これは超絶美人が考え出したと思えないレベルの凶悪さ!
ちゃぶ台に集まって書くとなにを書いているか丸見えだから、私はベッドで、佳と永海先輩はちゃぶ台の真ん中に仕切りを立てて書いている。
私は下敷きの上に適当な紙を乗せ、ボールペンを構えていた。
一人五つ、すごろくの指示を考える。
何マス進む、戻る、一回休みとか、それも私達が書かなければ存在しない。二つぐらいはオーソドックスな指示を入れようかと悩んだけど、すぐに頭を振って考え直す。
逃げの思考に囚われてはいけない。この勝負は良心を見せた方が負ける。だからといって無理難題を書けば良いということではなく、別にできるけどってラインを攻めなければならない。ならない……はず……!
まずパッと思いついたことを書く。
――五回休み。
駄目だ‼ こんなの弱すぎる!
私は今しがた書いた『五回休み』に線を引いて無かったことにした。
なんの面白みの無いマスになってしまうところだった。このマスに止まった身にもなれ! 私! 五回休みとかつまらなすぎる‼
面白くするなら……そうだな……。
――次の不定積分を解きなさい。できなければ一回休み。
とかだったら面白いと思う。ただ一回休みになるだけじゃなく、条件をつけるということだ。解ければ休まなくてもいいし、解けなければ休まなければならない。
この塩梅、いいと思う。でもコレ却下とりあえず横線を引く。
こんなの佳は絶対解けない。先輩は大丈夫だろうけど。だから書くのはコレだ!
――自分の長所を三つ言う。言えなければ一回休み。
これなら頭の出来は関係無い! ちなみに私は顔が良い頭が良い髪の毛が綺麗の三つを言う予定。
我ながら良問ではないかと思わず笑ってしまう。
よしよしよし――いや駄目だ‼
とりあえずこれは保留だけど、こんなんじゃ弱すぎる! 地獄絵図になってもいいって思ったはずなのに、どうしてこんなみんなで和気藹々とした雰囲気ですごろくをしない駄目なんだ‼ 駄目って訳じゃないけど、これは甘すぎる!
――《時限爆弾》ゴールまで残り三マスになった時、次の番で三を出さなければスタートまで戻る。
これならどうだ!
残り三マスにならなければ発動しないけど、発動した時の凶悪さは随一のはず。
まだ三十マスのすごろくだからいいけど、これが更に増えた時、このマスに止まった者の心は無事でいられるか。
これで満足しそうになったけど、少し考えて訂正する。
――《時限爆弾》ゴールまで残り一~六マスの時、その残りマスの数字を出せなければスタートに戻る。
よしっコレだ!
止まらなければ問題無いマス。でも止まってしまうと六分の五の確率で今までの努力が水の泡になる凶悪マス。二人の驚く顔を見るのが楽しみだ。
この調子で残り三から四つ。
……あとは全部《時限爆弾》マスへ行くやつを作ればいいのでは?
例えば《時限爆弾》マスの一マス前に『一マス進まなければ一回休み』とか。
マスの配置はどう決めるのかまだ決めてないからアレだけど、なんとかこうにかして《時限爆弾》マスに止まるようにすれば地獄絵図が完成するかもしれない。
そうなれば《時限爆弾》マスをあと一つ増やすか?
――《時限爆弾》誰かと同じマスに止まればそのマスにいる全員スタートに戻る。
おおおお! なんて凶悪なマス! 流石私!
――いずれかの《時限爆弾》マスに行かなければならない。そしてそのマスの指示に従う。
これはこれはこれはこれは。これは超絶美人が考え出したと思えないレベルの凶悪さ!
じゃあもう残りは全部《時限爆弾》に行くマスで――いや、慈悲として保留のやつを加えておいてあげよう。
――《時限爆弾》ゴールまで残り一~六マスの時、その残りマスの数字を出せなければスタートに戻る。
――《時限爆弾》誰かと同じマスに止まればそのマスにいる全員スタートに戻る。
――いずれかの《時限爆弾》マスに行かなければならない。そしてそのマスの指示に従う。
――いずれかの《時限爆弾》マスに行かなければならない。そしてそのマスの指示に従う。
――自分の長所を三つ言う。言えなければ一回休み。
私は決定した五つのマスを切り取って和室へと戻る。
和室ではまだ先輩と佳は書いているみたいだ。ちゃぶ台の真ん中に教科書を起用に立てて上手く壁を作っている。
佳は置き勉してるだろうし多分先輩の教科書。
いや、佳も最近は勉強頑張ってるって言ってたから佳のかもしれない。別にどっちのでもいいけど。
「なっちゃん変な笑い方してたけどもー終わったの?」
「魔王みたいだった」
「そりゃあもう凶悪なマスができましたから。あまりに凶悪すぎて二人がドン引きするかもしれませんよ」
魔王みたいな笑い方してたって、ちょっと恥ずかしいな。
「私は今できた」
「えー⁉ 先輩もーできてたんですか⁉」
「あとは佳だけか」
「うわー焦る! ヤバいなんかプレッシャーが凄い」
別にゆっくりでもいいのに、私と先輩を待たせていると思っているのか佳はかなり考えている様子。
なんかちょっと面白いから意地悪でもしてやろうか。
「あと三十秒」
「待ってー! なっちゃんの意地悪ー!」
「フハハハハハ! 焦ろ焦ろ~、その方が結構ヤバいこと書ける時もあるからな~」
「鳴月、魔王みたい」
そんなことを言いながら、先輩も佳にプレッシャーをかけている。主にガン見して。
「うう~うう~ううううう~……‼」
頭をわしゃわしゃしている佳。別に三十秒数えてないけど、佳の中ではカウントダウンは進んでるらしい。
「できたあ‼」
多分私が言ってから数分は経っている。何はともあれ完成したのだからいいか。
「よし、じゃあ早速書いていこう。どうします? とりあえずなに書いたか公開します?」
「じゃんけんで勝った順から張っていくのはどう?」
「そうしましょう」
とりあえずちゃぶ台を端っこに寄せ、空いたスペースに模造紙を広げる。
下が畳だから本格的に書き込めないけど、全体図を見ながら場所を決めるだけなら問題は無いはず。
さてと、二人がなにを書いたのか、それの凶悪さはどれぐらいか、それが明らかになるのが楽しみだ。
「ちょっときゅーけーさせて~……」
とりあえず佳の休憩を挟んだ後で。




