第1話 戦闘待機 事情説明
応接室には私とケイティとファルフリードにテスタレッツェと拘束された部隊長が入り、別室で他のメンバーに聞いてもらっている。
このトレーラーは普通の建物にくらべれば手狭だが会議スペースも備えており、7人程度なら十分な余裕をもって入ることができる。ただ、このトレーラー自体は父親が持っていたものなので見た目は多少きれいなものの、本来は白い部屋なのだが過ぎ去った年月により全体的に部屋に黄ばみが目立つ。
会議室に人がそろうと、前回のオフィススーツとは違い体の防護を目的としたアーマー付のボディスーツを着用しているテスタレッツェが頭を下げた。
「まず、アイーシャさんをはじめとしたアステリズモ皆様にお詫びさせてください。今回の部隊運用に伴い予定にない前倒した救助活動による出撃、そして情報漏えいによる部隊の襲撃被害。どれも看過できるものではありません。今回の騒動に伴い、指揮官は更迭させていただきました。」
―ケイティとクルガンの言うとおりだったってわけね。・・・それにしては行動が早すぎるような気がしなくもないのだけど、この行動の早さは不気味ね。
アイーシャは口元に指をもってきて思考を巡らせつつ問いかける。
「結果にしてはそうなのだろうけど、なぜこのような事態が発生したが原因は分かっているのかしら?」
「調査の結果、今回の作戦には緑化組合と呼ばれるテロ組織が後ろにいるようです。」
緑化組合とは随分エコでテロ組織と思えないような名前なのだが、初めて聞く名前にケイティを見る。
ケイティも怪訝な表情をしているのを見ると知らない名前なのだろう。
「終末思想を持った宗教組織だということは聞いたことがあるのですが・・・。社長、情報を聞き出していただけませんか。」
髪で隠した耳に取り付けているイヤホンからアドバイザーとして別室に待機してもらっているクルガンの声が届く。
「・・・正直に言わせてもらうと、あんまり知らない名前ね。情報が欲しいわ。」
「知らないのも無理ありません。上部街区にある企業に対して経済的にテロを行っている組織ですから・・・。一応、その名の通り緑化を目的とした組織ではあります。実は緑化組合に所属している人は多いのですが、実際にこの星が砂漠化を始めており、私たちも緑化しているのですが砂漠化が止まらないと言うこともありまして、人は増える一方なのです。そして一般市民に対して終末思想的な考えを刷り込みつつ、緑化を推進しているのですが・・・。実際の裏の顔は経済テロから爆破テロまで幅広く活動する傭兵や非合法組織向けの武器商人です。」
テスタレッツェは情報を制限するつもりもないのだろう、色々と情報をくれたのだが、組織として色が濃すぎる。
「あまりにも幅広くやりすぎて胸焼けしそうな団体ね?結成時期や場所は分かっているの?」
「少なくとも60年前には組織として確認されています。その時は非営利組織としてホームに登録されたと聞いておりますが、その代表者はもう死んでいます。なお、組織の発足は第2街区だと記録されています。ちなみに現在第6街区に拠点があることが確認されています。」
「・・・なぜ、今回の作戦に緑化組合が関わったのか分かる?」
「それが・・・不明なのです。目的が分からないのですよ。ただ、今回の特徴として、作戦に当たり連絡が取れなくなった傭兵団体がいくつかあります。その特徴が組合に登録されていない、または組合に多数の違反歴があり、なおかつM,Aの運用に多少知識がありスカベンジャーの保有が可能な組織、となります。そして、今回スカベンジャーを保持していなかった傭兵団体がスカベンジャーを取り扱っていることを考えると緑化組合はスカベンジャーを次の目玉商品にしたいと思っている可能性があります。」
―それはつまり、非合法よりの傭兵かつある程度経済力のある場所に手当たり次第声がかかっていて、スカベンジャーを売るに当たって色々と調査しているというところかしら?
「うちを名指しされたのだけど・・・?」
「アステリズモさんはスカベンジャー持ちの中で立場は政府よりで緑化組合の目的から邪魔となる可能性がある、というのが一つ。後は単純に兵器として練度が違いすぎるのですが、あなたたちの戦い方をデータとして売り込む気なのではないかと予想しています。」
テスタレッツェが指を組みながら話す。先日と同じく表情を変えずに話してくるので言葉の裏が読みにくい。どこまで本当なのかもわからない。ただ、これではっきりしたのはファルフリードやアステリズモが恨みを買われるような組織ではないらしい、ということだ。
「わかったわ。・・・それじゃあ、うちが残っている理由は無いわね。」
なら、正直ここまでの仕打ちを受けたのだ。残る理由がない上に危険度がおかしい。命かけてまで金を集めてもその命がなくなったら使えないのだ。
「と、言うと思ってましたが、ここで帰らない方が良いですよ。S,Aが襲撃したのですが撃破数を聞くと、明らかにまだまだ敵勢力は残っています。」
「どういうこと?基地を隠してS,Aをやり過ごすことができるなんて聞いたことがないわ、S,Aがテロ組織を見逃して、さらにうちの会社をねらうと?」
「S,Aの襲撃対象が第六街区の武装基地となっていますので、そこに駐留している傭兵組織は対象に設定されていないのですよ。」
―わけが分からないわ。武装化している地区が襲撃を受けるのなら攻撃するのではないの?
混乱していると、クルガンから解説が入った。
「社長。今回テロ活動して第三者に被害を与えたのは6番街の住人ということになっています。緑化組合はテロをしていないことになっているのです。もし、緑化組合がテロ実行に加担していない傭兵を緑化組合独自の土地で隠していれば、今回の事は説明が可能なんです。
どうやら今回の騒動・・・順序を逆に考えなければならないようですね。6番街は商品の締め付けにテロをしてS,Aに襲撃されたのではなくて、S,Aに襲撃された後にくる正規の戦力を持った企業を実験台にするために今回の商品の締め付けに対するテロをした、ということでしょう。」
解説を聞いて考えをめぐらす。
―ということは確認しなければならないのは・・・?
「ホームの依頼した救助活動に対する抗議としての襲撃って、ホームにとってS,Aの出動案件になりえる?」
「・・・なりませんね。抗議活動への反抗というのはは第3者がいませんからね。たとえホームからの依頼だとしてもその大原則は変わることはありません。」
沈黙が下りる。要するに今逃げてもまだまだ解決には程遠いし、アステリズモを名指ししている以上孤立は危険だ。
「この状況、ホワイトヘザーはここまで予想していたんじゃなくて?」
ケイティが眉間にしわを寄せて声を発した。
「いえ、ホームの制圧対象とならない反抗活動が行われることまでは予想していましたが、ここまでとは思っておりませんでした。緑化組合がバックにいたこと、先ほどまで指令であったロジエスとそこにいる愚か者であるデンゼルが緑化組合に貸しがあって脅されている状況であった、ということまでは予想しておりませんでした。
・・・ですから、私がここに来た、ともいえるのですが・・・。」
表情を変えていなかったテスタレッツェがここにきて手錠を付けられた部隊長、-名前を初めて聞いたのだが、デンゼルを底冷えするように冷めた目で見据えるのであった。




