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異界転生(修正版)  作者: 七変化
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第38話

「そう悲観するな、ユージは私が知る限り最強の冒険者だ!」


こういう時のフォローって、何でか凄く凹むよね?


「あ、ありがとな、ニア。」


二人組の野次に若干やさぐれながら食事を続け、次の試合では大将と戦いたいってのと、その理由をニアに説明したら「最初の四人は任せろ」と力強く応えてくれた。


それより、今の所は寺院絡みの相手と対戦にならずにメイアも安心してるけど、四回戦目はどうなるか微妙なんだよなぁ。


ーーまぁ、後二回で決勝戦だからなるようになるか。ってか、明日の個人戦の方どうしよう?


頭をぐるぐると駆け巡っていた疑問から一つが飛び出し、何気に確認を取ってみると、


「なぁ、明日の個人戦て、やっぱみんなで来んの?」


「はい!明日は全員で声援に行くつもりですよ。」


「俺の薬も必要になるかも?だしね。」


嬉しそうに答えるメイアに和み、キースの申し出に素直に感謝した。


前回は薬のせいで苦戦したし……ニアとリリアも「当然じゃ」とか「当たり前」と、口では何も言わずに視線で答えてきた。


うぅ~、みんなありがとう。


改めて仲間の気持ちに胸熱になりながら会場に戻ってくると、通路の途中で俺に気付いたサシャが慌てて傍に駆け付けて来た。


「ちょっと、アンタ達どこ行ってたのよ。」


「ん、皆と昼飯に近くの食堂に。」


「ったく、どんだけ呑気なのよ!いい事、これは忠告だから良く聞きなさい。

次の試合は危険だと思ったら何も考えずスグに降参しなさい。」


「……何かあったのか?」


チラリとサシャがメイアを見ると俺だけ通路の端に引っ張っていき、皆と距離が少し離れたのを確認してから小声で話し出してきた。


「さっき敗退したチームが……全員試合後に死亡(、、、、、、)したのよ。」


「……え?」


一瞬、意味が理解出来ず死因を聞き返したが、原因は今も調査中で全員死亡は大会初だと告げられた。


ーーしかも……相手のチームはたった1人で5人と対戦したと聞き、驚いてつい大声を出しかけた口をサシャが慌てて両手で塞いできた。


「ちょっとメイアも居るんだから気をつけなさいよ。」


「あ、ああ……済まん。」


「でね、彼女も冒険者をしてるんだからそう言う覚悟はあるとは思うんだけど……正直、あんな姿になったあんた達を見たく無いし、何よりもメイアを死なせたく無いの……だからお願い!無理はさせないでよ、ユージ。」


サシャの真剣な表情に黙って頷き、4人には先に会場へと行ってもらい、俺だけがその場に残って全滅したチームと対戦した相手について詳しい情報を聞いた。



そして迎えた三戦目。サシャから手短かに話しを聞いて来た俺は、何とも言えない感情のまま控えの椅子に腰を降ろしていた。


ーー……くそっ、どうしたらいいんだ?


さっきサシャから聞いたのは、俺が予定していた三戦目で当たると予想していた相手チームの死亡原因であろう仮説だった。


……あの夜、大会に出発する前夜にリズから殺したい程憎いが、俺に人殺しはしてほしくないからと元の主人からの奴隷契約を解除だけを頼まれた。


サシャに確認したら死亡でも解除になるらしいが……。


俺自身も殺さない事を心掛けて戦ってきたつもりだったが、次の対戦相手は俺に代わりリズの元主人を殺し勝ち上がってきた相手だ。


「ヤバくなったらスグに降参してくれ」


と一応警告はしておいたが、あの勝ち気なニアが果たしてそんな相手に素直に退いてくれるのだろうか?


そして、そんな殺人鬼を相手に戦って俺は殺さずに勝つなんて事が出来るんだろうか?


……そんな暗々たる考えなど場違いとばかりに、昼過ぎの三回戦は盛り上がっていた。


目の前で人が死んだ筈なのに観客席から聞こえる歓声は一層大きく、誰もが興奮してるのがハッキリとわかる。


ーーちっ、安全な場所から他人の死を見るのはそんなに興奮するのかよっ。


娯楽の少ない中世では公開処刑も娯楽の一部として民衆に受け入れられていたって授業で習った事があるけど、実際に体験すると気持ち悪過ぎて反吐が出そうになる。


そんな中、相手チームを見つめ思考を集中させてたせいか、審判の声は聞こえなかったがニアが中央に向かって出ていく。


「約束だぞ絶対、無理はしないでくれ。」


「あぁ、わかった。」


もう一度念押しする俺に、ニアはいつもの笑顔で答えながら歩いていく。


「少し心配し過ぎだぞ。例えどんな相手であろうと、私がそんなヤワな女では無い事をユージは一番知っているだろ?」


「ああ、だが……「ならば、任せておけ!」」


問題など無いとばかりに言い包められてしまい、不承不承に頷くと大剣を両肩に飄々と歩くニアの後ろ姿を見送る。



ーーさて、最初から全力で行くとするか。


会場のほぼ中央で相手と対峙すると、馴染んだ大剣をやや斜めに構え半身が剣に隠れる形で開始の合図を待つ間、相手の黒いローブ姿を見てると、恋敵リリアの姿がダブり自然と怒りが込み上げてくる。


ーーついでに貴様に恨みは無いが、日頃の憂さを……晴らさせてもらおうか!


「それでは~、試合~開始っ!」


無意識に上唇を舐め警戒して後手に回るよりは先手必勝と、構えを崩さず相手に突進してから足元への突きをフェイントに下から軌道を変えて斬り上げる。


ーー手応えは……無し?


初撃を風に舞う木の葉の様にふわりと躱され、相手の身軽さに内心舌を巻きながら続けて大剣を振り下ろす。


ーーこれで、どうだっ?


そのまま切っ先を八の字型に緩急をつけつつ、斬りつけながら攻撃を単調化させないようにと、時折突きも折混ぜてみる。


ーー親父様仕込みの斬撃乱舞、受けてみよ!


初撃こそ躱されはしたが続く斬撃は確実な手応えを伝え、相手を斬り付けていく。


ユージの気持ちを尊重し致命傷を与えぬ様に最小限は手加減した斬撃だったが、切れぬだけで打撃は変わらぬダメージをあたえる筈だと確信しながら大剣を振り続けたが。


一向に倒れない相手を前にうなじの毛がピリピリと逆立ち、足が竦んだように重くなっていく。


ーーくっ、何なんだコイツは?まるで人と戦っている気がしない。


手応えも充分にあり本来であればとうに倒れておかしく無い相手から伝わってくる、えも言われぬ感覚に野性の勘が頭の中で警鐘を鳴り続けている。


ーー……どうした…何が?


ニアが一方的に攻撃していた筈なのに……

相手に反撃の機会すら与えていないと言うのに……。


何故か焦った様な表情で必死に大剣を振り続けるニアに審判も何か不審に感じたのか、一度試合が区切られ役員を向かわせ駆け寄った一人に連れられてこっちに戻ってきたニアは小さく震え、大剣を持つ手に力が入りすぎてるのか白くなっていた。


ーーまさか、あのニアが、怯えてるのか?


「ちょっといいですか?」


そう声を掛けて来たのは別の役員で「先程、相手側から提案があり、次の一人で勝負を終わらせたいので一人対全員で構わないので戦わないか」と相手が提案してきたらしく、返事を求めてきた。


ーーサシャの読み通りの展開だな。


2戦目の相手はこれにのって対戦した後に全滅した。其れは逆に言えば今から戦う相手が最も危険だと言ってるのと同語だ。だからこそ俺は申し出を拒否して、「こっちも俺で終わりにするので1対1でいい!」と、言いかけた所をリリアも出ると言い出した。


「あやつはわらわにくれてたもぉれ。」


「どうするつもりだ?」


「何も……ちと、あやつの武器が気になってのぅ。」


「……武器?」


言われて相手を見てみると、棺に見える木箱を引きずって中央に歩いていく筋肉質な男が見えた。


「……いや、駄目だ俺が行く!」


「強情やねぇ。せやけど今回は引きいしまへんぇ。」


「ぐっ……。」


出来れば危険は最小限に止めたいとの思いに真っ向からリリアが対立した形になったが、その瞳を見て溜息を一つ「一人対二人なら受ける」と伝え、ニアはメイアに任せ休んでいてもらう事にした。


「……すまない。だが充分に気をつけてくれ。」


初めて見せる不安そうなニアの姿に、「大丈夫!すぐ終わらせてくる」と優しく声を掛けながら肩をたたき、リリアと歩き出す。


ーー何があったのかは判らないが、ニアのあんな反応は明らかに異常だ……だとしたら、俺はともかくリリアも危険なんじゃ?


そんな心配もどこ吹く風と横を見ると、真っ直ぐに前を見つめリリアは一足先に中央へと歩いていく。


そのまま三人が中央でが正三角形の形に対峙すると、試合再開の合図が上がり、共に手にしたトンファーを構える俺と素手のリリアが相手を睨みつけた。


「くふふっ、今回の生贄は二人か。」


「へっ、生贄なんかになるつもりはね~よ。」


「くふふっ、ドンナに足掻こうが、俺の武器は史上最強なのさっ。」


「へぇ〜。ほしたら、自慢の武器とやらを見せてはもらぇへんやろか?」


「くふふっ、いいぜ。」


ニタリと笑顔を張り付けたまま、男は何を考えてるのか自分の手の平を切り付け、流れる血を木箱に押し当てながらボソボソと呟き出した。



ガタッ

ガタガタッ……ガタッ


次の瞬間、男の呟きに反応したのか血に反応したのか。棺 木箱がひとりでに暴れだし、それがおさまると音も無く滑るように蓋が開いた。


「なっ……!」


言葉を失った目の前に黒い拘束着を身に纏い、ミイラの様に全身を覆った包帯の隙間から淡い水色の髪を覗かせた、女性と思しき人型が物理法則を無視した動きで立ち上がってきた。


「俺の武器。『ノエル』を見て生き残った奴らはいね~ぜ。くふふっ。」


ーー武器?これが……この人間が武器だと?


「て、てめぇ〜。どんな力があるのか知んね~が、人を簡単に物やら武器やらにするんじゃね~~!!」


俺はその言葉に完全にブチ切れて、男に突っ込むと力任せに殴りつける。


グシャっと鈍い骨と肉を砕くトンファー越しの感触に、理性を少し取り戻し相手を見て驚愕する。


一瞬で詰めた筈の男との間合いに、いつの間にかノエルが入り込み、俺の攻撃をその身で受けて止めていた。


「くふふっ、ムダムダ~!俺に攻撃は通用しね~ぜ。コイツは盾でもあるんだからな。」


驚いてバックステップで距離をとったつもりが、糸で繋がってるみたいにノエルが真正面について来た。


ーーヤバいっ!


本能に従って地面に両手をつけると、僅かな隙間に創造魔法で岩の壁をつくる。



それを茫洋と目にしながらリリアの脳裏にはある出来事(かこ)が甦ってきた。


ーー血の契約……結局果たす事は出来なんだか。


棺から出て来た彼女(ノエル)を目にした途端、遥か昔の記憶が鮮明に浮かび上がり、あの時に交わした契約をも思い出した。


ーーあの様な姿に……一体誰が、誰がお主の子にこんな仕打ちを……。


その痛々しい姿を目にし記憶が甦った途端、絵も云われぬどす黒い感情が胸を中心に湧き上がり、それが糊の様にドロリと全身に広がってゆく感覚に目を瞑る。


ーーくふふっ、そう言えば何時ぶりであろう……この感情(さつい)が全身を染め上げてゆくのは。


懐かしくそれでいて官能的な毒の様に指先まで広がる殺意は身体を熱く高揚させ、自我を手放せと囁いてくる。


「リ、リリア~呆けてないで下がれっ!コイツはヤバ過ぎる。だから、俺が何とかするっ!」


甘い誘いに意識を委ねかけた瞬間、ユージの声が脳内に響き渡り我に還った。


ーーそうじゃ……そうじゃったな。わらわもユージにおぅて変われたんぇ。お主と違う形でのぅ。


瞬時に高揚感はそのままに頭だけは明瞭に冴え渡り、なおもユージを追いかけようとする彼女に、袖から鎖を数条飛ばし強引にその場へ固定する。


「ユージ、長い事は持ちませんさかぃ男は後回しに、先に棺を破壊しておくれやすぅ。」


「お、おおっ~!」


ノエルの攻撃に岩壁が粉砕された瞬間、横に回転して間合いを取りながらリリアに逃げる様に声をかけたが、一瞬こっちを見て笑った彼女は袖から鎖をとばし、ノエルを固定しながら叫んだ助言に従って高速移動で駆け出す。


ーー棺を破壊か。了解っ!


「うおおぉぉっ~!」


体勢を立て直し、棺目指して疾走する背後で鎖の引きちぎられる金属音が聞こえて来るが無視。


そのまま突進し思いっきりの連撃を棺が木っ端微塵になるまで叩き込み、完全に破壊してから横で驚愕に固まった男を体当たりで跳ね飛ばす。


それを更に高速移動で追いかけ全身に隙間無く、雄叫びをあげながら連撃を叩き込む。


ーーてめぇだけは赦さねぇ~~っ。


吹っ飛ぶ男を打撃で更に吹き飛ばしながら、壁に全身がめり込みそれ以上は後退出来なくなるまで連撃を続け、リリアに名前を呼ばれ我に返った。


ハァハァハァ……


肩で息をしながら土煙が収まり、壁に埋まり白目を剥いて失神している男を睨みつけながら現状を確認した審判からの勝利の声を聞き三戦目が終わった。

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