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第1話 戦闘待機 尋問

「さて、デンゼルさん。自らの部隊である戦車部隊を半壊させて恥を晒し、なおかつ企業の社会的な名誉に対して大ダメージを与えたあなたたちには残された道はありません。」


 先ほどデンゼルを見たときは非常に体が大きく見えたのだが、手錠されて椅子に座らせられている姿は非常に小さくなっており、また血の気が引いているのだろう唇は青く、目は血走っていた。


「テスタレッツェさん、血は片づけるのが面倒なんでここじゃなくて別の場所でお願いね。」


 拷問や暴力には興味ないし気も進まないが、得られる情報には興味があるので同席はしようと思う。


「ちが、ちがいます。私は緑化組合とは関わりなんて持っていません。わ、わた、私は誓ってテロ組織とは関わっていません。」


 第一印象の高圧的な男という印象はどこへやら、動揺して口元が震えている。


「そうでしょうとも、主導したのがロジエスだというのも把握していますよ。ただ、あなたの弱味がロジエスに付け込まれたということでしょう。デンゼルさん、あなた投資の才能は無いでしょうから、今後一切やらない方が良いですよ。

 アステリズモさんに釘を刺されてしまったのであまり大きく血が出るようなことはしませんが、ある程度はさせていただきますので覚悟してください。」


 デンゼルは自分の状況が割れていると悟ったのかガックリと項垂れる。おおかた投資に失敗して借金作ってロジエスあたりに付け込まれたのだろうが、ホワイトヘザーの情報把握が早すぎるんじゃないかと驚く。

 すると、電子音が鳴り響いた。どうやらテスタレッツェの携帯端末に通信が入ったようである。


「はい。・・・・了解。

 アイーシャさん、もう一人同席させたいのですけど・・・どうでしょう?」


 恐らくロジエスの事だろうと思うが、余所でやってほしいと思うのだが・・・。


「ご迷惑おかけして申し訳ございません、本当はご迷惑おかけするのも悪いのでこちらの施設でやりたいのはやまやまなんですが、士気の問題もございましてこちらでさせていただくと助かるのですが。」


 悩んでいるのが分かってしまったのだろうか、こちらにさらにお願いしてくる。テスタレッツェはお願いの際にも表情を変えないので、なんともお願いされているような気がしないのだがしょうがないと諦める。


「わかったわ、貸しね。ただしホワイトヘザーでなく、あなたに、よ。」

「助かります。ふふ、少しアイーシャさん、評価を変えさせていただきますわ。アステリズモの皆さんは本当に面白い方揃いなのですね。」


 テスタレッツェが不気味なことを言っている気がするが、その表情は少し微笑んだ気がした。



・・・-・・・


「・・・どうやらテスタレッツェ女史がいらっしゃるということは・・・私は終わり、ということですか。」


 中性的な姿をしたテスタレッツェの部下2人に連れられた、現在は既に解任された、元、救助活動責任者ロジエスは肩の力を抜いて呟いた。


「話が早くて助かります。あなたが緑化組合に協力した経緯に興味はありません。ただ、ホワイトヘザーにいた一員としてあなたにはやるべきことをやっていただきます。

 緑化組合はどのようにこれから襲撃するのか把握していますか。」

「残念ながら、私は知らないのですよ。知らないものに答えられる道理はありません。今回、私に求められている状況はもうすでに達成しましたし、ね。」


 ロジエスはふっと笑って答えるが、その姿は余裕に満ちている。その姿にアイーシャは驚愕を隠すことはできなかった。思い起こすのは最初に自分たちがあった時は奇襲に動揺して取り乱していた姿であるが、しかし今ロジエスが見せている姿は随分理性的だ。


―あの時の一連の焦りから全て演技だったということ?


 アイーシャは疑問を口に出した。


「ロジエス殿、あなたはあの時焦っていたのは・・・?」

「そうですね、あの時は本当に焦っていたのですよ。緑化組合の要請はアステリズモを人数の少ない第二部隊に入れて、予定通りのルートに進ませるということだけだったのですから。」


 つまり、緑化組合に邪魔されるだろうから先に第0次救助活動(笑)をやって本来第2次救助活動の別働隊が救助できない分を救助しようとしていた。それを読んだ緑化組合に襲撃されたということなのだろうか。


「つまり、あなたは緑化組合に見切りをつけられていた、ということね。」


 ケイティが腕を組んで眉間にしわを寄せて声を上げた。


「そういうことでしょうな。彼らの理想には賛同していたのですが、私も彼らにホワイトヘザーの一員として関わりすぎているなと思っていましたしね。そろそろ頃合いだったのでしょう。覚悟していましたよ。」


 色々とあきらめた表情でロジエスはすらすらと述べる。その姿を見たのだろうか、クルガンが補足してきた。


「これは緑化組合からのホワイトヘザーへの宣戦布告ということでしょうね。救助部隊長になれるほどの人員でも緑化組合は切り捨てられるということですし・・・。ただ、こちらとしてもこれ以上ホワイトヘザーのごたごたに巻き込まれるのは面倒ですから、緑化組合が何故アステリズモを狙うのかを聞いていただければと思います。」


 確かにクルガンの意見は最もだと思う。ロジエスの役目はホワイトヘザーへの宣戦布告要員だ。これ以上そこを掘り下げられて巻き込まれても困る。


「ケイティ、ありがと。あと一つ、アステリズモとして聞きたいことがあるわ。なぜ、アステリズモに宣戦布告したの?」

「詳しくは知らんな。だが、緑化組合には武器を販売して利益を得ているという面もある。ならば、いわくつきのスカベンジャーの戦闘データを欲しがることに理解はできるだろう。」

「つまりわからない、ということね。」


 アイーシャは席を立った。ケイティに目くばせするとケイティもどうやら同じ考えらしい。これ以上首を突っ込んで知らなくて良い情報を得る必要はないだろう。

 テスタレッツェが何かを言おうとする前にアイーシャは機先を制すように話し始めた。


「アステリズモはホワイトヘザーの依頼を続けるわ。緑化組合が私たちを狙う理由も興味あるし、ここで撤退しても安全が確保されているとも思えない。だからアステリズモは依頼をそのまま遂行するわ。ただし、貸しは2に増やさせてもらうわ。ホワイトヘザーの依頼が無ければこんなことにはならなかったでしょうから。

 テスタレッツェさん、部屋はそのまま使っていいわ。ただし、さっきも言った通り流血するならきちんと片付けすることが条件よ。」


 アイーシャは部屋から出て行く際に横目に部屋の中を見たが、テスタレッツェの表情が笑っていたような気がした。


PV1000突破しました。

いつもご覧になって下さってありがとうございます。


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頑張ります。


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