第1話:クソ運営、仕様変更(ナーフ)の時間は終わりだ
初めまして、作者のヨグーです。
理不尽をハメ技で粉砕するダークヒーローの物語、開幕です!
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──『おっと、手が滑った。人間のデータが1件、完全消去されたな』
脳裏に響いたのは、そんな冷徹で、ひどく退屈そうな老人の声だった。
それが、俺──切磋拓磨の人生のエンディングだった。
深夜2時。3日連続の徹夜明けで、フラフラになりながらコンビニの角を曲がった瞬間、頭上からコンクリートの塊が落ちてきた。
避ける暇も、痛みを感ずる暇もなかった。ただの圧死。あまりにも理不尽な、唐突すぎる死だった。
次に目を覚ました時、俺は真っ白な空間にいた。
大理石のような床。目の前には、白髪を綺麗に整えた、いかにも威厳のありそうな老人が、絢爛豪華な玉座に腰掛けている。
手元にはホログラムのキーボード。どうやら、こいつが俺を殺した声の主であり、この世界の『神』とやららしい。
「目が覚めたか、下等生物。まあ、結論から言おう。我が作業中に少々不手際があってね。貴様のいた世界の座標をほんの少し弄った際、貴様の頭上にコンクリートを降らせてしまった。よって貴様は死亡した。以上だ」
神はキーボードを叩く手を止めすらしない。
謝罪の言葉も、申し訳なさそうな色も皆無。ただ、デスクに落ちた消しゴムのクズを払うかのような、淡々とした事務連絡だった。
「……以上、ですか」
「そうだ。人間一人のデータが消えた程度、我にとっては些事。騒ぐな。本来なら無に帰すところだが、一応は我が不手際だ。特別に、我が管理する別のファンタジー世界へ転生させてやる。感謝するが良い」
フッ、と神は鼻で笑った。
完全に人間を虫ケラか何かだと思っている、傲慢な態度。
その瞬間、俺の中でカチリ、と音がした。
前世での記憶がフラッシュバックする。
『お前の代わりなんていくらでもいるんだよ!』と怒鳴り散らしてきたブラック企業の上司。
『これ、お前のミスってことで処理しといたから』と理不尽を押し付けてきた無能な先輩。
それらのクソ人間のツラが、目の前のクソ神の顔と完全に重なった。
──ああ、そうか。
死んでまで、俺はこんな理不尽なパワハラ(神罰)に耐えなきゃいけないのか?
……バカ言え。もう会社は辞んだんだ。死んだんだよ。
これ以上、誰の顔色を伺う必要がある?
「おい、クソジジイ」
「……ぬ?」
俺の冷え切った声に、神が初めてピクリと眉を動かし、視線をこちらへ向けた。
「今、自分の作業ミスで俺を殺したって言ったよな? 職務怠慢だろ。データ管理の基本もできてねえのか? 報告書のテンポも最悪、態度もゴミ。上から目線の代替案(転生)で有耶無耶にできると思ってんじゃねえぞ、無能運営が」
「な、何だと……? 貴様、我が誰に向かって口を──」
「神様だろ? だから何だ。全知全能を気取ってる割には、手元が狂ってユーザー(人間)一人誤 BAN(殺害)してんじゃねえよ。自分の非を認めずに『感謝しろ』? 脳みそにバグでも湧いてんのか? ああ?」
一歩、前に踏み出す。
普段、ブラック企業でクレーマーの嵐に晒され、理不尽な社内政治を論理で生き抜いてきた社畜の、限界突破した怒りだ。
さらに俺にはもう一つの顔がある。どんな鬼畜仕様の無理ゲーでも、仕様書の穴を突き、ハメ技を構築して運営の想定をブチ壊してクリアしてきた、超やり込みゲーマーとしてのプライドが。
「言い訳(仕様)があるなら聞いてやるよ。早く喋れよ、クソジジイ」
「下等な人間が……我が慈悲を与えてやれば調子に乗りおって……甚だしいッ!!」
神のクールな仮面が、怒りで一瞬にして引きつった。
プライドをズタズタにされたクソ神は、玉座から立ち上がり、俺を忌々しげに指差した。
「我を愚弄せし下等生物め、身の程を知るが良い。その不遜なる体に百の神罰を刻んでくれよう。……ふっ、地を這う虫ケラへの情けだ。貴様が赴く世界において、神罰を1つ解除するごとに力を奪い、強くなれるシステムを組み込んでおいてやったぞ? 安心するが良い。万が一にも、貴様ごとき無能に呪いが解けるはずもなく、無様に野垂れ死ぬだけだがな。くはは!」
神が手をかざした瞬間、俺の視界が真っ赤な警告色に染まった。
【警告:システムより強制的な『神罰』が付与されます】
【デバフ:計100個が適用されました】
【個体名:切磋拓磨を、指定危険エリアへ強制デリート(転移)します】
足元に巨大な魔法陣が広がり、俺の体が光の粒子となって崩れていく。
全身を襲う、鉛のような重圧。感覚が狂い、吐き気が襲う。
だが、俺の意識は、冷徹なまでに冴え渡っていた。
「……ハッ」
消えゆく間際、俺はクソ神に向かって、盛大に中指を突き立ててやった。
(……おいおいクソ運営。わざわざ『クリアしたら強くなる仕様』を偉そうに語ってんじゃねえよ。デバフ100個? バカ言え。ただの『実績解除ミッションが100個ある神ゲー』じゃねえか。クリアしてやるよ、死んでもな。──待ってろよ、その首洗ってな!)
強烈な浮遊感。
次の瞬間、俺の体は、薄暗い不気味な森の地面へと叩きつけられていた。
ドサッ、と湿った土の音が響く。
視界の端には、バグったように赤い文字で埋め尽くされた、絶望的なステータス画面が浮かんでいた。
【適用中の神罰:残り100個】
全身はボロボロ。感覚も狂っている。
だが、切磋拓磨の、クソ運営への復讐劇(ゲーム攻略)は、ここから始まる。
第1話をお読みいただきありがとうございました!
拓磨のデバフまみれの無理ゲー攻略が始まります。
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