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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
56/154

16

「……というわけなんだ」


 2階にゴブリンがいなかったこと、隠し通路を発見したことをつげると、成宮さんは驚き、アルコはニヤリと「やるじゃねーか」と上から目線。

 ところが、単独で通路を進み、木箱から白い瓶を見つけたことを説明すると、成宮さんから叱られてしまった。


「危ないじゃない! もし罠でもあったらどうするの!」

「だ、大丈夫だと思ったんだよ……勘だけど」

「勘だなんて……」

「まー、いーじゃねーの。お宝ゲットだろ? でかしたでかした」


 やれやれと額に手をやる成宮さんに対し、アルコは喜んでくれた。

 頭ごなしの叱責に少しだけむっとしたものの、冷静になって考えれば罠の可能性は高く、もしかしたら通路を発見した高揚感で判断力を失っていたのかも、と考えるに至り成宮さんに謝ることにする。


「ごめん、軽率だった」

「私の方こそごめんなさい、そんな立場でもないのに叱りつけたりして。あなたのことが心配で」


 むう……心に染み渡るお言葉。

 謝っておいてよかった。


「で、その中身はなんだよ?」


 アルコの質問で我に返る。

 そうだ、この中身について相談しないと。


「まだ開けてないんだけど、どうやら液体が入ってるみたいで。瓶が白塗りだから中身は見えない」

「ほう、液体ねえ。水か、薬か?」

「石油とか、何かの燃料の可能性もあるわね。いずれにせよ、飲むのは厳禁よ」


 やっぱりダメか。飲んでみたかったけど、怪しすぎる。


「でも、木箱の中身、しかも隠し通路の先にあったとなると、重要なアイテムであることは確かじゃないかしら。だから、とりあえず捨てずに持っておきましょう」

「了解……おっと、しまう場所がないな」

「アタシが持つぜ。回復薬だったら、真っ先に飲みてーし」


 アルコの物言いに成宮さんが苦笑する。


「まったく……でも、回復薬だったらちょうどいいのにね」

「そーだな。さて、2階に向かいますか」


 瓶の処遇は保留となり、2階へ向かう。

 アルコも少しだけ元気を取り戻し、成宮さんの肩を借りずに歩けるようになっていた。


 2階に到着し、扉を開ける前に、隠し通路について説明する。


「ホントに壁があったのかぁ? 見た目からじゃ分かんねーな……」

「僕も信じられなかったんだけど……」

「難しいとは思うけど、これからは注意して進まないとね」

「敵と罠に注意してたら、見逃しそうだなあ」


 ひとしきり感想を言い合ったあと、扉をそっと開ける。

 ゴブリンが戻ってきてる可能性もあったけど、ありがたいことに誰もいなかった。


「ふうん、2階はこうなってたのか」


 2階は天井の低い広間になっており、弓使いのゴブリンたちがいた部分はバルコニーのようにせり出していた。バルコニーと広間をつなぐ部分は、地中海の都市群にありそうな武骨な円柱の柱で区切られていた。


「ここからなら、アタシを狙い撃つのもラクショーだっただろうよ……ふん!」


 バルコニーからは、僕たちが初めに到着した扉がよく見えた。扉を開けて走り出たアルコを狙うのは簡単だっただろう。

 アルコと、ウインドカッターが無かったら、かなり苦戦しただろうな。


「アルコがいてくれて良かったわね」


 成宮さんも同じことを考えたらしい。

 下を覗きながら、ぽつりと呟いた。


「過ぎたことはいーや。他に何かあるかなーっと」


 部屋を調べると、両開きの扉以外、気になるものはなかった。

 隠し通路がある可能性も考えて、念入りに調べたけど、2連続で幸運は訪れない。


「もーいいって! 先に進もうぜ。ゴブリン、戻ってきちゃうぞ」


 アルコの発言がもっともだったことと、隠し通路探しに飽きていた僕らは素直に扉を開けることにする。


「隠し通路は、積極的に探すのはひとまずやめておきましょう」

「そうだね。それ自体は目的じゃないし」


 扉を開けると、幅の広い通路が広がっていた。

 暗がりに気をつけて進むと曲がり角と扉を発見した。


「ゴブリンがいるな……」


アルコの言うとおり、扉の前には1体のゴブリンが座りんでいた。

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