変質
家族のもとに戻る前。
少年に髪飾りをもらった。
特殊な髪飾りらしく、私の感情に魔法を介在させないようにする仕組みらしい。
そして、私の魔法は伏せるように言い渡された。
『君の魔法は危険だからね。それに話さない方が、人として過ごしやすいから』
そういって、名前も名乗らずに去っていった。
その後ろ姿を見て硬直した人がいた。
私の父だった。
私の父は、彼を見るなり固まっていた。
彼をみる表情は、嫌悪、醜悪、妬みだった。
そして、私を見るなり、
「何を話した! 彼は何か言っていたか! その髪飾りはなんだ!」
一気に詰め寄ってきたが、髪飾りに触れる前に、もう一人の私が出てきた。
大切なものに触れるな!
その言葉に私も同調した。
私の意思で魔法を行使する分には問題ないはずだ。
私は『距離』に干渉した。
正確には心の距離だ。
私は常に他人に心を開かない。
それは家族も同様だった。
つまり、私に触れることはできない。
「っ!?」
違和感に気が付いた父親は手を引っ込める。
まあ、でも。
心の距離を一瞬にして吹っ飛ばした人が一人だけいた。
彼がいる限り、私は生きていけるだろう。
「あの『忌み子』に何をされた!」
ああ、耳障りだ。
『言葉』を消すのは?
それとも『声』を霧散させるのは?
いや、その前にやることがある。
「彼の名前は?」
「は?」
「知っているのでしょ? 彼の名前」
目の前にいるのが、父親という事実ということも忘れ、知りたい情報を抽出する。
私の雰囲気が変わっていることに、蹴落とされたのか父はたじろいでいた。
「か、甲斐田だ! 甲斐田悠一だ!」
もはや悲鳴に近い声を上げていた。
いいことを聞けた。
「ありがとうございます」
そして私は父の『意識』を殺した。
「せめて、コロニーの役に立って死んでいってください」




