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異界転生(修正版)  作者: 七変化
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第19話

夕飯を終えた後、今夜の見張りをどうするかって話しになったんだが野営の準備を何もしてないからと自分が立候補し、もう一人1日荷台でゴロゴロしていたヤランが手を上げあっさり二人に決まった。


「それじゃあ頼んだぜ!」


「うぃ!」

「うぃース!」


片手を上げ火を絶やさぬ様にと枯枝で炭を動かし空気の流れを作る俺と、荷台に何かを取りに行ったと思ったら酒の匂いが漂う革袋を手に戻ってきたヤランが軽く応えると、ガルタス達は簡易テントの中へと潜り込んでいき、暫くするとパチパチと木々の焼ける音だけが辺りに流れた。


焚火の熱気を夜風が程良く冷やし、空を見上げると吸い込まれそうな無数の星々が煌めく中、ヤランは早速とばかりに手にした皮袋に口を付け、俺も星を良く見ようと馬車の車輪にもたれかかる様に寝そべる。


と、カタンと小さな音がしたので見上げてみると巡礼馬車の扉に付いた小窓が開き、そこから顔だけ出したサシャがキョロキョロと辺りに視線を飛ばしだした。


「……なに、やってんの?」


どうも下には注意がいって無かったらしく、盛大にビクッと驚きながらも顔の位置を変え下に居た俺と目が合うと、小さく咳払いを一つ手招きされヤラン共々扉に近付いて行く。


「すいません。大した事では無いのですが、少しこの方と二人だけで話をさせて下さい。」


「あー、うん。アレッすか。俺、邪魔モノ!スッか。はいはい邪魔モノ邪魔モノっと。」


ヤランは自分に関係無いならどうでもいいと言った口調で呟きながら焚火の傍へと戻っていくと、また皮袋の中身をあおりだし、俺はというと降りて来たサシャの後に付き従いテントとは反対側の草むらまで歩きだした。


「あー、寺院での魔法の事なら何も話せないぞ。」


馬車から離れ過ぎるのもマズいだろうと先を進むサシャへ適度に開けた場所で牽制の意味も兼ねて言い放つ。


「は?何の話ですか?私が言いたいのは今回行くタナシ寺院についてです。」


「えっ?それこそ俺はただの護衛なんだから関係無い話なんじゃ無いのか?」


「えぇ、他の皆様なら問題は無かったのですがユージ様だからこそ大問題なんです。」


じゃあ、なんで俺を雇ったんだっとツッコミは置いといて…。


「俺だと大問題って……なんで?」


「はい。先ずはその前にタナシの寺院は教国の人間によって取り仕切られた寺院だという事を理解しておいて下さい。次に教国の司教達は魔法と法術の両方を使いこなす者が殆どです。」


「あ~、ゴメン。まず俺、法術と魔法がどう違うのかよく判ってないんだけど。」


「はい?ユージ様はどちらも実際にお使いになっていたでは御座いませんか?」


「いや、あれは……じ、実は俺の国の魔法ナンダヨ~。」


「……すいません、意味が判らないのですが?」


そういやサシャは知らないのか……。


頭をかきながら何度となく繰り返したこの国に来た言い訳を話し、ちょっと驚いた顔のサシャから改めて魔法と法術についての講義を受ける。



「いいですか?そもそも魔法とは呪文の詠唱により周辺の魔力を様々な事象へと変化させる行為をさします。これに対して聖霊との取り決めにより確定した事象を発生させるのが法術。大きな違いは精霊との契約印があるか無いかです。」


なるほど…

さっぱりわかんね~。


「ーーで、何がマズイの?」


「はぁ〜。つまりはユージ様の行使する魔法が法術・魔法のどちらにも該当する全く未知の新しい術だと言う事が問題なんです。」


サシャは溜息混じりに何故かジト目で睨んでくる。


「つまり向こうじゃ魔法を使わなきゃ問題無いんだろ?」


「はい。……と言いたいところですが、何処からかあの大人数を治療した事が漏れ道中に監視が居ないと言い切れない状態でして…。」


「じゃあ俺は魔法抜きで護衛しろと?」


「はい。」


ーー無茶苦茶だな…おい。


魔法も使わずにとか、この世界を生き抜く自信も全く無いのに護衛なんて出来るわけないじゃん!


「……で、それは今日から使うなって事?」


「いえ、一応此方でも探りは入れましたので二つ先の宿場町迄は問題無いと思います。ですので、そこらから先では絶対禁止にして頂ければ…大丈夫かと。」


ーー二つ先ねぇ、後六日ぐらいだっけ?それだって確実な情報じゃ無い確証も無さそうだし、こりゃ何か対策を考えないと面倒事に巻き込まれそうだな……。


「うん、判ったとりあえず使わない様には心掛けるよ。」


「いえ!心掛けるだけでは無く、絶対に使わないで下さい!ただでさえ寺院は治外法権なんですから下手をすれば国同士の宗教問題に発展しますよ!」


宗教戦争ってやつか…。

確かにそんなのの、火種にはなりたくないしな。


「わかった。」


「いいですか?絶対ですよっ!」


………念押しされてしまった。


そんだけ重要なら最初から言えっつ~の!

わかってたら絶対断ったし。


サシャは睨みながら立ち上がり腰についた土を払うと、用件は済んだとばかりにサッサと巡礼馬車に戻って行った。


俺も後ろで小さくなってきた焚火を見て、慌てて薪を足しに戻る。


ーーにしても、後六日で何か武器を使いこなすなんて、絶対無理だよな~。


焚火を見ながら溜息をつきつつ、何か方法が無いかと思案している間に夜は明けていった。




………その後、三日は大した問題も起こらず最初の宿場町に到着すると予定通りに食料と水を補給し、久しぶりのベッドを満喫してまた朝早くに旅立った。



だが次の日ーー


「おい、ユージ!起きてるか?」


深夜の見張りが確定してた俺が昼食の休憩後に荷台に乗って寝っころがってると、ガルタスが声を落として聞いてきた。


「んー、寝かけだけど、何?」


「実はな、昨日の宿場町を出た辺りから誰かに尾行られてる気がするんだ。」


その言葉に上半身だけ起こし後ろを見る。


「……野盗か?」


「まだわからねぇが。数は一人か二人ってとこだろう。」


「なら、偶然行き先が一緒の冒険者とかじゃ無いのか?」


「いや、前の宿場町で昼間のうちにその辺の情報は仕入れて確認済みだ。今日明日、ここを通る冒険者も行商人もいねぇってな。」


ガルタスの言葉からサシャの忠告を思い出し探知を使って半径2キロ以内のそれらしい反応を探ってみる。


ーーん〜、それらしい反応は無いよなぁ。


「んー、考え過ぎじゃないのか?」


「へへっ、この仕事は臆病者が一番生き残るのさ!」


「んじゃ、どっかに止めて待ち伏せてみるか?」


「いや、この辺りは見晴らしが良すぎて向こうにも気付かれやすい。少し行けば巨石郡があるが、あそこは、魔虫が出るしなぁ…。」


「なら、決まったら声かけて起こしてくれ。」


そう言って再び寝転び直すと馬車の揺れを背中に感じながら眠りについていった。




「お…い、おい、ユージ!」


「ん…うん、ん。」


「……起きたか?」


「ん~、何とか。」


目が覚めると辺りを夕闇が包み馬車も止まっていた。


「何かあったのか?」


「いや、後ろを変に警戒し過ぎて巨石郡を晩に走り抜けるの羽目になっちまってな。皆で相談した結果、危険過ぎるってんで今夜は此処で野営する事にしたんだ。」


降りてみるとガルタスは馬車同士を寄せ、繋いだままの馬達に餌をやっていた。


ハイロンは無言で前方の巨石郡を見据えながら巡礼馬車の上に座って弓の手入れをしている。


「今日は給料分の働きがあるかもしれねぇな。」


グスカは軽口を叩きながらも馬車の外側を歩き回り辺りに鋭い視線を走らせ警戒しているし、ヤランは焚火の側で腰の剣を抜いて無言で砥石を走らせていた。


そこへ餌をやり終わったガルタスが戻ってくると、ヤランと同じく焚火の前に座り腰の剣を抜いて無言で研ぎだす。


「すまねぇが、今夜の夕飯はこれだけだ。」


そう言って投げ渡された干し肉を受け取りガルタスを見てみると、自分の分をかじりながらワインを口に含みで口内で肉をほぐしていた。


俺もその姿を真似して干し肉に噛み付くが……。


か、硬い!固いじゃ無くて硬すぎる!これに比べたらビーフジャーキーはガムだな。


四人がピリピリとしてる中、念の為ともう一度辺りを探知してみるがやはり結果は変わらず、ふと思いつきで人間以外を対象にしてみた。


「……当たりだな!」


呟く声にガルタスが反応する。


「何か気配がするのか?」


「あぁ、後ろじゃ無くて前の岩石の陰辺りに何かは判らないが居るぜ。」


それが何なのか探知だけでは判らないので直接様子を見てくるとガルタスに言い残し、視線がそれた瞬間に地面から剣を創り出す。


「素手で行かす訳にもいかねぇ。武器なら貸すぜっ。」


「いや、自前のがあるから大丈夫だ!」


出来たの剣を軽く振り、重さを確認しながら応える。


「なっ、そんな長剣、一体何処に隠してやがったんだ?」


忽然と現れた剣を見て目を剥くガルタスに企業秘密とだけ応え、巨石群の奥。反応があった方へと歩き出す。


「ちょっと様子を見てくるわ。」


ふと視線を感じ振り返ってみると馬車の上で矢を手にしたハイロンと視線があったので、微笑を浮かべながらそう言うと無言で頷き返された。


ふーー。


程よい緊張を感じながら深く息を吐き、全身の筋肉に意識を集中させる。


俺が使える能力は三つ……。

当てにならない適当魔法と肉体強化に肉体変化ーー。


だがこれから先、適当魔法が使えないとなると確実に使える二つの能力で何を何処まで出来るか限界を知っておく必要があった。


それも考慮しての単独行動だったが、人間相手じゃ無いなら手加減も必要無いだろうと軽く考える。


「さーて、んじゃまず手始めに‘‘肉体強化”を全身に使ってみますか。」


そう軽口を呟きながら自分でも知らず知らずの内に興奮してたのか、無意識に上唇を舐めていた事に気付き気持ちを落ち着かせる。


その場で深呼吸をもう二回繰り返し馬車から死角になる少し離れた岩石まで歩いて行くと、一足飛びに近くの岩石から次の岩石へと夜の空を飛び跳ね、反応のあった場所を目指す。


ーー・・・あれか?


岩石の陰に何かが蠢くのを視認しそこからは警戒しながら近付いてみると、反応の正体は人間と同じくらいの太さの胴体を持つ巨大百足だった。


しかも、パッと確認出来ただけでも10匹は居た。


ーーうぇ~、虫は苦手なんだけどな~。


などと一瞬だけ嫌悪感を抱きながらまずは目の前の一匹を標的に決め、両手でしっかり柄を握り締め袈裟斬りに斬り掛かっててみる。


すると剣はトマトでも切る様にあっさりと巨大百足の胴体を真っ二つにしたが、即席の剣は根元から折れ、切られた巨大百足の方は緑の体液を撒き散らしながら跳ね上がるように大きく暴れだした。


「うぇ〜。気持ちわりぃ。」


咄嗟に体液を避け後ろに大きく飛び退き巨石から剣を創り直す。


「悪いけど、実験台になってねっと!」


呟きながら急に仲間が襲われ激昂した様に上体を持ち上げた1匹目掛け、今度は頭から縦に切り裂くつもりが切れすぎて地面深くまで突き刺さりこれも放棄。も


ーー切る力は問題無し、だけど……力加減が難しいな。


一挙一動の確認作業も兼ねていたので、注意深く意識しながら身体を動かし新しく剣を創り直しては斬りつけ、体液を避ける。


そうこうしてるうちに残りが三匹になると巨大百足は巨石の間を縫う様に逃げて行ったので、深追いはせず探知で周辺の安全だけ確認する。


ーー大丈夫……みたいだな?


ひとまずは安全だと判断し深く息を吐くと五本目になる剣を一降りし、血か体液か判らない液体を飛ばしてから馬車まで駆け戻る。


「どうだ、何か居たか?」


「んー、何かデッカい百足がいたんで蹴散らして来たけどまた集まったら厄介そうだし先を急がないか。」


そうトボけながら剣を「消去」して荷台に飛び乗る。


ーーまぁ、実際は厄介でも何でも無いけど能力は極力見せないに越した事はないしね。


口には出さずそう呟きながら何か視線を感じ振り向くと、ハイロンが戻って来た俺を見ながら目を剥き口をあんぐりと開け固まってた。


ーーもしかして、見られてたかな?


「ハイロン!聞いただろっ!何呆けてんのか知らねぇが、サッサと巡礼馬車を動かせっ!」


ガルタスの号令にも身動ぎしないハイロンを無視してヤランが巡礼馬車に飛び乗りやっと走り出す。


グスカも焚火に砂を撒いて、すぐにガルタスの横へ飛び乗り後を追う。


途中で巨大百足を切り付けた場所に遭遇しないかちょっとドキドキしたが、街道から少し離れていたらしいのと岩石の陰になって死体は見えなかった。


「いや〜魔虫とは言え百足ゴトキで緊張しちまうたぁ、俺も歳かぁ~。」


ガルタスが大笑いする横で皮袋の酒をグスカがあおりながら苦笑を浮かべ、俺は荷台で実戦での実験成功に満足して馬車に揺られながら眠っていった。

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