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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
68/154

28

 暗闇の彼方に仄かな灯りが見える。

 か細くゆれるその輝きは、数多のロウソクだった。

 ロウソクの中心には石で作られた祭壇、その周囲には成宮さんとアルコが座っていた。


「よお」

「来たね」

「約束したからな」

「2人とも、妙に仲良くなってない……?」


 僕らの様子に、成宮さんから訝しげな顔をする。


「仲間同士が疎遠よりはいいだろう?」


 祭壇の上から、案内人が冷やかす。

 とりあえず無視。

 さて、今日はどうしたものか。


「赤目のゴブリンと巨人の攻略法は思いついてないわ」

「魔法も効かないしな」

「盾でカバーするのも無理そうだ。吹っ飛ばされて、壁に叩きつけられる」

「棍棒の攻撃は避けることに専念したほうが良さそうね」

「おい」


 案内人だ。


「そろそろ時間だ。せいぜいあがけ。ロウソクはあと27本、9日の命だな。3人で共有していることを忘れるなよ」

「言われなくても、分かってるわよ」

「それと……泉の力に気がついたようだな」

「あなたに教えてもらうまでもなくね」

「うむ。俺から先んじて教えることはない」

「案内人が聞いて呆れるぜ」

「必死にあがけ、そうすればいずれ道は開けるたろう」

「元よりそのつもりだよ」

「それでいい。では、行くがいい」


 世界が暗転する。


―――――


 泉の部屋で目が覚める。

 成宮さんもアルコもちゃんといる。


「へえ、ホントにここから目覚めるんだな……ひゃっ!?」

「どうしたの!?」


 まさか部屋にゴブリンが?

 見ると、アルコが着ているローブの裾からバウニャンがでてきた。


「こ、コイツ、アタシの足を舐めたなぁ!」

「気に入られたみたいね」


 部屋に異常がないことを確認し、手荷物を調べる。


「欠けているものはないわ。でも、瓶の中身が空ね。補充しないと」


 部屋の隅の水飲み場に行き、瓶に水を注ぎ、しっかりとふたを閉める。


「これ、今回もアタシが持つのか? 魔法、効かないけど」

「そうね、魔法を使う力を回復する以外に、傷を治癒する力もあるけど……それでも、アルコに持たせたい」

「誰が傷を負うかは予想できないもんね」

「ええ、傷の回復はあくまで緊急用。基本的には魔法を使う力……」

「その、魔法を使う力って言い方、まどろっこしいな。魔力でいいんじゃね?」

「まりょく? どうかしら、魔法の威力ではなく、使える量だから……」

「精神力かな?」

「うーん……アルコは、魔法を使って消耗すると、何が減った、無くなったと感じるの?」

「そうだなー、確かに魔力って感じじゃねーな。今だって、自分に魔力みたいなもんが溜まってる気はしないし。やっぱ精神力かな、頭の疲れって感じ」

「じゃあ、体力に対して心力(しんりょく)でどうかしら」

「なるほど。精神力とは少し意味が違う気もするしね」

「ええと、言いたかったのは回復は基本的には戦略に組み込みたいから、現時点で必要度の高いアルコに持ってほしいわ」

「心力の回復のためにか。りょーかい。誰がが傷ついたら、すぐさま渡すからな」


 準備は整った。

 次はどう戦うかだ。


「当たって砕けろって感じか?」

「砕けるのはもう嫌……」

「最後に成宮さんが受けた魔法って――」

「金縛り、かしらね。痺れて身動きが取れなかった。頭ははっきりしてるんだけど、体が言うことを効かないの」

「巨人の攻撃と組み合わさると最悪だな」

「矢を跳ね返した魔法はどうかな」

「見えない壁って感じだったよな」

「赤目のゴブリンを倒せば巨人も消えると思ったんだけど……甘かったわね。向こうは先刻承知だったみたい」


 鉄壁の防御に荒ぶる力。直接こちらを攻撃する魔法は持たないとしても、厄介な相手だ。


「ゴブリンの魔法は成宮さんたちに比べると発動条件が分かりづらいね」

「金縛りの魔法は少しの間、何やら呪文を唱えている様子が見えたけど、矢を弾く魔法は杖を構えた瞬間に発動していた気がする」

「そういえば、呪文を唱えてる姿を見なかったな」

「もしかしたら、私達がゴブリンと戦っているうちに使っていたのかも」

「あー、そっか、ゴブリンたちに集中してたから、赤目の様子を見逃してたかもな」

「あるいは、既に使ってたのかな。僕らが部屋に入るより前に」

「それも納得だな。わざわざアタシたちを待つ理由もないし、転ばぬ先の杖的な魔法だろ? 使っとくぜ、普通」

「維持に心力を使うなら話は別だけどね」


 とりあえず、赤目が防御魔法を使用中という前提で考えたほうが良さそうだ。


「ねえ、魔法って複数同時に使えるものなのかしら?」

「使えるんじゃねーの? だって、矢弾きと召喚を同時に使ってるからさ」

「どうかな? 同時に、というわけじゃない」

「そうよね……」


 成宮さんは顎に手を当て考えるポーズをとる。


「召喚も魔法だけど、力を外に放出するタイプよね、きっと。矢弾きは自分の身を守る、内に放出するタイプ」

「で、金縛りは……」

「外へ放出するタイプ」

「じゃあよ、金縛りの時は召喚が……いや、なにも変わってなかったな」

「召喚は、外に放出して別の存在を残すタイプだと思うの。放出しておしまい、ではなく」

「ウインドカッターは放出しておしまいのタイプだね」

「悪かったな」

「ファイアアローはまた別のタイプだと思うけど……とにかく、魔法傾向から考えると、同時には使えないんだけど、残っていたり、別タイプだと併用できるかもなって……根拠はないんだけど」

「魔法は同時には使えないけど、併存はできる――つまり、召喚中でも矢弾きは有効で、金縛りを使う時もやっぱり有効ってことだね?」

「ええ。矢弾きは発動させれば残るタイプだと思う」


 それってつまり、矢は無効ってことか。


「じゃあさ、金縛りを同時に使うことはできないだろ? だって、単独への放出タイプだから」

「そうね。1人がかかっていれば、他の人は安全だと言えるわね。それが何か?」

「いや、こっちは3人いるんだから、1人が金縛りのうちに攻め込めないかなーって」

「ただ、当然巨人が守りに入るし、矢弾きもあるよ? 金縛りを受けた僕らの誰かが殺されてしまうかもしれないし」

「待って、今何か……」

「思いついたのか?」

「どうして、巨人を召喚したのかしら」

「ゴブリンの弓兵だけでは、僕らを倒せないから?」

「負けると思ったんだろ? だから助っ人を召喚した」

「つまり、攻めるためでもあり、守るためでもあった……ねえ、ちょっと聞いてもらえる――」


―――――


 僕らは再び赤目が待つ扉の前にいた。


「よし、それじゃ作戦通りやってみよう」


 そして、扉に手をかける。


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