第2話 戦闘 物資輸送護衛
七番街と八番街へ移動する道には鬱蒼とした森が広がっているが、道路として整備された場所は綺麗にその森が開けている。街から街へ移動していると段々と森としての性格が無くなり、不毛な大地が広がり始めるその道路をアステリズモの大型トラックが物資輸送大型トレーラーの前を走っている。
アステリズモは昔馴染みのベスコフからの依頼に基づき七番街から八番街へ生活物資を輸送する車両の護衛をしているのであった。
八番街は平均気温が低く、特に気温が低い地域になると夏でも外に出れば低体温症は免れないほどなのだが周りの景色を見ると八番街までまだ遠いことが分かる。いかに速いスピードで走るにしても恐らく七番街を出発してから襲撃なく順調に移動しても到着は明後日以降になるだろう。アステリズモのトラックはアルガス、クルガン、ファルフリードそしてカルディエの4人が乗っており、トラックをアルガスとクルガンが交互に運転して現地に向かっている。今は午前7時に移動を始めてから、二人が5時間交代で移動を続けて丁度2度目の交代が終わったところであった。
3度目の交代が終われば一度夜間睡眠休憩を取ることになっているが、ファルフリードは襲撃を受けるとしたらその時である可能性が高いと思ったため、出発後はできるだけ睡眠をとることにしていつものキャビンで昼寝を続けていたため、さすがにもう寝ることができなかったためソファに寝転んで欠伸しながら待機を続けていたが、突如として警報がキャビンに鳴り響いた。
ファルフリードは飛び起きて上に羽織っていた服を剥いでパイロットスーツとなり機体に乗り込んで起動作業を始める。カルディエが幌を開くと同時にアルガスがトラックのダンプ機構を稼働させて荷台を傾けることで機体を起き上がらせていく。今回の作戦用に致命傷を避けるために機体には若干装甲が増設されており、見た目的には着ぶくれた印象のスカベンジャーがその姿を見せる。
「ファルフリードさん。作業を続けながらでも聞いてください。どうやら予想通り襲撃です。恐らく九番街のごろつきでしょう。3時の方角から攻めてくるようですが、陽動の可能性もありますので、すぐに戻ってこられるような位置取りでお願いします。今回の敵部隊はあなたの敵ではないでしょうが、思いっきり痛めつけて帰りに襲われないようにしちゃってください。こちらは偽装済みですから多少無慈悲にやってもアステリズモとばれることはないでしょうし、よろしくおねがいしますね。」
クルガンから飄々とした声で物騒な言葉がかけられる。正直、その方が自分向きで助かる。
「おい、ファルフリード、予算的に厳しいから肩部のロケットランチャーはよほどのことが無い限り使うな。散弾銃とアサルトライフルで戦うんだったら損傷しなけりゃ全弾使い切っても多少は問題ない。行けるな?」
アルガスから凄まれる。大体いつも通りの予算だということがわかるので、いつも通りできるだけ節約する方向性で行くことを決める。機体の傾きが45度を超えて立ち上がれるようになった段階で機体の起動が完了し、頭部の複眼カメラが赤く光りだす。
「了解、二人とも。ある意味いつも通りだということだろ?なら、任せてくれ、ファルフリード、出撃する!」
機体をトラックから中空に躍らせて、うす暗闇の街道からアステリズモのスカベンジャーが出撃するのであった。
トラックから送られてくるデータに今回の敵勢力が表示される。
―高機動戦車3台、戦車型M,A3機、か。動ける装甲の固い編成となると、逃げたら陽動確定だな・・・。
ファルフリードは機体を全速力で敵勢力に向かって走らせる。街道を外れると地面は整備されていないため地面の凹凸で機体が大きく上下に揺れ始める。
こちらが迎撃に1機出撃させたのを見てレーダー上の光点が止まったのが見える。やはりこの部隊は陽動なのだろうと思う。できるだけ戦力を引き付けようとしたが、こちらが1機であることに気付いたので、どうしようか迷ってしまい、立ち止まってしまったのだろう。最初からこの構成で襲撃が目的ならせっかくの戦車型M,Aならば長距離砲の1つも持っているだろうから砲撃を加えたほうが良いことは明白だ。
―さて、その迷いが命取りだということを学んでもらおうか・・・!
ファルフリードは機体肩部のブースターを点火させて機体足裏のローラーで可能な限界速度以上の速度で近づく。強いGが全身を襲ってくるが、歯を食いしばって前を見据える。
どうやらこちらの速度に驚いたのか、迎撃射撃が襲ってくる。戦車型M,Aというのはその名の通り戦車のようなキャタピラを装備した巨大兵器なのだが、当然近接戦に持ち込まれて高速で水平方向に機動する相手が苦手のため、本来だったら隊列を組んで相手が避けにくいように砲撃することが基本なのだが、動揺によるものかまばらな砲撃が断続的に続いている。先ほど、クルガンからあまり離れすぎるなと言われているがこれくらいの距離ならローラーだけでも100秒もしないで戻ることができる距離だ。
―一気に片を付ける!
付近にあった岩場の陰に機体を隠すと見せてすぐに機体を戻して最短距離で近づいていく。散弾銃を抜き放って両手で保持してまずは牽制射撃を行う。牽制といってもM,A用の大型銃器であることに加え、火力に定評のあるアルトール製の散弾銃「GSK-38」であるため、余波だけでも近くの地面が抉れている。
被弾を避けるために相手の側面に回り込みつつ、まずこちらに最も当ててくる可能性の高い高機動戦車に狙いを定めて射撃を加える。散弾銃の威力もさることながら至近距離で直撃を受けた戦車の車体を抉り吹き飛ばす。土煙が吹き上がるが構わずに回り込み続けて射撃を加えて素早く高機動戦車を片付ける。
―鈍重なM,Aじゃあ近接戦には向いていないだろう!
機体を相手の砲塔から避けるように横に素早く移動して相手の嫌がる機動を続けて射撃を加えるが、そこは装甲重視のM,A一発は何とか耐えきって見せる。
「ファルフリードさん反対方向から高機動型と思われるM,Aが接近中。恐らく残り3分で彼らの射撃範囲に入ります。急いで片づけてもどってきてください。」
クルガンから通信が入り、少し焦る。逆方向に移動するとなると3分だとかなりぎりぎりとなってしまう。
多少強引にでも攻めきると決めて相手の最も装甲が薄くなってしまう場所である正面中央部にあるコクピットに向けて散弾銃を撃つために移動を始める。当然、砲塔の正面に立つことになってしまうため細心の注意を払うが、フェイントやランダム機動を混ぜて一瞬正面を通るようにして銃撃する。1機に当てると、隣にいた1機は大きく動揺したようで機体の動作に怯えが混じったのを感じた。その動揺を見逃さずにもう1機の正面から銃撃する。胸元を大きくえぐられたM,Aは直撃したことによって見上げるような形で上を向いて沈黙する。3機目が自棄になったのか遠隔砲撃機体で近距離戦に持ち込もうと雄たけびを上げながら向かってくるが、こちらとしては好都合で冷静に散弾銃で沈黙させる。
後ろから撃たれても敵わないので、アサルトライフルを使って3機のM,Aにある砲塔の付け根に向かって攻撃して機体の火薬に引火させて爆発させる。
爆発したことを確認したファルフリードは急いで機体を翻し、トラックの方向へ走り出した。恐らく、依頼主自身も護衛部隊を帯同させているはずだろうが、報酬をはずんでもらうためにもこちらで全敵勢力を撃破したい。そのため、もう一度肩部の追加ブースターを点火し移動を始める。
・・・-・・・
Gに耐えて急いで戻ってくるとぎりぎり間に合ったようで、まだ襲撃者は攻撃を始めていなかった。
「よくもティーガーたちをやりやがったな!ちくしょうめ!」
相手に見えるように移動する姿を見せると、全周波帯で罵倒してくるのが聞こえた。電撃作戦向けのM,Aであり、なかなか乗りこなすことの難しい8脚の蜘蛛足型のM,A3機のうち1機がものすごい勢いで近づいてくる。2脚よりはるかに安定性が優れている蜘蛛脚に、かろうじて人型の胴体を持つ機体はその移動の素早さが売りの機体だ。だが、その分被弾面積が大きい上に足やその接続部分となる箇所に加えてコクピット部分と致命傷となる箇所が多すぎるため反撃に弱いことでも有名だ。だというのに、頭に血が上ったのかかなり直線的な機動でこちらに向かってくる。
こういう相手は特に散弾銃がやりやすい。距離を取るように散弾銃を撃って、相手の重要個所の損耗度を上げていく。3発ほど撃つとその足取りが突如として怪しくなるのが感じるが、構わずに距離を詰めようと近づいてくる。もう1発撃つと正面の足2本から煙が上がっているのが見える。こうなってしまうと制動性能が極端に悪くなってしまうのでファルフリードは距離を取るような動きから左に動いて相手が旋回しなければいけないように位置取りをすると、相手の機体がバランスを崩しているのが見える。せっかくの8本足も使えなくなってしまった足はそうなってしまえばただのデッドウェイトにしかならない。一転距離を詰めて散弾銃を胴体部分に当てて機体を爆発四散させる。
「撤収だ!割に合わねぇ!逃げんぞ!」
恐らくこちらに追ってくるなということだろう、全周波帯で怒鳴り声が聞こえると同時に、様子を見ていたのであろう2機が速やかに撤収を始めるのがレーダー上に表示される。
ファルフリードはため息をついて体の緊張を解いてため息をつく。今回は練度も低い上に数も少なかったため、そこまで神経を削らない戦いであった。弾薬の使用も最低限で被弾0となればアステリズモの財布事情としては良いものだろう。
「いつもこれくらい楽だと助かるのだが、どうだろうな・・・。」
ファルフリードは一人ごちると機体をアステリズモのトラックに向けて走らせるのであった。




