第27話
う~いたたっ、やっぱ昨夜は飲み過ぎたなー。
二日酔いでズキズキと鈍痛が響く頭を押さえつつ一階に降りていくと、白いフリル付きのエプロンを着て上半身虎な人が野太い声で鼻歌混じりに尻尾を振り振り料理してた。
………誰?
「あら、ユージちゃん起きたの?お・は・よ♪」
野太い声の女言葉って…怖っ!
「あ、この姿だとわかんないか?」
そう言って体が小刻みに震えるとドンドンと体毛が体に収縮されるように消え、代わりに女性独特の柔肌が現れてきた。
は、裸エプロンだとっ!
「ヤ、ヤダさん?」
焼肉を盛った皿を手に振り返る仕草に、さっきまでは黄色と黒の獣毛まみれだった横乳がエプロンに納まりきってないのを見て視線が釘付けになる。
「ふふっ、ちょっと目の毒だったかな?」
いやいや、眼福です。思わず拝んじゃいそうですよっ。
前屈みに料理を置くと胸の部分が膨張した様に重力にそって膨らむ更に巨乳感が強調される。
い、いかんっ!このままだとジョニーが覚醒してしまう。
だが、もうちょっと見てたいし……くそっ、どうすればいいんだっ。
朝っぱらからそんなくだらない事で悩みつつも上下に横にとフリーダムに揺れる巨乳から目が離せないでいると、ヤダさんがそれに気付いたのかこっちを見てクスクス笑う。
うーん、ニアとはまた違った笑顔が可愛いな~。
そう思った瞬間、背中に物凄い殺気を感じてギギギ…と音がしそうな振り返り方で視線を向けるとニアが壁にもたれかかり無言でこっちを睨みつけていた。
「おはよう、ユージ♪」
「…お、おはようございます。ニア…さ…ん。」
コ、コワイヨ~
笑顔なのに殺気の渦がハッキリ見えそうダヨ~
表情が固まっテルヨ~~
ハッキリ見ても良いならオッパイの方がイイヨ~。
自業自得かもしれないが、ヤダさんの些細な?悪戯のせいで何と無く居心地が悪いままニアさんの一挙一動にビクビクした朝食を済ます。
そう言えば忘れてたけどバインドを倒した証拠ってギルドに何を出さなきゃいけないんだ?
ニアに相談してみようと昨日、気絶した後の出来事を簡単に説明すると何故か人形の様に固まりながら同じ言葉を復唱してきた。
「はぁー、てっきりバインドは撃退したのだと思っていたのだが、まさか倒したとは……それも一人で。」
ニアは片手で顔を覆いながら深く溜息を吐いて呆れたように呟いた。
んで、村に戻って来てからあった大宴会の事なんかも話し必要な部位って何処か知んね?って聞いてみると、暫し目を閉じ何かを考えるような仕草をした後、急に飛び出し大きな袋を担いでまたすぐに戻って来た。
「多分コレをギルドに提出すれば問題無い筈だ!勿論私も口添えはするから大丈夫だ!」
「あ、ありがとう。」
「さ、これで朝食も用件も済んだ事だしさっさとカハタスに帰るぞ。此処はユージにとって良い環境とは言えんようだしなっ!」
何故か語尾を強めながらヤダさんと起きて来たばかりのメアさんを睨む。
ニ、ニアさん…お姉さん達を見る目が冷たくないですか?
「あ~ん、ニアちゃんたら~強い男に惹かれるのは自然の摂理じゃな~い。」
「そうそう。ニアの後でも良いから、ちょっと子種分けて欲し~な~。」
ちょっ、朝から子種って…。
お姉さん達も冗談がキツいすっよ、ハハハッ……。
「ダメだ!姉様達にはやらん!」
「わ、私ですらまだなのに……。」
毅然と言い放った後、何かボソボソと小さく呟いて腕を引っ張られる様に部屋を出る。
「あ、ご飯ご馳走様でした。お姉さん達の料理美味しかったですよ~~~。」
そのまま外へ出てズンズン進むニアに引っ張られたまま見送りに出てくれたお姉さん達にお礼を言い、馬を置いてあった場所まで行くと一瞬だけジト目で睨まれ一人で森の中へと駆け出して行ってしまった。
ま、待ってよー。置いてかないでー。
まぁ、行きと違って帰りは些細な問題が村を出る時にあっただけで概ねのんびりと進んだって事もあり、街へ帰る途中に一晩野宿をしたんだが、翌朝えらくニアさんの機嫌が良かった。
たった一晩二人で野宿しただけで大して会話もした記憶が無いのだが、女の人はよー判らん。
んで、二日目の夕方に街へ着いたんだけど、時間が時間なだけにまた一人でご飯かと思うと憂鬱になる。
んー、今夜は自宅にかえるのも何だし…久々に『ロンドの店』にでも行くか。
ニアと一緒に夕飯をとも一瞬考えたが、二日も続けて二人でいて嫌がられたらどうしようとか不機嫌になる地雷が判らないんで辞めといた。
とは言え明日は報告するのにギルドへ一緒に来てもらいたいので、時間を昼に合わせそのまま別れる。
今日は巨乳ちゃん空いてるかな~?
ウキウキ気分で店に着くなり早速指名してみたが、やっぱり人気があるから今夜も空いて無かったよ、トホホ。
んで代わりに獣人ちゃんはと聞いてみると「今日は公休日です」と言われ、一気に気が削がれた。
こ、こんな日もあるよね。
意気消沈したまま日もすっかり落ちた街中を自宅までトボトボと歩いてると、途中で偶然獣人ちゃんと遭遇!
「こんばん~!」
「あ、ユージさん偶然♪」
「さっき店の方に行ったんだけど、今日は休みだったんだってね。」
「うん♪あ、そだっ!よかったら飲みに行かない?」
「え?でも何か用事あったんじゃ無いの?」
「別に、買い物して帰るだけだったし。」
右手に持った紙袋からパンを見せて笑う。
そのまま雑談しながら獣人ちゃんがたまに行くらしい飲み屋に案内され、出張の話や昨日までの話、獣人ちゃんの愚痴などで話は盛り上がったが、夜だったのでスグに店終いの時間になってしまった。
「今日は楽しかったよ」と、精算を済ませ帰ろうとするとさっきまでは笑顔だった獣人ちゃんが俯いたまま無言でコートの端をキュッと掴む。
「ねぇ…、良かったら今夜は私の部屋でまだ飲まない?」
マジデスカ~?
三次な女性の部屋なんて初めてデスヨ~。
メイド隊も女性だか気分的には保護者なので獣人ちゃんの部屋とは気持ち的に雲泥の差だ。
そのまま鼻息フンガー状態て獣人ちゃんに手を引かれ連れて行かれた先にあったのは、二階建てのアパートみたいな造りの建物だった。
「ちょっと散らかってて恥ずかしいから待ってね。」
「うぃー!」
なんだこれ?俺がおんにゃの子の部屋で待たされる日が来るなんて……これが、リア充の力かっ!
ちょっと不慣れな展開にテンションがおかしくなり、気持ちを落ち着かせようと深呼吸。
招き入れられた室内は壁の色に合わせたのか全体的に白を基調に綺麗に片付けられて、ベッドの上には数個のクッションが置かれ、そこに獣人ちゃんが腰掛ける。
「へへっ、男の人を部屋に入れるのは、実は初めてなんだよね♪」
恥ずかしそうにクッションを一つ取ると顔を半分隠して上目遣いで見てくる。
ぬぅ、これは萌える~。
そのまま俺は床に座りテーブルを挟む形で二人でワインを飲みながら雑談を再開。
いつしか獣人ちゃんはベッドから降りて俺の横にもたれかかりながら酌をしてくれ、時々上目遣いで誘うようにみつめてくる。
此処までされて我慢出来る男が居るだろうか?
いや、居ない!
腕を挟み込むように押し付けられた巨乳とのコンボですっと顎下に手を当て雛鳥の様についばむキスから、抱き合いお互いの口の中を舌を絡ませながら激しいキスに……。
獣人ちゃんの胸を下から持ち上げる様に揉みこね回し、ベットに寝かせるとお酒と興奮で上気した獣人ちゃんが、もどかしげに服を脱がしにかかる。
ーーで、小鳥の囀りを聞きながら目を覚ますと、獣人ちゃんは俺の腕枕に抱き着きながら気持ち良さそうな寝息をたてていた。
いや〜、一晩中なんて初めての経験だったけど、獣人ちゃんは獣人なだけに肉食系なんだな~。
あんなに激しいのはゲームの中の表現だけかと思ってたけど…。
などと昨夜の情事を思い出し、またムラムラしてきたが頭を振って理性を取り戻し寝てる獣人ちゃんにそっとシーツをかけ直すと部屋を出た。
その後、獣人ちゃんの家から大通りに歩いていく途中で朝市の露店に立ち寄り遅めの朝食を済ませギルドに向かう。
ギルドの中に入ると、ニアは先に来てたようで壁の依頼を見ていた。
「約束してたの昼だよね?」
「あぁ。私は日課の依頼チェックをしに来てただけで、約束はそうだった筈だが。」
まぁ、それでもこうして会えたのなら用事を済ませてしまおうって事になり、受付に行って追い払うだけが討伐してしまった事と、証拠?の入った大袋を提出する。
で、何時ものおっさんが袋から中身を出すと青緑の水晶みたいなものが出て来た。
何コレ?
中身見てないから俺も知らんかったけど、爪とか牙じゃ無かったの?
受付のおっちゃんはそれの数を数えて袋に戻すと大切そうに両手で抱え奥に持って行った。
「なぁ、ニアあれって何?」
「アレはバインドが体内に貯めてた天然魔晶だ。」
なるほど、魔獣って魔晶を持ってるのか。
今度から魔晶狙いで狩りに行くのもアリだな。
ヒソヒソ話で納得すると、さっきのおっちゃんが今度は小切手を持って戻って来た。
此処で嬉しい誤算が一つ。
天然魔晶ってのは元々高価な物だったらしく、依頼の報酬の数十倍の金額になった。
んでそれを、同行したニアにもキッチリ二分してもらう。
ニアは小切手に書かれた金額を見て見たこと無いような顔で驚いてたが、「気にすんなペアを組めた御礼だ」と説明すると、今度は不思議そうな顔で俺を見てきた。
これで後はロワーズの依頼だけだった筈だし、今日はのんびりすっかな?
ギルドを出てからニアに出張に行ってた時の「お土産」とキース達の分もまとめて渡して別れると、ついでにザガンの店にも土産を渡しに寄ってみたが、留守だったので日を改める事にして帰路につく。
ふ~~、これでやーっとバタバタが終わった~。
ちょい放置気味になっちまってたが、メイド隊は元気にしてるかな?




