第1話 戦闘 VS『サジタリウス』
スカベンジャー1機とM,Aを殲滅しても油断せずに機体をすぐに丘の陰に退避させると、今まさにいた場所に銃撃が通り抜けた。
「なぁ、アステリズモ。今回、お前を破壊すればスカベンジャーの最適化されたマスタープログラムが手に入るらしいぞ。やられたふりをしてくれれば後で流してやらんでもないぞ?」
不遜な声の無線が広域チャンネルで流される。
―六番街に妙に傭兵が多いのはそれのせいか?
「ふん、殺意溢れる銃撃を受けて口車に乗るものか。・・・しかしその様子だとスカベンジャーを持っている傭兵に声がかけられたみたいだな。最適化されたマスタープログラムなんぞ・・・、そんな与太話信じているのか?」
「・・・ふん、よくわかったな。だが、マスタープログラムの話は本当だぞ?実際、見たからな。腕に自信のある奴らは参加しているぞ。ま、おおかた一攫千金を狙っているってことだ。」
かまをかけて話しかけてみると、ありがたいことにネタばらしをしてくれる。
「その貫通性の高い狙撃ライフルによる戦法聞いたことがあるな、『サジタリウス』、お前ほどの腕を持っていてもマスタープログラムは欲しいのか?」
「アステリズモ、俺が分かるか。はっ。お前に知られているとは光栄だな。俺の目的はマスタープログラムじゃないさ。アステリズモ、お前ならわかるだろう?傭兵として、スカベンジャー乗りとしている以上、最強の名が目の前にあるなら挑むだろう。」
『サジタリウス』、その名はスカベンジャー乗りとしてはS,Aに匹敵するほど死神としてその名を呼ばれている男の機体だ。噂では高威力の狙撃と中距離の射撃、近距離の乱戦すべてに隙が無く、最強のスカベンジャー乗りとして語られているのだ。その相手が名指しして、1対1の状況を作ったとなると結論は決まる。
「・・・つまり、目的は俺、だと?」
「さて、少なくとも強敵と出会えるのならば、手を上げるものじゃないか?」
「俺は戦闘に関してはそこまで腕は高くない、とされていると聞いていたのだが。」
「阿呆が。自己評価はできているのだろう?」
苛立った声が返ってくる。
―どうやら、見逃すという選択は無いらしい。
レーダーを全力で稼働させるが、大きな反応は返ってこない。我慢比べは望むところなのだが、『サジタリウス』と普通に戦えばこちらも無傷では済むまい。どうやらここまでは戦力分析しつつ邪魔者が退くまで見ていた、というのが正しいのだろう。でなければもっと早くに乱戦中に狙撃が襲ってきたはずだ。本当に目的は最強の名とやらのために俺を倒すことらしい。
こちらは場所を補足されているが、向うを補足できていないのは不利だ。先ほどの射撃のおかげで概ねの方向は分かっている、ならばやれることはと考えて丘の陰からグレネードをその方向に向けて放物線を描くように放つ。残弾全てを使い、絨毯爆撃を図る。
―レーダーに動体反応!来るか!
グレネードの砲身を機体から外して軽量化し、丘から市街地に戻って中距離線に持ち込む。
砂漠戦仕様のカラーリングに身を包んだ『サジタリウス』の機体が見える。アステリズモのスカベンジャーは細身に分類されるがそれに対して『サジタリウス』はどこまでも基本に忠実な装甲と機動性のバランスを維持したバランスの良い機体だ。砂の色に対して青い単眼カメラが顔に設置されて殺意を込めて光っている。
牽制も含んだアサルトライフルによる射撃で互いに応酬する。使用するアサルトライフルはどうやら同じ、アルトール社製の「GAT-55」のようでお互いに癖をつかんでいるため、貫通できない遮蔽物をできるだけ選び回避機動をとる。
―やりにくい・・・!
先ほどの『ブレードアーツ』と名乗っていた馬鹿と違い、被弾のリスクを限りなく減らした回避機動を繰り返してくる。
射撃の位置から概ね相手の位置がどのように動くか予想して射撃するが、相手もそれを読んでいるためなかなか思い通りに戦闘が進まない。
こう着状態というには見た目が躍動的すぎるが、お互いに決め手を欠くため、状況は拮抗しており、戦況的にはこう着状態となってしまっている。
―まだか・・・!
「ファルフリード!こっちは状況を確保したわ!パルサーを撃つわ!」
アイーシャから念願の通信が入る。
―さて、勝負だ!
回避機動を繰り返して射撃を重ね、まるで焦れたと見えるように前に出る。『サジタリウス』は警戒しつつ機体を動かして迎撃を図ってくるが、こちらもアサルトライフルから散弾銃に持ち替えて建物ごと射撃をする。貫通はしないものの建物は傾いで『サジタリウス』の視界を一時的になくすと、『サジタリウス』は近接の短銃身型のバズーカに持ち替えて距離を近づけてきた。
直後、荒れ狂う電磁攻撃にさらされ機体のセンサーがダメージを負う。
だが、『サジタリウス』は予想していたのか動揺することなく冷静に目と耳を凝らして迎撃しようとしていたのだが・・・。
「何!?」
ファルフリードは崩れ落ちる不安定な建物を足場に『サジタリウス』を飛び越えて一目散に距離を取っていたのであった。
こちらの目的は戦闘の勝利ではない、安全な場所にトレーラーが退避することだ。ならば、馬鹿正直に戦闘を継続させる必要などない。
「逃がすか!」
追いすがるが、どうやら『サジタリウス』は気づいたらしい。正直、頭に血が上って忘れていてくれると助かっていたのだが、ホワイトヘザーの戦闘部隊が後退しながら砲身はこちらに向けていたのだ。ファルフリードは一応、友軍機のためホワイトヘザーの部隊の近くを通り抜けて退避する。
―同じ機動性なら足止めを食らってしまえば、追いつくことなどできないだろうよ。
ファルフリードはため息をついて肩の力を抜く。ホワイトヘザーには悪いが、彼らもこちらを見捨てて撤退していたのだ、お互い様だ。
「ふふ、そうか、・・・そうか。悪いが八つ当たりをさせてもらう・・・!」
『サジタリウス』が呟くの聞こえた。
今から回頭して救援しても間に合わないだろうし、乱戦になれば万が一も起こり得る。今はとにかく逃げさせてもらうと、後ろにホワイトヘザー部隊の悲鳴を聞きながら拠点に退避するのであった。




