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悪夢の塔  作者: 相沢メタル
第一章
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第19話 『僕らは道を間違える』

 中央の部屋に戻ると、4つの小部屋含めて調べ直した。

 その結果、テーブルに置かれていたネックレスだけが何らかの価値があると判断された。


「とりあえず、私が付けてみる」


 女性用のアクセサリだし、異論なく成宮さんに渡す。

 成宮さんが身につけてから、しばらく待ってみても、何も変化はなかった。

 特別な力を期待していただけに、がっかりする。

 ネックレスの中心には少しだけ大きめの宝石が付けられていたけど、価値があるのか分からなかった。

 売れば高額になる可能性もあるけど……そもそもこの世界で宝石を売る場所があるのだろうか。


「収穫は木箱の中身と、あなたの剣だけだったわね」

「必要最小限って感じだけど、一応戦えそうだよ。あとは成宮さんの剣が見つかればいいんだけど」

「看守の剣がもっと軽ければよかったのにね」


 相変わらず看守の死体は微動だにしない。

 さすがに、もう起きることはないだろう。

 部屋を調べ終わったことを確認して、階段の上の扉へ向かう。


「本当だ、ここは開いてるのね」

「うん。まだ扉の向こうは見てないけど」

「開けてみましょう。注意は怠らないでね」

「分かった」


 多少、重装備である僕が扉を開ける。

 背後では成宮さんが息を潜めて様子を伺っている。

 扉は難なく開いた。


「これは……」


 扉の向こうは石畳の廊下になっていた。

 周囲の壁も石造りで、松明がかけられ、周辺をうっすら明るくする。

 天井も石造りであり……つまり、これまでの部屋と同じく、石で構成された通路だった。


「ダンジョンってやつかな」

「え?」

「いや、ゲームだとよくあるんだよ、こういう構造の通路」

「ふうん。かなり薄暗いわね」


 松明の灯りは心もとない。

 どこからか隙間風が吹いているのか、絶え間なくゆらゆらと揺れていた。


「先に進むわよ?」


 前列は僕、後列は弓を携えた成宮さんという構成で進む。

 廊下を少し進むと、正面に扉が見えてきた。その周囲は道が左右に分かれている。

 T字路だ。その根本に扉がある構造。


「扉は……ダメだ、鍵がかかってる」

「手持ちの鍵が使えないかしら」


 僕らの小部屋用の鍵も、木箱の部屋の鍵も入らない。別の鍵が必要なようだ。


「そんな簡単には行かないか」


 成宮さんがため息を吐く。


「右と左のどちらに進むかだね」


 どちらも松明が薄暗いせいで、あまり奥まで確認できない。

 情報もないので、決めかねる。


「両方調べる前提で、ひとまず右に進んでみましょうか」


 賛成、と口にして、扉の右手をゆっくりと進む。

 すると、通路の奥に曲がり角が見えてきた。左に曲がっている。


「曲がり角ね」

「戻る?」

「もう少し進んでみましょう」


 了解。と言おうとしたとき、手に何か柔らかいものが触れた。

 少し弾力のある、まるで風船のような。


「な、成宮さん」


 今度は、足がその風船のようなものを蹴っ飛ばす。

 それは、地面に固定されているのか、ばいんと弾かれるだけでその場から動かない。


「な、なにこれ……!?」


 気がつくと、周囲は風船だらけだった。

 緑色で、透けていて、どんどん数が増えて、膨らんでいく。

 風船というよりは、藻類のシャボン玉という感じだ。

 中には、より濃い緑の液体が詰まっていた。


 ――ぱん!


「うわっ」

「冷たいっ!」


 シャボン玉が破裂し、中に入っていた緑色の液体が撒き散らされる。

 濡れた部分が凍りつくほど冷たく感じ、次の瞬間に刺すような痛みに変わった。


「いたいいたいいたい!」


 皮膚が焦げるような匂いと刺すような痛みが広がる。

 手元を見ると、皮膚が溶けて白いものが…骨が露出していた。

 痛みのあまり、全身が震えだす。

 この道は失敗だった。


 ――ぱん!

 ――ぱん!


 シャボン玉が大量にはじけ、液体が雨のように降り注ぎ、僕らを溶かす。

 モウ何モ考エラレナイ。


 こうして僕らは、絶命した。

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