最高の相棒なのにマスターの気遣いが理解できないの?
経験則にはなりますが「アナタのためを思って言っている」などと言ってのける人間は、ロクでもないヤツが多いです。つまり、カスちゃんはロクでもないカスなのです。
*パワハラを想起させる精神的リョナ描写があるので、心に余裕がある時に読んでください。あと冗談抜きで今回の精神的リョナ描写はグロテスクだと思います。本当にごめんなさい。
「きたっ!私は手札からスペル【ガールズ・ブラスト】を発動!墓地の【JKガールズ】と名の付くアタッカー1枚をデッキの一番下に戻すことで、AP1000の【LNGデルフィニウムの尋問官】を手札に戻す!」
「私のロック戦術がっ!でもAP2000の【LNGネペンテス・ガンナー】が残っている……!」
「そいつもこれからぶっ飛ばしてみせるよ!手札から【JKガールズ・炎激のホムラ】を特別召喚!」
『うおー!ついに活躍の場がキター!任せてよマスター!』
「さらにスペル【ガールズ・アッセンブル】で【JKガールズ・雷撃のヒカリ】を手札に加えて、場に通常召喚する!」
スペルの効果でデッキから出てきたカードを引き抜き、そのままバトルユニットにのせる。するとホムラの隣に、漆黒のゴスロリ風ドレスの魔法少女が降り立った。……あれ?ヒカリじゃなくて……マナ?
「な、なんで?たしかに私はヒカリをサーチしたはずなのに……」
『もしかして……ヒカリちゃんを押しのけて、マナちゃんが勝手に飛び出してきた?』
『その通りです。これ以上、マスターの極悪非道なプレイングでヒカリちゃんに傷ついてほしくありません。私が身代わりになります』
は?つまり偉大なマスターである私の完璧で素晴らしいプレイングにケチをつけたということか?
許せない。ゴミAPの雑魚カードのくせに自我を出しやがって。反逆者には死すら生ぬるいぞ。
「貴様この野郎……!」
『うわわっ!マスター、ストップ!暴力はいけない!』
『暴力なんて軽く凌駕する残酷非道なことをしているくせに、何を今さら……』
『マナちゃんもマスターを刺激しない!つーんとしてないで謝って!』
振りかざした拳を下ろす。まぁ、大好きな相棒に免じて殴るのはやめてやろう。
呆れたように嘆息するマナは、偉大なるマスターである私に対して軽蔑の視線を向けている。なんて反抗的なガキだ。教育と死刑が必要か?
「ふんっ……!まぁ、いいよ。私の心はハイパートーキョー湾のように広いから、根暗女の小賢しい反抗も許してやるよ。覚えてろよクソ陰キャ。いずれお前をヒカリに喰わせてやるからな」
『ははは。異臭と雑菌まみれの汚水の海ですか。マスターの腐った性根を見事に表していて良いですね。穢れに満ちたケダモノめ。自分では何もできないのに調子に乗るなドブカス』
「あ?それはこっちのセリフ。低APで介護しなければロクに効果も使えないくせに。自分では何もできない雑魚はそっち。お前は所詮ヒカリを都合良く使うためのおまけなの。わかる?」
『えぇ。マスターのおかげで活躍できてますよ。トーナメント大会では実体化して無事に悪の権化を直接殴ることができましたし。そういえば、そのとき泣きじゃくってた弱虫がいましたよね?』
『なんで2人とも喧嘩してんのさ!もっと仲良くやろうよ!』
根暗女と睨み合ってチバチに火花を飛ばしていたら、ホムラが間に割り込んできた。
強引な乱入者に怒りの矛先を向けたマナが吠える。
『ホムラさんもホムラさんです!どうしてそんな禍々しい邪悪な存在を野放しにするんですかっ!実体化してマスターを抑えられる力があるのはホムラさんだけなのにっ!ちゃんと悪魔を止めてください!』
『だ、だって!マスターは守るべき大切な存在だしっ!?それに私たちを活躍させてくれる素敵なプレイヤーなんだよっ!?邪魔するなんてもってのほかでしょ!』
『アイツは私たちカードを惨殺して笑っている虫けらですよ!?ヒカリちゃんがっ……ヒカリちゃんがあんなにも苦しんでいるというのにっ!この悪魔の手先がッ!』
『なっ!違うもん!私はっ!みんなから愛される特別な正義の味方なのっ!だからヒーローとして、弱いけど愛らしいマスターを敵から守らないといけないのっ!』
『こんな残虐な子供がいるわけありません!ホムラさんが魔法少女として戦わなければいけない真の敵はッ!そこにいる少女の皮を被った悪魔ですッ!』
『違うよ!私たちの敵はっ!敵は……。あれ?私の敵って……何?』
そういえば、ホムラたちがなぜ魔法少女になったのか、私は知らない。
フレーバーテキストからわかるのは、性格や人間関係、そして使う魔法だ。でも、具体的にどんな敵と戦っているのか、どんな正義を実現したいのか、読み取ることはできない。
色々なテーマのカードが登場するTCGの設定なんだから、それくらい薄味でいいと思っていた。だけどホムラが精霊として実体化している以上は、情報が少なすぎて違和感がある。もう少し調査が必要か?
青ざめた表情で頭を抱えるホムラに、マナが畳みかける。
『禍々しい瘴気を纏って殺戮を続けるマスターに付き従うなんて、正義の味方がすることじゃありません!何がヒーローですか!好き勝手して目立ちたいだけでしょう!?貴女に正義なんてないッ!』
『そ、そんなことっ……!そんなこと、ないもん……』
「あー、あー。カードのくせにうるさいなー。お前は所詮コストなんだから黙って死ねばいいんだよ」
『このッ!邪悪な化け物がッ!私に力があればお前なんかッ!』
おー、怖い怖い。でもお前は私のバトルユニットのコントロール下にある。
せいぜい後悔するがいい。惨殺して我が相棒の糧にしてくれるわ。
「私は手札から武装カード【悪魔的美食!灼熱スモークベーコン】の効果を発動!地獄の業火に焼かれて無様に死ぬがいい!目障りな根暗女が!」
牛の形をした鉄製の棺が、地面から飛び出してマナを捕らえる。ギャーギャー騒ぎながら、棺をガタガタと揺らして脱出しようとしているが、すべて無駄なことだ。
あとはマナを墓地に送ったうえで、ホムラに装着すれば完了だ。でも、反逆者をただグロカードの標準的な効果で焼くのでは味気ない。
「というわけで、ほら。ホムラの力であの根暗女を焼いて。超火力で燃やすのは得意でしょ?」
『イヤだよ!どうして仲間を攻撃しなきゃいけないのさっ!?』
「えっ?……本気でそう思ってる?」
『はぇ?どういうこと?』
だって、ホムラが笑ってるから。しかも頬をひくつかせている。
さながら愉悦を抑えきれない私みたいだ。その瞳には嗜虐的な炎が揺らいでいる。
「口うるさいヤツを消せるから嬉しいんでしょ?そこで叫んでいるマナを見てよ。興奮した牛みたいで面白くない?ぶもー、ぶもーって鳴いてさ。無様だねぇ」
『ぶふっ、たしかに。なにあれ、おもろっ。……って!違う!違う!そんなこと思ってないよっ!?マスター!非道なことは今すぐやめてよ!』
「なーんか教科書的な反応なんだよねー。本当はそんなこと思ってないんじゃないのー?」
『そ、そんなことないもんっ!正義の味方である私は、残酷な行いにNOをつきつけるよっ!』
『なぁ、マスター?ちょっといいかい?』
うわ、なにさいきなり。
トーナメント大会で和解したメンヘラ女が脳内に語りかけてきた。
『キミが蓄えた黒い靄を借りてもいいかな?少しあのアホ女と話がしたくてね』
「えぇ~、しょうがないな~。いいよ。10秒で1割の利子つけるからね」
『ひひひ。すべて出世払いにしておいてくれ。なぁに後悔はさせないからさ』
そう言うと、手札の【三枚おろしのパペットマスター】は黒い靄に包まれて、新たなカードへと変化した。心なしか力を少し吸われたような感覚を受けた。
見ると、名もなきカードに記されていたのはポニーテールの魔法少女。効果もAPもない、エラーカードのような不気味なものだった。しかも、黒塗りのイラストは人の形をした影みたいだった。
刹那、カードが黒く光るとホムラの傍に、漆黒の少女があらわれた。
『ねぇ、どうして嘘をつくの?どうして?』
『なっ!?だ、誰っ!?お前はなんなのっ!?』
『ワタシはアナタの心の影。ねぇ、どうして?目障りなマナを痛めつけて、殺したいのに……』
お?そうなの?私と一緒じゃ~ん。やっぱりホムラとは以心伝心なんだね。
どうやらメンヘラ女が、ホムラに擬態して揺さぶりをかけているようだ。流石は我がエース。AP3000の強アタッカーなだけあって、精神攻撃はお手の物のようだ。
『違うっ!そんなこと考えてないっ!私は闇を穿つ正義の味方なんだからっ!』
ホムラが喚く。不安と恐怖に満ちた瞳。ヘンテコジジイとバトルしたときと同じだ。
するとメンヘラ女は、ぐにゃりと歪むと新たな魔法少女へと変化した。ロングヘアですらりとした体形。ホムラのライバルであるシズクだ。黒塗りになったシズクの影は、ホムラを罵る。
『やはり貴様は醜い畜生だッ!邪悪で下劣な悪魔めッ!貴様に正義の味方を名乗る資格なんてないッ……!』
『やめてッ!違う!違う!違う違う違うッ!私はッ!誰からも愛される正義の味方ッ!正義の味方なのッ!』
『ならばなぜアイリを見殺しにしたッ!救いを求めるリリカの手をなぜ払ったッ!』
『うるさい!うるさい!うるさいッ!使い道のない雑魚がマスターの役に立てた!それの何がいけないのッ!?私よりも弱いくせにッ!私よりもグレードもAPも低いくせにッ!私が一番強くてッ!マスターのお気に入りでッ!正しいんだよッ!』
ほぉ、そう思っていたのか。たしかに私はホムラが一番好きなカードだ。
だけど、なんて傲慢なんだろうか。少しばかり優れているからといって、ここまで他人を見下すか?
ヒカリがだらしのない寄生虫ならば、ホムラは唯我独尊の性悪女だ。その醜い本性を、正義の味方という役割で強引に抑えていたから、相反する心として矛盾をきたしていたのだろう。
再び変化した影は、ホムラの背後にまわり両肩に手を置くと、囁いた。
『嘘つき。好き勝手暴れて、格下を蹂躙したいだけでしょ。仲間なんてどうでもいい。自分さえ目立てばいい。自分だけが活躍できればいい。何が正義だよ』
『黙れ!黙れ!黙れぇッ!』
『間違ったことをアナタは見過ごしている。理不尽に泣く人がいてもアナタは無視している。アナタが語る正義はただの免罪符。傲慢で身勝手な自分自身を正当化するための道具に過ぎない』
『そうだ!お前が私たちの敵なんだ!マケーチン粒子でできた黒い靄の化け物め!今こそ正義の名のもとに……』
「それ、私を構成している一部なんだけど?なに?ホムラにとって私は敵なの?」
『あっ!いや、それは……ちがっ!』
『闇を受け入れろよ偽善者。うわべだけの正義を語るお前なんか誰も愛さない』
『あ……あぁ……あぁあああああ!!』
跪いて発狂するホムラを尻目に、メンヘラ女はピースサインを決める。そして、私の中へ入り込んでいった。
さて、まぁまぁの寸劇だったが、スズを待たせている。そろそろカードバトルに戻らなければいけない。
「安心して。何があっても私にとってのホムラは最高のヒーローだから」
『うっ……うわぁぁあああああん!ますたぁああああ!』
「だから、ほら。早くマナを処刑して」
場に鎮座するファラリスの雄牛を指差す。ガタガタと揺れていて時折マナの叫び声が聞こえてくる。
対して、地面にへたり込んだホムラは、ぽかんとアホ面を晒していた。そして徐々に顔が青ざめていくと、涙を浮かべながら力なく首を振り始めた。
『やだ……やだよマスター……できない……そんなのぜったいだめだもん……』
「でもさ、勝つためにはAPを上げなきゃ。コストとして消費されるんじゃなくてキチンと戦いの中で活躍したいんだよね?じゃあ今、何をすればいい?」
『こんなの……こんなの正義じゃない……。お願いマスター……。私は、正義の味方で……』
「パワーアップしたホムラはきっとカッコいいんだろうなー。大好きな相棒がヒーローみたいにキラキラと輝く姿、見たかったなー」
『大好きな、相棒……?ヒーロー……?』
「貴女のためを思って言ってるの。最高の相棒なのにマスターの気遣いが理解できないの?」
バトルユニットのARで見ると、ホムラはいつも綺麗な光を身に纏っていた。
でも、今は違う。薄汚れたドレスに暗い雰囲気を纏っている。もう少しで何かが変わるはずだ。
ホムラを抱きしめて耳元で囁く。優しく諭すように。
「貴女は最高で、最強で、特別な存在。でも、それは有象無象を踏み台にして初めてなれるの」
『でも、せいぎは……?わたしは……』
「言ったよね?カードバトルの場での正義は私なの。それとも、マスターのお願いを聞いてくれないの?」
『やさしくて、あかるい、まほうしょうじょ、だもん。せいぎの……せいぎ?てき……?てき、は……?』
「敵はマスターである私が決める。それにほら、カードバトルにモラルとか道徳とか必要ないらしいよ?」
『でも……でもぉ……』
「何かを失わずしてヒーローにはなれない。そして英雄になるのに正義は必要ない。ホムラなら何をすべきかわかるよね?」
『う、うぅ~~~……!!うぅぅぅぅぅうッ!!!』
「期待してるよ、世界で一番大切な、私だけのヒーローさん」
『う……く……。……う、うわぁあああああああ!焼け死ねぇ!根暗女ぁぁああああ!』
大粒の涙をこぼしながら、魔法のロッドを構えたホムラは巨大な炎を放った。過去も、しがらみも、目障りな雌も、すべて消し去るために。
業火に焼かれたファラリスの雄牛が絶叫する。この世の不条理を呪うように、天高く断末魔を上げる。1人の非力な少女を贄としたオペラは、新たな英雄の誕生を祝う歌劇は、名残惜しいことに終演を迎えつつる。
おめでとうマイヒーロー。あと少しで完成だ。
マナの死を確認した鉄の雄牛の腹がパカリと割れ、スモークチップの煙で棺が満たされていく。これぞ悪魔的美食。偽りの正義の味方による最後の晩餐に相応しい食事だ。
「ねぇ、美味しい?マナのベーコン」
『まずいよぉ~。虫みたいな味だぁ……。性格の終わってる根暗女だからゲロマズだよ~……』
「そう。がっかりだね」
『でも……なぜか力があふれてくる。AP2500になった気分だよ~……』
「それはホムラが頑張ったからだよ」
反逆者を処刑できて気分がいいので褒めてやる。
号泣しながらベーコンを頬張るホムラは、【悪魔的美食!灼熱スモークベーコン】を装着しているので、APが上がっている。しかも、敵アタッカーを倒せば500ELのダメージを与えられるおまけ付きだ。
「これで終わりだよスズ。根暗女が墓地に送られた効果でELは残り800ポイントだ。そこの魔女をパワーアップしたホムラが燃やせば、私の勝ち」
「どうしてっ!どうして私はスルメちゃんを手に入れられないのっ!?ズイさんからもらったカードを使ったのにっ!私だけのお人形さんにしたいのにっ!」
「いや、私は最初からスズのものだよ?ただ、自由に色んなことしたいだけなの。ごめんね?」
「そうやって!またヤクジュちゃんを選ぶんでしょ!?私を差し置いてイチャイチャするんでしょっ!?私を捨てないでッ!」
ん?最近、やたらとヤクジュを引き合いに出してくるな。大昔にメンヘラ女のせいで別れてから会ってないのになぜだ?まぁ、きっとマケーチン粒子による幻覚を見ているのだろう。早くバトルを終わらせねば。
「いけ!ホムラ!パワーアップした魔法でスズを解放するんだ!」
『うぅ……うぉおぉおおお!ラブ・フレイム・スラッシュぅぅう!』
ホムラの放った炎の刃が、【LNGネペンテス・ガンナー】に襲いかかる。灼熱の業火に焼かれ絶叫しながら溶けていく様は、さきほどまでのリリカのようだ。大切な幼馴染と同じ目に遭わせるなんて、ホムラも随分と粋な敵討ちをするじゃないか。
スズが倒れた。慌てて駆け寄ったが、どうやら意識を失っているようだ。
よくも大切な幼馴染を追い詰めたな、ズイさんめ!明日が決戦の時だ。
こういうっ……、こういう作品が書きたかった……っ!
前回EL計算を間違えていて申し訳ございませんでした……。
あと備忘録としてカード図鑑などをのせるnote(https://note.com/53860/n/n717d8e2565bd)を作りました!まだ全然アーカイブできていませんが……時間があるときに細々と追加します……。




