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「それでー、夏川君がー、写真にー、きょーみをもってー、カメラをー一緒に買いに行ったんだーよねぇ」

 天水の話すスピードがまた遅くなった。そしてなぜか、さっきから左右にゆれ続けている。体の揺れと言葉の句切りが一致しているようだ、と水上は気付いた。

「このくらいでいいですか」

 天水がまとめたので、夏川は話を切り上ようとして、二人に確認を取ったらしい。

「バイトの話だと思ったら、なれそめを聞かされたでござる」

「いとをかし」

 古泉と水上はそれぞれ感想を言った。

「なな、馴れ初めじゃないですよ」

「ねー」

 わかりやすく狼狽えている夏川に対し、天水はどこか楽しそうだ。古泉の目は半分閉じていて眠そうにも見えるし、睨んでいるようにも見える。

 ふと、彼女は何かに気付いたように顔をあげ、天水に耳打ちをした。天水はゆっくり何度も頷き、正面を見て、

「夏川くーん。わたしー、ちょっとー、酔っちゃったー、みたいー」

 相変わらず揺れている。

「だいぶ酔ってますよ」

「あれー?」

 天水は古泉の方を向いた。

「効果がないようだ」

 古泉はチラリと水上に視線を投げかけてから、天水の頭を撫でた。

 テーブルの上の食べ物がなくなってきた。

 夏川が辺りを見回してから古泉の方を見た。古泉はにらみつけるようにメニューを凝視していた。

 水上は席の後ろ、上着を掛けてあるところに置いてあるメニュー表をとって、夏川に渡した。

「ありがとうございます。水上さんはなにか追加しますか」

「お前らが決めてから考える」

「わかりました」

 天水はさっきから刺身のつまをチビチビと食べている。

 空になった大皿とさげられたものを合わせると、けっこうな量を食べたのではないかと思う。明日実家に帰るから、あまり気にしないで注文してきたが、今になって値段が気になってきた。

 しかし、まだ食べたりない気もする。アルコールと一緒だといつもより多く食べてしまうと思う。これが居酒屋の戦略なのだろうか。

「あまみー、焼酎っておいしいの?」

 半眼のまま、古泉はメニューを見据えながら聞いた。

「しょーちゅー? 飲んだことない、から、私も飲むー」

「やめてください」

 夏川が止めに入った。

「えー」

 古泉はともかく、天水にはこれ以上のませない方がいいだろう。

「天水が酔いつぶれたら夏川がおんぶでもすればいい」

 古泉が言った。さっきよりも目が開かれ、心なしか生き生きしているように見える。

「それは、ありですか?」

 なぜか古泉に尋ねる。

「ありです」

 古泉は頷いた。

「まあ、送り先は実家だけどな」

 水上が水を差した。

「そして玄関でお父さんのお出迎えが」

「焼酎はやめておきましょう」

 水をもらって、それでお開きとなった。

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