第2話 戦闘 弓構
――――――襲撃予告日 当日02:30――――――
警報が鳴り響く中、機体の電源やシステムを立ち上げていく。マスターシステムや関節機動の返り値の承認と一通りシステムのチェックと機動を行いいつでも出撃できるように整えていく。
今日が当日であり、これまでの状況から考えれば馬鹿正直に当日に本腰を上げた襲撃をしてくる可能性が高いため、チェックは念入りに後悔しないように行っていく。
「ファルフリード!起きて!って起きてる?珍しい。」
「敵襲だな。数は?」
「前回の大規模侵攻と同じだけかそれ以上の数のスカベンジャーが来ているみたい。レーダーの光点が敵の数で埋められちゃってわかんないみたい。でも、ひとまず感知できたのはスカベンジャータイプだけのようね。こちらでかくにんしても他に特筆すべき戦力はいないようね。」
操作の手を止めずに機動と承認を順に行いながら状況を確認していく。格納庫の中ではそこかしこで人が慌ただしく動いており、いつでも出撃できるように準備を整えていたものは機体に電源を灯して入口に向かって移動を始めている。
「ということは前座か。了解、準備ができ次第出撃する。援護を頼む!」
迎撃するに当たり良い場所に陣取るために格納庫に並んだ機体が我先にと急ぎ準備を完了させて順に出撃していく。準備ができた機体から出撃していく暗黙のルールにより機体の発着口は込み合っているため、すぐには出れないと諦めて念入りに機体のチェックを行っていく。周りにいる機体たちは味方部隊の中央部に陣取って敵部隊に各個撃破されないようにするために早く早くと出撃を急いでいるのだろう。だが、自分の機体を考えると補助脚がかさばり周りに味方がいると動きづらい上、装甲の分大きくなっているため常時動かなければ確実にいい的になることが見えている。最後に出撃すればよいぐらいの体で逸る心を落ち着かせながら準備を続けていく。
「アステリズモ!機体トラブルか!?できることはあるか!?」
「いや、機体がでかいから最後に出ようとているだけだ。安心して他のサポートに回ってくれ。」
格納庫を担当している組合職員から通信機に焦ったような声が届いたが、苦笑しながら返す。
周りに他の機体がいなくなったのを確認し、一度目を瞑って深呼吸する。
「こちらアステリズモ、スカベンジャー、出撃する!」
周りがいないならばと勢い込んで機体を入口に向かって走らせた。
格納庫を飛び出すと味方部隊は拠点の入り口から生産施設にかけてを中央として横に並び、一様に長距離狙撃用の砲身を構えて接敵に備えている。その姿を横目に平原が広がる最右翼に向かって機体を全速力で走らせる。
機体は着ぶくれたような姿に邪魔になりそうな4本の脚が伸びているが、その姿は見た目より素早く見える。
―思ったより機動力はあるが、初速に難がある、か・・・。装備を考えてみればこの速度は上出来に過ぎる、か。
機体を左右に振りつつ挙動を確認しながら走らせる。傭兵としてはどのような機体でも乗りこなせなければならないと、初めて乗る機体でも動かせるようにして生きてきたため戸惑うことは無いが、今回の機体はなかなかどうして使用感が良い機体だと感じる。アルガス、クルガンやニコがこちらの癖に合わせて調整してくれているからだろうと思い、重ねて感謝を抱く。
味方機体の場所を見てみると正面に主力と狙撃部隊がおり、左右両脇にまばらにいる味方が相手の横っ腹を突けるように布陣をとっている。狙撃に向いていない機体又は自分の機体が周りに味方がいると戦いにくいという自信家が両翼にいるのだろう。事前に傭兵組合から作戦の方向性を示されているため、皆、自分の得意な状況に合わせるように移動している。ふと、遠目に小高い丘に機体を隠すように待機している『ガイア』の姿が見えた。
―『ガイア』、か?ならこっちに『サジタリウス』は・・・いない?反応もない。反対側にいるのか?
見回してみたがやはり『サジタリウス』の姿は見えない。業務提携をしているからといって常時一緒にいなければならない決まりもないのだから、別の場所にいてもおかしくは無い。だが、『ガイア』の存在は心強い味方だ。
機体をしばらく走らせていると敵の部隊のいる左手側を見るとなだらかの丘の向こうに敵部隊がレーダーの光点上に見えてきた。ファルフリードは機体を止めて双方の戦力がお互いに有効射程距離に入るまでを見極める。敵部隊は散発的に射程外から概算で砲撃を行ってきているが、機体を走らせながら目視で砲撃をしたところで概ね見当違いの方向に着弾している。足を止めれば迎え撃つ方が有利なため相手機体はとにかく一直線に機体を走らせてくる。
待つこと数秒。有効射程に入ったのだろう長距離砲撃による迎撃が始まった。敵機体は遠く砂煙の向こうにいるが肉眼では見えないが、着弾した場所だろうがそこかしこに土柱が上がる。
―思ったより光点が減らん、か。使いやすい上、生存率の高い機体となると普通に販売したいれば金になるんじゃないのか?
レーダーに直撃を受けて行動不能になった機体を示すように動きを止めた光点が見えてあさっての方向に思考が流れるが、頭を振って思考を戻して時機を計る。
左右に分かれた部隊の役目は横っ腹をつくように攻撃することとなっている。
―さぁ、・・・戦闘開始だ・・・!
味方による砲撃が少なくなり、敵部隊が中央に向かって集まり出したタイミングに合わせて改めて深呼吸し、機体に取り付けられている砲門で照準を大まかに合わせて弾幕を張りつつ戦場に向かって走らせるのだった。




