6 盗まれたネックレス
(ひえー、ごめんなさい一生をかけて謝罪します。本当の犯人はラフィスです)
最初からラフィスの名前を上げていたらこんなことにはならなかったのに。と自分の爪の甘さを後悔しながら懺悔する。
周囲の視線は今や哀れな令嬢に一直線だ。
王国騎士団の一人が令嬢の身辺を調べようと近づいていく。
「あの…」
潔く間違えましたと言おうとした時、ご令嬢の態度が豹変する。
「聖女に相応しいのは、私の方だったのに!!!」
胸元から取り出したネックレスを振り上げながらご令嬢が髪を振り乱す。
そのあまりの変わりように全員が固まる。
(え?何この展開。私知らない…)
言い訳をするようで悪いけれど、
見たんだよ。私見たの。
ソフィアのネックレスを二重ポケットから出すラフィスのスチルを。
それが…なんでこんなことになってるの?
一泊置いて騎士達がご令嬢を押さえようと集まって来る。
その中には勿論、オリバーもいた。
「皆このネックレスに騙されてるのよ!!!」
ネックレスを振りまわす手がオリバーの頬を掠める。
小さな切り傷が出来てしまった。
その瞬間。私の中で何かが切れた。
ぱあん!!!
暴れていたご令嬢の頬を思い切り平手打ちした。
その音は大広間全体が静まり返る程によく響いた。
目にも止まらない速さでご令嬢に迫り、素早く令嬢の手からネックレスを取り返す。
「あなた、自分が何をしたのかお分かりで?」
ドスの聞いた声で迫ると、戦意を喪失した令嬢が膝をついた。
王国騎士はその隙を見逃すことなく、彼女を捕縛し、事情聴衆の為の別部屋へと引きずっていく。
令嬢と王国騎士がいなくなり、しんと静まり返る大広間。
その静寂を切り裂いたのはあのハゲのワザとらしい声だった。
「いやー、びっくりしましたな」
その言葉を輪切りに周囲の雰囲気が和んでいく。
「ええ、とっても」
とソフィアが苦笑いを浮かべて、未だ固まったままの私に近づいてくる。
ペンダントを握ったまま困惑する私の手を取り、ソフィアが聖母マリアの様な笑みを浮かべる。
澄んだ花の様な香りがふわりと彼女から漂ってきた。
「あなたのお名前は?」
「エリザベスと申します」
「エリザベス、ありがとうございました。ペンダントも、罪なき人も救って頂いて…」
「た、たまたまです(本当に偶然だったなんて口が裂けても言えない…)」
「これも神のお導きでしょう」
心酔した様子で彼女が言う。
これが神の導きだと言うのなら、さぞかしあわてんぼうな神様だろう。と私は思うのだけれど。
「聖女様、時間が…」
侍女がソフィアの肩を叩く。
「ええ、そうね。…エリザベス、ぜひあなたとはもう一度お話がしたいわ」
そう言い残して、ソフィアが王宮内へと戻っていった。
主役がいなくなったパーティーはお開きとなったのか、貴族たちが帰宅の準備を進める。
(犯人も捕まったし、魔物も現れなかった。全て丸く収まりました?)
え、待って…
「ラフィス捕まってない…」




