第0話 戦闘 終了報告
前回、突発更新しております。
お気を付け下さい
「こちらファルフリード、撤退完了。そちらの状況はどうだ?」
「無事!?よく無事で・・・。」
「・・・なんとか、賭けに勝ったよ。もう二度とごめんだがな。」
「よかった・・・。どうやらアルケーは本来の仕事日程より3日早く仕事をしていたみたい。変更届は申請していたみたいだと言っているのだけど・・・。言ってる傍からアルケーから通信が入ったわ。ホームと話が済んだそうよ。S,Aはこれから撤退すると言っているわ。」
「どういうことだ?」
「わからないわ。でも、何かアルケーはホームに不都合なことをやらかした、ってことでしょうね。」
「・・・救助部隊はどうなってる?」
「とりあえず、概ねは無事みたいだけど、被害は甚大みたい。ホームは何を思ってS,Aを派遣したのかしら・・・?あ、・・・やっぱりS,Aも撤退するみたいね。作戦領域外に向けて移動しているわ。」
さらにため息をつく。『エス』から変に執着されてまだ攻撃を受けるのではないかとひやひやしていたが、どうやら見逃してくれたらしい。
「そりゃよかった。これで一息つける。」
「えぇ。でも、今回の件の落とし前はしっかりアルケーに請求するわ。危険度ってレベルじゃないもの。地獄見せなきゃ。」
スピーカー越しに怒気が分かるほどアイーシャは怒りをにじませている。アルケーは今回の報酬をほとんど持って行かれるだろうし、担当者にはこれから本当に地獄を見せられることになるだろう。
―今回遭遇した危険を置いておいても少し、同情するか?いや、しないな。二度とごめんだ。こんな綱渡りを続けてやっと生き延びることができる戦場なんてやるもんじゃない。
「・・・あ!すまん、救助者1名を置いてきぼりにしていたんだった。ちょっと迎えに行ってくる。」
「了解、とりあえずこれで依頼終了よ。お疲れ様。気を付けて帰ってきてね。」
自分の無事が確保できたのならさっきの少女のことが気にかかる。あのまま放っておいて忘れ去られても寝覚めが悪い。通信を切って先ほどの建物に向かって機体を走らせる。
左腕が動かないため機体のバランスがうまく取れていないが、それ以外は損傷を受けているとはいえ、通常に走る程度なら何とかいけるという状況に思わず苦笑する。
「不意を打って、パルサー使って、奥の手見せて逃げるのがやっと、か。本当にどうしようもないな、よく無事だったな、俺。」
今更ながら手が震えてきた。操縦桿を握りしめすぎて腕の筋肉が痙攣しているのだろう。どうしようもない性能の差を感じるが、それが世の常だ。
周囲の状況を改めて見てみると、のどかな湿原地帯の研究施設はその片鱗すら見せないほど破壊されつくされている。そこかしこに自分やS,Aが撃墜したM,Aの残骸、S,Aのライフル着弾によるクレーターが見えており、黒い煙が立ち上っている。
破壊されつくした景色を超えて、先ほどの建物の上に飛び上がると、屋上の端で体を抱えている少女を見つけた。
「放ってすまんな。とりあえず、驚異は無くなった。救助部隊に連れて行く。」
少女は戻ってきたことに驚いたのやら安堵したのやら複雑な表情をしていたが、走って近づいてきた。機体をかがませて手の上に乗せたところで少女が何かを叫んでいるのが見えたため、外部マイクとスピーカーをアクティブにする。
「・・・りがとう!ちょっと聞いて!お願いがある!」
「なんだ?」
「聞いてくれるの!?お願い。もし可能なら救助部隊に連れて行くのはやめてほしい。」
「・・・どういうことだ?」
「救助部隊の連れて行かれる先に心当たりがあるの。私はそこに行けない理由がある。」
随分と年に見合わない落ち着いた声だな、とあまり関係ないことに思いをはせながら考え込む。
―元請けとトラブルでもあるのか?トラブルはごめんなのだが、無碍にするのも落ち着かんし、ここで会ったのも何かの縁か。
「あー、じゃあ俺たちのところに来るか?」
「いいの!?」
かなり驚いているのが見える。無理もないだろうが、アイーシャだけじゃない、恐らく会社にいる奴らも同じ判断をするだろうと思う。
「まぁ、そういう集団なんでな。とりあえず、ハーネス付けとけよ。せっかく生き延びたのに怪我なんかしたらもったいないだろう?」
手首についている救助用の固定具に体をつなげさせて、機体を屋上から飛び降りさせた。
「こちらファルフリード、作戦終了。帰投する。救助者1名有り。故有ってこちらで預かってほしいとのこと。」
作戦終了




