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第0話 舞台裏 依頼達成報告

「ギドラさん。あなたの依頼にあったゲール氏の救出、無事完了したそうですよ。」


ある応接室、上等で整えられた調度品はその部屋の持ち主が美学をもって集めたのだろう。上品に力強く存在するが、決して下品ではなく統一性と計算をもって多くが並べられている。


「助かりました。まさか、ティタニアルの社長であるあなたにお目通りが叶うとは思っておりませんでした。」


応接室には余裕の表情を浮かべたこの部屋の主である褐色の肌をした女性と服装に生活の余裕はみられるがひどく緊張した白髪交じりの頭をした初老のギドラと呼ばれた男が向い合せて座っていた。


ギドラがスーツを着込み、限りなく固い表情をしているのに対して女性は豊満な体をゆったりとしたドレスで包んでおり、微笑みを浮かべている。


「いえいえ、優秀な科学者の損失はこの世の損失です。あなたの息子さんも間違いなく助けられる必要がある人物ですよ。」

「は・・・。そう、ですか。」


ギドラは会話の意図が読めず、ただひたすら困惑し、膝の上に組んだ手に力が入り指は白くなってしまっている。

息子であるゲールから、施設に『幽閉』されていると極秘の通信があって数十日、さらにその場所に『襲撃』を受けて今度は『監禁』されていると連絡が入ったため、自分の家財を処分してまで救助を依頼したが、まさか押しも押されぬ老舗の大企業であるティタニアルから依頼を受けると連絡があったことには驚かされた。


もはや、自分の財産は多くない。だが、妻の残した忘れ形見である息子は出来がよく、また、孝行息子であったため命に代えても助けて、そしてできれば今度は二人で再出発しようと思っていたのだが、目の前の女性が何をしようとしているのか分からず恐ろしい。


「ふふ。そんなに怖がらないでくださいな。あなたたち二人には十分な生活をそのまま約束いたしますわ。ただ、できればしてほしい仕事もございまして、ね。」

「どんな・・・?」


「研究している内容については私たちも少しは存じておりまして・・・。また、その方面に我が企業であるティタニアルは力を入れたいと考えているのです。そのためにあなたたちのお力を拝借したいのです。」


にこやかな笑顔は崩さず、安心させようとしているのは見えるが、ならば、なぜここまで私は汗をかくのだろうか・・・?


「自由も補償いたします。勤務時間も法令に遵守いたしますわ、どうか私たちのもとで働いてくださいませんか?」

―ゲール、お前は何を研究していたんだ・・・?


恐らく、自分たちはこれから飼い殺されるのだろう。


他人から見れば涼やかな微笑みも、正面から見ると妖艶さと恐ろしさを感じさせる微笑みとなるこの女性がこの世界で二番目に力を持つ企業「ティタニアル」の社長、エルセレナであるのだ。


「かしこまりました。私たちの力が御社の力になれるようならば努力させていただきます。」

「あら、嬉しいわ。ありがとう。期待いたしますわ。どうか、今後ともよろしくお願いいたしますね。」


ギドラは表面上は微笑みを浮かべつつ了承するが、これから訪れる暗い未来に暗澹たる気持ちを感じざるを得なかった。


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