表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/82

第1話 幕間 『射手』と『地上に生きるもの』

「あなたたちがここまでの醜態を晒すとは思ってもいなかったわ。どうしてこれだけの戦力でたった1機を仕留められないのかしらね。」


 作戦室として使用している地下にある薄暗い集会室の中で、感情的にして皮肉気に語る女の声を聞いて『サジタリウス』の操縦者は冷めた目で見ていた。今回は自分の割り当てられた場所にアステリズモが来ることは無かったため、そのまま帰ってきてしまったがアステリズモ側に配備された3機のうち2機は撃破され残ったのは損傷の大きい1機となるとその強さには興味深いものがある。

 どうやらこの依頼者の女は内通者から情報が入ってこなくなったことにもいらだちを感じているようでもあった。だがしかし、こちらの戦力が情けないというのは最もでもある。同程度の性能を持った2対1の状況を、2度も作ってどちらも仕留めきれていないのだ。個人的にあまりの強敵に嬉しく思うのだが・・・。

 しかし、先ほどの『スピーダー』と『ガイア』の戦闘記録は実に面白かった。また、生き延びたのが『ガイア』というのも実に面白い。『スピーダー』も今回出撃した中ではかなりの腕前を持っていたがそれに見事に連携を取った『ガイア』とその連携をもってしても仕留めきれなかったアステリズモに気分が昂ってくるのを感じる。

 残った出撃可能なスカベンジャーは自分含めて『ガイア』と『シャングリラ』の3機。全部で雇われたのが10機だったはずなのだがどれも撃破されたかまたは中程度の損傷を受けてしまったことで、自分で整備できないために出撃することが難しいと来た。実に情けない。自らの機体くらい自分で整備できなければならないと思うが、そのあたりはプロ意識の違いというものだろう。

 その点『ガイア』は見る目がある。まともにダメージを食らっておきながらこの短期間の間で無事に動かせるまで機体を修理して見せたのだ。あの若さでそこまでの技量を持っているのはなかなか珍しい。

「どうやら、アステリズモがいる部隊はこちらの近くを通ってわざと狙われに来てくれる様子なのが救いね。あなたたち最後のチャンスよ。撃破でもなんでもしていいから相手の機体を持って帰ってきたら報酬よ。このまま倒せなかった場合は報酬無しだということを覚悟して。」

 『ガイア』の操縦者が顔を青くしているのが見える。おおかた一攫千金を目指してこの依頼に飛びついたのだろうが、こんな依頼に飛びつく段階で後がないのが目に見えているともいうものだが・・・。

 『ガイア』の操縦者は整備でついてしまった顔やブロンドの髪についた黒ずみを消すこともせずに端末で何かを真剣に調べていたが、突然こちらを向き話しかけてきた。


「『サジタリウス』の操縦者さん、お願い、どうすれば強くなれるの?」


 端末を覗き込むとどうやら先ほどのアステリズモとの戦闘記録を見ていたらしい。率直な感想を述べてしまえば腕の差はそこまで大きく開いているようではないと思う。


「・・・ふむ?」

「あそこまで強くなるにはどうしたらいい!?私は救いたい人がいるんだ。その人を救うためにはこの任務必ず達成したいんだ・・・!」


 どうやら『ガイア』の操縦者には救いたい人間がいるらしい。強くなることに動機があることは悪くない、また、操縦技術の筋もいいときている。


「そうだな、お前とアステリズモにそこまで腕の違いはないな。戦闘記録を見ても追い詰めたどころか撃破のチャンスがあったのは『ガイア』側だったな。」


 チャンスは2度。『スピーダー』と連携した狙撃と最後の反撃の地雷、どちらも筋は良かった。


「なら!」

「だが、決定的な差がある。

 その違いとは、どれだけ人間性を捨てているかどうかだ。命を失う恐怖、痛みへの恐怖、勝利への油断、それらをすべて捨て、あらゆるものを平坦に見たとき、真の危険を見逃さず、真の好機を勝ち取ることができるものだと私は思っている。」

「・・・。」

「私はお前のことを筋が良いとみている。次はどうせ依頼主の事だ、かならず3機で迎撃せよとのたまうだろうよ。私は報酬に興味が無い。だが、奴を仕留めてみたいのだ。協力を頼めるか?」

「・・・わかった。」


 本当に筋が良い。『ガイア』の操縦者の目に灯る静かに燃える火を見るとそう思わざるを得なかった。

 いずれ、アステリズモを打ち倒すことができたら次は育てたこいつと闘うのも悪くない。


「ならば、対策をとろう。少なくとも味方に邪魔者がいるようでは話にならんからな。」


 『サジタリウス』の操縦者は呟き、顎で端末を示してこれからの作戦を練ることを示す。『ガイア』の操縦者は素早く端末を立ち上げ近くの地形図などのデータを表示させて打合せの準備を整えていった。

 『サジタリウス』の操縦者の口元に暗い笑みが浮かぶ。これからの戦いに興奮と喜びを抑えきれずに・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ