第2話 戦闘 矢筋
戦場では数が減ってしまった防衛部隊スカベンジャータイプが15機、通常M,Aが17機となり、約半数近くやられてしまったが、未確認機体も2機減り、1機が戦闘機動に問題ありという状況まで持ち込むことができた。だが、そもそも『真核』の迎撃に部隊の3分の1を割いていたこともあり、劣勢な状況から立て直すことができたとも言える。
立て直したといってもまるで乱打戦ともいうかのごとく高速で攻守が入れ替わりつつ、戦闘が続いている。戦場は機体の動きと反応速度や精度の面で未確認機体による襲撃勢力に圧倒的な優位があるものの、数の優位によって防衛戦力は薄氷を踏むような状況であったが互角にまで持ち込むことができたのであった。
「馬鹿野郎がさらに1機やってくれた。どうやら対策として照準を使用しない炸裂ダガーや近距離戦が有用だ。防衛戦力全機、それらを切り札として戦え!」
防衛拠点から重要連絡として1報が入る。決して安くない自分の機体を犠牲に1機を落としたことによって襲撃勢力の残りは接近戦型が4機、中距離型が2機、遠距離兵装が2機となっている。
戦場である荒野には複数の砲撃痕による窪みが増えており、また、ある機体の攻撃により土柱を上げつつ窪みが増える。窪みの近くは砂が掘り返されてしまい、土が柔らかくなっており、防衛勢力のM,Aにとって足を取られかねないため、その窪みを避けるようにして防衛戦力は回避と迎撃を続ける。局地的に見ればこう着状態であるが、防衛戦力は足元の状況が悪くなれば戦場を変えなければならないが、襲撃勢力にとってはその限りではないようで着々と進撃を続けている。
結果、防衛戦力は後ろに食糧生産施設があるため見た目より不利な戦局となってしまっているのであった。
―敵の反応が速い!これが『サジタリウス』の言っていた奴か?
それはファルフリードが『オラシオン』との戦いを終了させて前線に合流した初めの印象であった。
通常的なM,Aとの戦闘では当然であるが、自分の体で動かした後にM,Aが追従するように動くためどうしても1拍遅れて機体が動くような形となる。だからこそM,A同士の戦闘において必要な感覚は相手動きを先読みして回避と攻撃を組み立てることが最も重要なことになる。だが、襲撃勢力にその読み合いを感じない。見えている場所に反応の力で強引に攻撃を繰り返しているように感じる。
―だからといってその予感だけで射線誘導と識別を切れと判断する『サジタリウス』は思い切りが良すぎるがな。
窪みを飛び上がって強引な攻めをしようとしてきた襲撃機体に向き直って散弾銃を撃つ。襲撃機体は反応に任せて強引に体を捻り、回避機動をとるものの空中で大きく体を動かしたためその後の動きがつながらず退いていく。
「アステリズモ、どうだ?なかなか愉快な戦場だと思わんか?」
『サジタリウス』が脇から近づいてきて援護射撃をしつつ接触式通信を入れてきた。接触型のため、動きを止めて耳をすませた瞬間に楽しんでいる声音が来たため、うんざりした声音で返す。
「そういう仲間は余所で探してくれ。」
「本題だ。あと1機減らしたい。協力してくれ。背中を任せたい。ガイアには足止めをしてもらう。」
「狙いは?」
「近距離兵装型を。」
「わかった、誘き出し役は『ガイア』か?」
「そのつもりだ。」
「わかった。お前の動きは注意しておく。」
―こいつは戦うことではなく、極限の戦場を生き抜くことが好きなのだろうな・・・。
会話を短く切り上げながら、ファルフリードは思う。『サジタリウス』の感覚は分からないわけではないのだ。
同じように『ガイア』に接触通信をかけて相手に気取られないように作戦会議をしている『サジタリウス』を横目に眺めながら肩部のロケット砲で牽制攻撃を行う。射線誘導を切っても肩部のロケット砲は正面を向かなければ撃てないため、正面を向いた段階で射線から逃れられてしまう。現状できることは相手の動きたい方向に牽制しつつ、戦局を組み立てるしかないのだが、
―このままでは、厳しい、か。
焦りは禁物と分かってはいるが、状況は悪くなっているばかりである。後退できるような場所は僅かずつではあるが減っている。近づけば拠点からの援護射撃を受けられるのかもしれないが、それは逆もまた然り、相手から拠点が攻撃できることも意味している。大きく戦局が動くのはその時だろうが、その後立っているのがどちらかになるのかは分からない。
戦況を見ながら牽制を続けていたところで漸く襲撃機体の1機が焦れて『サジタリウス』の思惑にかかった。
―今は、目の前が大事、か!
『ガイア』はわざと孤立したように見せかけて最前線で足止めするように狙撃銃で攻撃していたところを攻めるために飛び出してきた1機に対して『サジタリウス』が攻撃を仕掛けていくのが見えた。
―あの時ほど危険な感覚は無い、こいつ1機なら問題ないな!
ファルフリードは飛び出してきた1機に対して脇から退路を塞ぐように突撃銃を連射しながら近づく。『ガイア』や他の機体は孤立した状態を保てるように他の機体の足止めに集中し始めた。2機が集中できる状態を少しでも確保できるように防衛戦力が最善を尽くしていく。
近距離型の機体は孤立したことに気づいたのだろうが、こちらが2機であることにも気づき、問題ないとばかりに突撃してきた。武装は突撃銃と散弾銃のため当然だが、近距離で戦うには非常に危険な相手になっている。しかし、この2機の前ではそのようなことは関係無いとばかりに圧倒し始めた。
相手に狙いを定められないように重心によるフェイントをかけて翻弄しつつ、回避が追いつかなくなり始めるだろう瞬間には相手に攻撃して、自由な状況を与えない。
上下左右、入れ代わり立ち代わるように相手の前を動きながら攻撃を重ねていく。
こうなってしまえば襲撃機体の反応の素早さや動きの柔軟さなどに大した意味は無くなってくる。翻弄され続けているうちに命中した攻撃は増えている。『サジタリウス』のバズーカ砲には細心の注意を払って回避するもののファルフリードの攻撃は避けきれずに傷が増えている。
「いい加減にしやがれよ!」
敵機体が焦れて叫んだ瞬間、2機は唐突なタイミングで機体を後ろに弾けさせ、距離を取った。
「馬鹿な!?」
訝しんだのは一瞬、意識の外から放られていた炸裂ダガーによる攻撃を背面の腰部に受けた襲撃者の意識は一瞬で刈り取られるのであった。
「見事。」
「そちらこそ。」
『サジタリウス』とファルフリードはお互いに労いの声を掛け合って、次の目標に狙いを定める。『ガイア』に狙いを定めていた1機に攻撃を仕掛けていくのであった。




