表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第二章
55/154

15

「アルコは大丈夫?」


 アルコは成宮さんの腕の中で、苦しそうに休んでいる。


「ええ…ひどく疲れただけみたい。体に痛みがあったり、吐き気があったりはしないって」

「そうか…」


 アルコの魔法の威力は想像を超えていた。

 天変地異というほどの破壊力はないけど、それでも目の前で繰り出されると恐ろしさを感じたほどだ。

 成宮さんが危惧したように、それほどまでの威力の魔法は、使用者にも相応の負担をかけるのだろう。

 ただ、気になるのは風の魔法が発動する直前の石の輝きだ。

 普通に充填された時より、一層強く緑色に光っていた。

 アルコの長い詠唱の影響…いや、行為それ自体に意味があるとは思えない。魔法発動の条件はあくまで風を集めることだ。

 アルコは詠唱によって、強烈な没頭状態…その熱狂とも呼べる精神状態によって、魔法の威力を高めたのだろう。


「その結果が、普通より激しい疲労か…」


 まだまだ魔法には分からないことが多い。

 扱い方に注意しないと、思わぬピンチを招くかもしれない。

 一応の結論を自分の中でつけ、次の行動を考える。


「成宮さん、アルコを見てて」

「分かった…何かあったの?」

「鍵が落ちてるんだ」


 アルコの魔法によってバラバラにされたゴブリンたち。彼らの死体が並ぶ中に、鈍く光る鍵が落ちていた。


「気をつけてね。まだゴブリンは残ってるはずだから」


 アルコは地上のゴブリンは一掃したけど、弓矢を持った二階のゴブリンたちは残っているはずだった。

 危険だけど、あの鍵がなければ先に進めない。

 意を決して、大広間に飛び込み、鍵を急いで拾う。

 弓矢の攻撃を予期して盾を構えるが、一向に矢が飛んでくる気配がない。

 不思議に思って盾の影から二階を覗くと、ゴブリンたちはいなくなっていた。


「アルコの魔法に怯えたのかもしれないわね」


 戻って成宮さんに状況を伝えると、そんな答えが返ってきた。

 確かに、あの威力を見れば、力勝負なら勝ち目がないことを悟るだろう。こちらが連続して魔法を使える状況ではないことは扉の影になって分からないはず。

 扉まで後退してゴブリンを一網打尽にするアルコの作戦が、ここでも生きた。

 アルコには感謝しないといけないな。


「アルコの様子は?」

「まだ…」

「いや…もう大丈夫だぜ」


 アルコがゆっくりと身を起こす。

 成宮さんが肩をかそうとするが、手で制す。


「歩くので精一杯って感じだけどさ、動くことくらいはできる。鍵を手に入れたんだろ? ゴブリンたちが戻ってくる前に、先に進もうぜ」

「でも…」

「だーいじょうぶだって! 魔法を使うのはしばらく勘弁だけど…」


 少し強がっているようにも見える。

 でも、歩けるようになったのは本当らしい。


「よし、先に進もう。ただ、二人はもう少しここにいて」

「どうするの?」

「この鍵…大広間の二階の鍵だと思うんだ。でも、違ってたら無駄に疲れさせることになる」

「そーいや、階段の先だったな…よし、アタシが許す、一人で行ってこい」

「はは、許されました。行ってくるよ」


 暗闇から何者かが襲ってこないか注意しながら階段を昇る。扉にたどり着き、手に入れた鍵をそっと差し込む。


――かちゃり。


 鍵か外れる音が静かに響く。

 扉を少しだけ開けてみる。

 ……。

 どうやら、扉の先にゴブリンたちはいないようだった。姿はもちろん、声も聞こえない。


 成宮さんたちのもとに戻ろうとした時、扉の反対側の壁に違和感を覚えた。


「なんだ…?」


 違和感の正体を必死に探る。

 罠か?

 いや、そういう感じじゃ…あ、そうか。


 違和感の正体は影だった。

 扉の両脇に付けられた松明。

 それを受けてのびる僕の影。

 それが、正面の壁ですっぱりと途切れているのだ。

 この壁は一体…?

 不思議に思い、壁に手を伸ばすと――


――ぐにゃり。


 突然、壁が歪み、空間に溶け込み消え失せてしまった。


「な、なんだよ、これ…!」


 悪夢の世界は現実とは異なるとは言っても、物体が消滅するのは衝撃だった。


「隠し通路…か?」


 壁が消えると、そのには通路が姿を表した。

 どうする? 一度成宮さんたちのところに戻るか?

 いや、少しだけ調べておいてもいいだろう。

 幸い、通路は松明で照らされていて、モンスターがいる様子もない。

 おそるおそる通路を進む。

 罠がないか、注意深く周囲を調べる。

 この通路自体が罠だったら…そう思わないでもないけど、根拠のない勘が、罠ではないと告げていた。あるいは、そう思い込みたかっただけかもしれない。


 通路を進むと扉があった。

 扉には鍵かかかっていない。

 軽率だと思いつつ扉を開けると、中は小さな小部屋だった。


「木箱がある…」


 部屋の中には木箱が置かれていた。

 周囲に危険がないことを確認して、木箱を開けると、中には小さな瓶が入っているだけだった。


「なんだ…液体?」


 瓶の中には液体が入っているようだった。

 瓶は謎の絵具で白く塗られ中身は見えなかったが、振るとちゃぷちゃぷと液体の音がした。

 部屋の中を調べてみるが、どうやらこの木箱と、その中身である白い瓶しか置いてないらしい。


 隠し通路に期待していた気持ちがしぼんでいくのを感じながら、成宮さんたちのもとに戻ることにする。


 成宮さんなら、この白い瓶、その中の液体について何か良い考えを思いつくかも知れない…。

 そう期待しながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ