第1話 戦闘 第1次救助活動 襲撃勢力撃退
先程の通信から一拍置いたのち、ケイティから緊急事態を告げる通信が入った。
「敵襲!それもかなり多い!データを送るわ。」
アラートと同時に機体のエネルギーを循環させる。機体のモニターが順に明るくなり機体の頭部につけられているカメラや各種のセンサーからの情報が表示されては確認し消していく。
アイーシャからの通信により敵側のデータが来るが、数が多い。作戦前にケイティが伝えてきたことに思いを巡らせていたが、正直、自分が状況を甘く見ていたことを認める。あくまでゲリラ活動をしてS,Aの攻撃が来る中で最低限のダメージに留める程度の戦力しかないだろうと思っていた。しかし、今、自分の前に広がる戦力を見てその認識を改める。
目視では見えないが、レーダーで判断すると恐らく何もしなければ10分程度でこちらに襲撃があるだろう。
「スカベンジャー2機、M,Aが8機に対してこちらの戦力は最新型とはいえ戦車が24機とは・・・。逃げ切れるだろうが、拮抗するか・・・?」
ファルフリードはコクピットで呟く。ケイティより無線報告が入る。
「依頼主から救助活動を諦めて早々に撤退すると連絡があったわ。ただ、ある程度敵の数を減らさないとトレーラーが十分に逃げられない可能性があるわ。
それにしても反対側でS,Aからの襲撃を受けているにも関わらずこれだけの戦力があるということが腑に落ちないわ。気を付けて。」
救助活動は早々に諦めるという判断を下してもらったのは助かったが、この状況では焼け石に水だ。そもそもここで全力戦闘をしてしまった場合、再度襲撃を受けて救助拠点までの撤退すらままならなくなる可能性がある。とにかく今はこの状況を切り抜けなければ・・・。
「パルサーはどうすればいい?」
アイーシャから緊迫した声の問いかけが無線より届く。
確かに使用すれば相手側のM,Aを無力化で来て、更にスカベンジャーすら多少の足止めができるなら現場としては助かるが、この後にも恐らく戦闘があることを考えれば今使うことは避けた方が良いと思う。
「あくまで切り札だ。使えば通常2時間程度は使えなくなるんだ。戦力差は無いんだ、最初に打つ必要はないだろうが、状況を見て判断してくれ。」
できるだけ離れた場所で戦闘しなければ撤退すらままならなくなるが、どうやらホワイトヘザーのM,Aは引いて守る腹積もりらしい。
―恨みは無いが、万が一の際には使わせてもらうか。雇い主を恨んでくれ。
「ケイティ、本隊は急速回頭して敵味方のいない方向から逃げるように命令してくれ。奴らの本隊を戦車部隊の射線に連れて行く。
スカベンジャー発進する!!」
機体を躍らせ、アステリズモに来てからは滅多にしていない敵陣への突撃を実行する。
「こちらアステリズモのスカベンジャー!ホワイトヘザー!敵部隊をひきつけて送った地点に誘導する!砲撃準備をしておいてくれ!」
敵部隊へ向かうまでにホワイトヘザーに警告は入れておく。彼らの働き次第で無事かどうかが決まる。
敵部隊のM,Aが建物の向こう側から遠目に見えてきた。お互いにまだ補足はできていても障害物が多く当てられる距離ではないのだが、こちらが1機であることに気付いたのかまばらな射撃が飛んできた。
どうやら統制はとれていないらしい。軍隊としての規律は持っていないのだろうか・・・。
先ほどは装備していなかった装備である肩部のロケットランチャーを遠目に打つ。弾速が遅いため命中は期待できないが牽制や目くらましとしてはかなり優秀だ。
ロケットランチャーの射出を確認した敵部隊が散開するが、着弾後に転倒しそうに傾いているM,Aが数機いるのが見える。
―?慣れていないのか?なら見た目以上に楽な戦力か・・・?
M,Aはその構造上転倒に非常に弱い。武装の拡張性や環境への対応、改造のしやすさという点においてM,Aは優秀であるが、重心が高いものが多く転倒が非常に難敵である。起き上がることは可能だが、戦場においてそんな時間を相手が用意してくれるとは限らない。
熟練のM,A乗りとしてはバランサーを使いこなしていかにどんな状況においても転倒せずに素早く動けるかどうかが重要となるのだが・・・。
追い打ちせずに油断は禁物と建物の陰に隠れる判断をしたのは正解だったらしく、建物越しに狙撃ライフルの猛威が通り抜けてきた。
―やはり楽ってことはないな・・・。恐らく付け焼刃のM,Aが数機と後は腕の立つスカベンジャーの部隊なのだろう。
「アステリズモのスカベンジャー!お前を倒して名をあげさせてもらう!!」
外部スピーカーで敵部隊のスカベンジャーが雄たけびをあげている。
―どういうことだ?・・・俺が目的なのか?
名指しでこちらに向かってくるということに訳が分からないが、黙って討たれる趣味もないがわざわざ外部スピーカーで場所を教えてくれているのだったら狙わせてもらう。
建物の陰に隠れながら近づき、建物越しに散弾銃を撃ち放つが、相手は事前に回避機動に入っていた。
「甘いな!当らんよ!俺はスカベンジャー乗りの『ブレイドアーツ』としてお前を討つ!スカベンジャー乗りの随一アステリズモを撃てば名は上がる!やられてもらおう!」
―最近、こういうやつは流行りなのか?名乗ったり目的言ったり、動いている最中に舌噛んでも知らんぞ?というか二度も言わないでいいだろうが。
名乗りにこたえる道理など無いとばかりに散弾銃をしまい今度はアサルトライフルで弾幕を張りつつ機体を避難させる。『ブレイドアーツ』、名の通りであれば近接武器を使うのだろう、とにかく距離をとろうとする。
先ほどのは訂正だ。恐らく付け焼刃のM,Aが数機と後はバカと腕の立つスカベンジャーの部隊だ。
バカもとい『ブレイドアーツ』は砂漠だというのに青いカラーリングで装甲が厚めにとっており、頭部はまるで人のように二つのカメラを持った機体であった。機体には遠距離専用の兵装は見当たらず、腰元に身の丈に近い反りのある剣を所持している。
『ブレイドアーツ』は反りのある剣を抜くとまるでチェーンソーのように刃の部分が回転を始めた。
―この兵装、やっぱりこいつはバカだ。
少し呆然としてしまったが、集中し直して操縦する。戦車部隊が万全に準備できるようにできるだけ時間をかけて、さらにまとめて砲撃地帯に誘導できるように回避する。
迂回して回避しようとわざとM,Aに追い込まれるような動きをしてみては、『ブレイドアーツ』をいなしてまた距離を取る。
「さすがに上手いな!だが、たった1機で何ができる!皆、そちらに行ったぞ!追い込め!」
刀身の長いチェーンソーを振り回し、踏み込んでくるがそもそも大型兵器で白兵戦を望もうとすることがおかしい。暴徒鎮圧や手加減のために使うならわかるが望んで白兵戦をすることは頭がおかしいと言わざるをえない。
炸裂ナイフを足元に飛ばしてバランスを崩させて、踏込を妨害しつつ射撃を重ねる。腕はいいようで、射撃に対して装甲の厚さや重さをものともせずに機体を横にスライドさせて回避する。
―馬鹿だが、腕はいいな!?
見た目上は互角の状態であるが、うまく誘導を重ねていく。事前の情報にあったもう1機のスカベンジャーが姿を見せないのが気になる。レーダーに捕捉されないということはエンジンを駆動させていないということでもあるため、警戒は続けるが今はとにかく無視して囮に徹する。恐らく、『ブレイドアーツ』に遠距離線の装備が見えないので最初の狙撃は残りのもう1機が行ったはずなのだが、狙撃のタイミングを待っている場合に備えて今はとにかく乱戦に持ち込んで動き続けていくしかない。
建物を足場にして機体を後ろにジャンプさせて小高い丘を飛び越える。正面から『ブレイドアーツ』、左側からM,Aの部隊が追いすがり丘を登ってくるのを見てファルフリードは声を上げた。
「撃て!」
ホワイトヘザーの部隊の砲撃が丘の上に向かって集中する。榴弾の雨により地面から土柱が上がる。『ブレイドアーツ』の機体が足を取られて傾き、その他のM,Aも命中を受けたもの、倒れてしまったものとまさに阿鼻叫喚の事態となっている。
「なんだと!?」
どうやら相手はこちらがホワイトヘザーとして来ているのを忘れていたらしく、後方から射撃が来たことが信じられないとばかりに狼狽している。
―悪いな、名を上げるのはあの世でやってくれ。
「・・・うそだ・・・。」
『ブレイドアーツ』のパイロットが呆然と呟いている。踏ん張る地面の無い中では陸を走る機体では自慢の回避機動も取れない。右手の散弾銃で『ブレイドアーツ』コクピットを的確に打ち抜き、続いて他のM,Aも破壊していくのであった。




