り、そのまま抱きかかえていた。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。

 抱えるアルコの顔が真っ赤になる。

 怒っているようだけど今は緊急事態、お叱りは後で受けよう。

 この世界で体力をつけたおかげで、アルコ1人抱えていてもなんとか巨人から逃げることができた。


「オマエなあ!」


 腕の中のアルコが抗議の声をあげる。

 時間が経ったか、あるいは赤目から距離をおいたせいか魔法が解けたようだった。


「もういいだろ、おろせ!」


 要望に従ってアルコをおろす。

 成宮さんが駆け寄ってくる。


「剣もダメだったね」

「いえ、見てちょうだい」


 赤目が杖を横にして呪文を唱えている。

 一瞬、赤目の周囲が球形に光る。


「今のは……」

「ええ、防御魔法を唱えたのよ」

「ってことは、ヒカリの読み通り――」

「ある程度のダメージを超えると壊れる」


 成宮さんが推測した、赤目が巨人を召喚した理由のひとつだ。

 すなわち、自身を守るため。

 防御魔法があるのに?

 そう、防御魔法は無敵ではない。なんらかの方法で壊れるのだ。だから、巨人に守らせる必要があった。


「蓄積なのか、一度の攻撃なのか分からないのが嫌だけど……」

「いーじゃん、剣で切れば壊れるんだって分かっただけでもさ」


「ギィッ!」


 こちらの作戦が分かったのか、あるいは僕らの余裕が気に食わなかったのか、赤目が巨人をけしかける。

 巨人は赤目を守るように僕らとの間に立ちふさがり、棍棒をぶん回す。


「守りながらだからさっきまでより避けやすくなったけど――」

「とはいえヤバイってのは変わらねーぞ」


 このまま逃げ続けてもいずれやられる。

 覚悟を決めよう。作戦実行だ。


「アルコ! やるぞ!」

「おし、任せたぞ!」


 巨人の攻撃の隙をつき、赤目へ接近、再び剣を浴びせようとする。

 それに気づいた赤目が杖を打ち付け赤い電流を発生させる。

 金縛りを受ける――その時、アルコが割り込み、身代わりとなる。

 身動きの取れなくなったアルコの目が「いけ」と伝える。

 赤目に走り寄り、剣をぶち当てる。

 何かを叩き壊した感触。

 赤目の焦った表情が見える。


「後ろ!」


 巨人が迫る。


 赤目に追撃する暇はない。そのまま距離を取り、巨人の攻撃を避ける。

 危機を脱した赤目がにやりとする。

 これでいい。作戦通り。

 次の瞬間、赤目が燃え上がる。

 胸には矢。成宮さんの放ったファイアアローが赤目を燃やし尽くす。

 断末魔の叫びが途切れると、巨人は4体のゴブリンへと戻った。


「待ってました。準備はできてるぜ。ウインドカッター!」


 赤目が倒れ、自由になったアルコから放たれた風が、ゴブリンたちを蹂躙する。


「うまくいったみたいね」

「さすがヒカリ。作戦通りだな」

「アルコが軽くて助かったよ」

「オマエな……巨人を引き付けるんじゃなかったのかよ!」

「ん? いや、間に合わないと思って」

「ぐぐ……助かったけどさ」


 もう敵はいない。先に進もう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ