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5 天敵

「ではまた後でお会いしましょう」


「はい、また後で」


城前の警備があるからと、オリバーは颯爽と去って行った。

その後ろ姿すら格好いい。


彼の姿が見えなくなるまで手を振り、幸せな気分のまま、ようやく会場の中へ入ろうと足を踏み入れた瞬間、思い切り後ろから突き飛ばされる。


「いたっ」


「お待ちになって~」


私を突き飛ばしたご令嬢は、振り返ることなく甘ったるい声を出しながら走っていく。


(侯爵令嬢にぶつかっておいて謝罪も無いなんて)


淑女教育をやり直した方が良いんじゃない?と令嬢の行く先を睨みつけるが、

私はすぐに、見るんじゃなかったと後悔した。


低級ご令嬢の先では最大の天敵、ラフィスが若いご令嬢を侍らせている所だった。


黒のリボンで結んだ肩下まである少しくすんだミルクティーブロンドの髪、光によって水色にも光る紫色の宝石の様な瞳。

ラスボスに相応しい堂々とした佇まい。


確かに、見た目だけは良い。

これなら大抵のご令嬢は恋に落ちるだろう美貌。


けれども、女性はアクセサリーだ。と言うのはあまりにも下品で低俗だ。


(顔だけしか能の無い糞野郎のくせに)


心の中で舌を出して罵る。

元々は国庫から大事な物を盗んだ罪人と言う卑しい身分だった癖に。


どうやったのかは知らないけれど、今や、ラフィスは第三王子を抱える名門貴族ダラスティア公爵家の養子というのだから驚きだ。


(人当たりの良さそうな振りをして、腹の中は真っ黒け。

王位継承権もないのに、王座を虎視眈々と狙っている


私は全部知ってるんだから。絶対にあなたの思い通りにはさせない)


輝くような笑みを浮かべるオリバーが脳裏に浮かぶ。


(大丈夫。馬車の中で予行練習はしてきたから)


ここからが私の初陣だ。


全ての来賓客がお城の大広間に集まり、扉が閉められる。


壮大なファンファーレの音共に大広間の壇上から国王陛下が姿を現す。

国王陛下の一歩後ろに、本日の主役、ソフィアが並び立った。


光の様にハニーブロンドの髪に雄大に広がる草原の様な緑の瞳。

白のドレスで着飾った彼女は遠目で見ても、まさに聖女!と言った感じだ。


思わず守ってあげたくなる愛嬌がある。

オリバーとも仲良くなれたし、ソフィアと仲良くなれたらいいのに。なんて身分違いな事を願った。


ゴホン。と一つ咳払いをした国王陛下は、眼下に揃った貴族たちの顔を満足そうに眺め、演説を始める。


「諸君。集まってくれてありがとう。

先日、この国にとって喜ばしい出来事があった。

すでに、知っている者もいるが、この場で正式に皆に発表しよう

公爵令嬢ソフィアが、聖女として覚醒した!!」


ぺこりとソフィアがお辞儀をする。

その胸元には祖母から貰ったという大切な形見のネックレスが揺れていた。


「私、ソフィアは聖女としてこの力を全ての民の為に捧げます。

皆さまどうか、共に笑顔溢れる世界を目指しましょう

この国に祝杯を!」


「「聖女様の覚醒を祝って祝杯を」」


グラスを上げてソフィアの覚醒を祝う。


壇上から降りてきたソフィアに挨拶しようと続々と貴族が集まって来る。


残念だけれどソフィアに話しかける暇はなさそう。


貴族たちは皆ソフィアに熱を帯びた視線を送っている。

誰もが彼女に期待していると同時に畏怖していた。


彼女こそが次期王を決める布石になると。

けれどこの先を知っている私にはただの茶番に見える。


(だって結局選ばれるのは第一王子テオドールだし)

 

テオドールは主人公でソフィアはヒロイン。

二人が結婚してテオドールが王様になって、世界は末永く幸せに。


そして永遠のハッピーエンド。

手元の葡萄酒を眺めながらごちる。


(まあ、別にメインストーリーに興味は無いけれど)


ため息を一つ吐いて、視線を上げると壁際にオリバーがいた。


(警備の邪魔になっちゃうかな?

でも、ちょっとくらいならいいかも)


こっそりオリバーに向かって手を振ってみる。

ふわりと彼が微笑み、私は死んだ。

ズキューンと胸を撃たれた。

死因は「推しが尊すぎたから」そう墓石に書いておいて。


推しは神聖なもので触れるのも烏滸がましいと思っていたけれど、実際に触れあってみて実感した。


(これは麻薬だ)


推死回避後のあれこれに胸を高鳴らせる。

そんな私の元に怒声が届いた。


「聖女様のネックレスが盗まれた!!」


「いよいよね」


推し活開始!!


ラフィスめがけて人ごみを掻き分けていく。


「聖女様ネックレスを奪ったのは!」


隣にいた毛の薄い殿方をすり抜けようとした時、殿方…いやハゲが私をドンと突き飛ばす。

あ、やばっっと思ったけれど勢いは止まらない。


ラフィスを指そうとした指はそのまま隣のご令嬢へと向かった。


(頼む、止まれ、止まってくれ私の指!)


しかし、勢いがついてしまった指は、もうどうにも止められない。


「この人です!!!」


なんの罪も無いご令嬢に私はびしりと指を突きつけた。

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