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異界転生(修正版)  作者: 七変化
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第21話

翌朝ーー


朝食を食べながら今日の予定を話し合ってみると、全員バラバラに行動する事が判った。


ガルタスは嫁さん(←こんな豪快親父に居たのがビックリ)に土産を買いに市場をまわるらしく、グスカは昼飯までのんびりと二度寝。


ヤランとハイロンは、馬の蹄鉄の交換と馬車のメンテナンスに行くらしい。


そんな訳で食後は俺だけ予定が無いと判るとガルタスが半ば強引に誘ってきたので、寺院に行く迄ならと了承。


その後、二人して市場の商店に並ぶ商品を物色しながら彷徨いていると不意にガルタスが話しかけてきた。


「おい、ユージも何か買わねーか?」


「一応、お菓子ぐらいは買って帰るつもりだけど?」


「がははっ!菓子とはまたお上品な物を選びやがるなぁ。女にやるなら装飾品が一番だぞ!俺の嫁さんなんか遠出するたびにねだってきやがる。」


そう言って背中をバンバンと叩き大笑いすると、すぐ側にあった装飾品屋へと連れて行かれた。


ーーアクセサリーには全然興味が無いんだけどなぁ。


半ば強引に連れてこられた店内で適当に置いてある商品を見ながらウロウロしていると、ガルタスが突然店の中央に並べてあった商品を前に、顎を擦りながら唸る様に吟味しだした。


「どうした?何かいい品が見付かったのか?」


「あぁ、有るにはあったんだがな…。」


珍しく歯切れの悪い言葉を呟きながらラピスラズリの様な深い蒼の腕輪と、ルビーの様に赤いが薄く向こう側が透けて見える腕輪を持ち上げる。


「なぁ、俺の嫁さんには青と赤、どっちが似合うと思う?」


「…………。」


ーー知らんがな~!!!

ーー大体、見た事も今日まで居るって事も聞いて無いがな~!!!!


あまりにもどうでもいい質問に、心の中で思いっきり関西弁でツッコむ。


口に出して言わなかったのは彼に対してのせめてもの優しさからだったが、俺が呆けながらガルタスを見ていると自分から質問きたのにその事自体をスルーして、また一人唸りだした。


そんなガルタスをほっといて寺院の方に行こうとすると、三軒ほど隣にあった甘い香りの漂う菓子屋から『この街限定の焼き菓子ですよ〜!』と謳い文句が聞こえ、数十個を即買いした。


内訳はキース達とザガン。メイド隊とロイドの店の巨乳ちゃんとこないだの獣人ちゃんに一箱づつ。気苦労の絶えない髭男爵にも一箱と、後は少し遅くはなってしまったがご近所への引越し挨拶用だ。

ただ、ご近所用は貴族街って事もありそれなりに高級な物を選んだつもりだったが、それでも2シリングで足りた。


やっぱ食べ物関係は安いな~。


適当に選んだせいで台の上いっぱいに積まれた商品を一応持ってきたバッグに入れるふりをしながら木箱に転送。


どんどん中身を入れた筈のバッグが一向に膨らまない事に疑問を感じたのか、店員がジロジロと見てくるが無視!


店を出ると丁度ガルタスも買い物を済ませた後に俺を探していたらしく、出会い頭に宿に酒を飲みに帰るとだけ言われ去って行った。


ーーうーん、意外と律儀なとこあるよなーガルタスって。


だから嫁の尻に敷かれてるのかなと若干失礼な事を考えつつ寺院へ向かうと、途中でタナシ寺院の紋章が刺繍された白いローブを纏った集団に出くわし、何とは無しに気になったので予定を変更して後をつけてみた。


が、集団は真っ直ぐに寺院へと向かい裏手に回ると寺院騎士が警護していた裏口からそのまま中へ入っただけだった。


ーーなんで裏口から?


モヤモヤとした物が胸の辺りにまとわり付くが、これ以上此処に居ても仕方ないと判断して一旦表にまわり、受付でサシャを呼んでもらうと左奥の小部屋で待つようにと案内された。


連れて行かれた部屋は普段から来賓用として使われているらしく、壁の一面を埋め尽くすような巨大な宗教画と高価そうな壷が幾つも置かれていたが、どのくらい待たされるのかも判らず、檻の中の熊みたいに室内をウロウロと歩き回り時間を潰していると、さほど待たずにサシャが入って来た。


「何の用?私は忙しいし、呼んだ覚えは無いけど?」


「え?いや、少し聞きたい事があってな。」


「そう。でも今の私には何も答えられないし、用は無いから帰って!」


ーー………え?なんでそんなに素っ気無いの?

ーーまさか、ツンデレでも患ってんの?いやでも今は二人きりだから、デレる所だし…。


色々と今迄と違うツンケンとした言動に困惑してると、何かメモの様な物をわざとらしく足元に落としサッサと部屋を出て行ってしまった。


ーー何だったんだ?

ーーってか、これ………なんて書いてんだよ?


足元の紙を拾って拡げてはみたものの読めないので、ポケットに詰め込んで部屋を出る。


そのまま宿に戻ろうかとも考えたが、ヤラン達が行くと言っていた馬車工房ってのが気になり行ってみる事にした。


ーーんー、昼間はあの黒騎士があんまりうろついてないなー。代わりに白いローブ姿の方はよく目につくけど。


場所が判らないので辺りをキョロキョロしながら通りを歩き、道すがらの人に工房の場所を聞きながら先を進むと店先に置かれたベンチに腰掛けてる二人を見つけた。


「よー!どしたんだ?修理の時間待ちか?」


「惜しいっ、半分正解で半分はずれッス。」


「と、言うと?」


「実はここの工房、帝国からの新型馬車と魔動式馬車が流通し過ぎてて、俺達の馬車に合う部品が無いらしいんスよ〜。」


落胆するような声でヤランに説明され、魔動式馬車って何ぞ?と店内を覗くいてみると、銀色の骨組みに樹脂?を巻いた自転車の車輪にそっくりな輪が、大小様々な種類を壁に並べられていた。


「いっそ、変えたら?」


「あー其れは無理ッスね。新しい四輪を買い換えるのに25シリングも掛かるんスよ、25シリングっ!大体、あの馬車を買った時でも18シリングしか掛からなかったんスよ?車輪にそんな大金出せ訳無いッスよ〜。」


ヤランの愚痴にハイロンも無言で頷く。


「えっ?あの馬車自前だったの?」


「勿論ッスよ。」


てっきり髭男爵が手配した馬車だと思っていたので軽く驚きながらもう一度店内を覗き、木製と金属製以外にどう違うんだろうと小首を傾げる。


結局、修理…と言ってもただの点検&消耗品の交換程度だったが…を諦め、馬車はそのまま宿まで運んでもらうように頼み、馬の方へと三人で行くことになった。


すると、ちょうど新しい蹄鉄を着け終わった所だったのか白馬をつれた男が店の外で手綱を引きながら歩かせてながら調整している所に出くわし、既に調整済みだった自分達の馬を受け取り宿に戻った。


「がははっ、遅かったじゃね~か?」


「お前等があんまりおせぇから、先にやってたぜー。」


馬は宿の従業員に任せ食堂に行ってみるとテーブルの上に数本の酒瓶を並べ、全身真っ赤にしたガルタスとグスカの姿に溜息が漏れる。


「ちょっとちょっと〜俺の分残って無いなんて事、無いッスよね〜?」


だが呆れてたのは俺だけだったらしく、ヤランは席に着くなりグスカからジョッキを受け取り酒盛りが拡大していった。


そのノリにハイロンと顔を合わせて苦笑した後、酒を飲まないハイロンならメモを読んでくれるもと思い食堂の外へ連れ出した。


「ハイロン悪い、ちょっとこれ…読んでくれるか?」


そう言ってポケットから取り出したメモを手渡す。


「えー何々…『注意!黒騎士…盗む……移……』かな?悪いが途中の文字が滲んでて、読めない所が多いな。」


ハイロンは手渡されたメモの内容を呟きながら謝ってきたが、その顔は怪訝そうにしている。


そこで俺はサシャに会いに行った時の話をしながら「黒騎士」について何か知っているか聞いてみた。


「黒騎士か…。帝都に確かそう呼ばれていた極秘部隊が居た筈だが。」


「居た筈って、ハイロンは見た事あるのか?」


「いや、噂だけで実物を見た事は無い。多分グスカ達も一緒だ。」


「んじゃ、昨日の夜に見た連中はべつかな?」


見た事が無いという一言に、昨夜見掛けた連中の姿を思い出しながら容姿を軽く口にすると、ハイロンがもう少し詳しい特徴を説明しろと催促してきた。


「いや、特徴って言われてもなぁ…。」


然程じっくり見ていた訳では無いので、記憶の糸を手繰り寄せながら思い出しつつ言葉を紡ぐ。


「……なるほど。だが俺達が噂に聞いた黒騎士とは少々違うようだが、確かに何か怪しいな。」


ハイロンも思うところがあったのか、眉間に縦皺を寄せながらそれだけ呟くと、この話はガルタス達には内緒にするよう言ってきた。


「なんで内緒にしとくんだ?」


「しいて言えば勘だか、どうもその連中に関わるのは良くない気がするから……としか、今は言えんな。それより今は別に注意しなければならない事も出来たしな。」


「注意?サシャからのメモか?」


「あぁ、肝心な所は読めなかったがユージの話を統合すると助祭士殿は監視されメモを残したと考えるのが自然だ。となると、明日の出発の際に何かが起きるかもしれん。ただ、これが憶測の域を超えない分、ガルタス達が不自然に警戒すれば問題が複雑化する可能性もあるしな。」


それだけ言うと何食わぬ顔で食堂に戻って行くハイロンを他所に、一人その場に取り残された俺はこれ迄の事を簡単に頭の中でまとめてみた。


今年だけ前倒しにしてまで急がせた理由。

今まで前例の無いと言っていた護衛の出迎え。

寺院でのサシャのあの態度。


ーーこりゃ陰謀の匂いって奴がプンプンするぜっ。


自分が絡んでいるにしても説明の着かない出来事に一人ニヒルな笑みを浮かべ、明日に備えて今夜は早めに寝る事にした。



早朝はハイロンの予見した通りになった。


昇格の手続きが済んだサシャを寺院騎士達が宿まで連れて来た後、帰りも最初の宿場町まで護衛をつけるといい出したのだ。


ーー出迎えだけじゃ無くて見送りまでするって事は、やっぱ何かありそうだな?


ガルタスは何か言いたそうに一瞬口を開きかけたがすぐに閉じ、巡礼馬車にはハイロンとヤランの二人が乗り込むように指示を出し、こっちの馬車にはガルタスとグスカと俺の三人が乗り込むと馬を歩かせて始めた。


道中は俺とグスカでたわいない会話を交わしながら右の馬に乗った騎士の短い杖と、左の馬に乗った騎士の腰に木札の様な物を注視し、休憩らしい休憩も取らずにほぼ一日馬車を走らせ、辺りがすっかり暗くなってから野営の準備を始めた。


「ちょっといいですか?」


騎士の一人が近くにいたヤランに何やら話かけたのが見え、そのまま様子を見てると二人が急に振り向き何故だか俺が呼ばれた。


「どうした?何かあったのか?」


「いや〜何か、この騎士様が今夜の見張りと話がしたいらしいんスよ。」


それだけ言うと、肩を叩いたヤランは俺と交代し作業に戻って行く。


「貴方が見張りの方ですか?」


「そうだけど、何?」


一瞬人を値踏みするような視線を浴びせ、フッと薄く笑みを浮かべたと思ったら木札を持ってた方が「このまま最初の宿場町に着くまで、怪しい者を見たら早急に我々を呼びなさい。」とかほざいてきた。


「……は?」


「貴方は何も知らなくていいし、何も考えなくて構いません。ああ、それともう一つ。我々が戦うと判断した時は、邪魔にならない様に離れて余計な手出しも止めてもらいます。」


はぃーーっ?

なんだこいつらのこの上から目線の物言い?

初対面で喧嘩うってんのか?


「つまり、俺達は助祭士様の子守だけしてれば良いって言いたいのか?」


「……一つ訂正しておきますが、今は助祭士では無く司祭様です。ですが、賢明な方と話をするのは楽で助かります。」


騎士達は言いたいこと事だけ言うと澄ました笑いを浮かべ「用はそれだけです」と背を向けた。その態度に余計イライラが募るが、これ以上話しを聞く必要も無いならとイライラを押し殺し焚火の方へ踵を返し歩いていく。


途中すれ違った何か聞きたそうにしていたガルタスから毛布を受け取ったが、俺の雰囲気を察したのか口を開く事もなく、その夜は誰も必要な事以外は殆んど口を開かず黙々と夕飯を済ませた。

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