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ダリアの悪意







ダリアが静かにアメリアに呼びかけるが、声からは嫉妬と憤怒がにじんでいる。

ダリアの娘のミリーナは、アメリアの3つ下の異母姉妹でもある。


ミリーナが候補にも選ばれなかったのに、姉であるアメリアがフェリクスの婚約相手となった。

その時からずっと、こうしてダリアは怨みのような感情を絶やさずにいるのだ。

そんなアメリアに、ダリアはどうにか一泡吹かせたいらしく、アメリアが怒りそうな言葉を投げる。




「男爵令嬢なんか連れているからセンスが落ちたのかしら?ああ、もともとないのよね」






とはいえ、この婚約者騒動がなくともアメリアはダリアに厭われている。


アメリアの母は、アメリアを産んで体調を崩し、亡くなった。

そして、愛する妻を亡くしたアメリアの父、クロード・コーンウェルは心の余裕をなくす。


クロードは狂ったように王城に通って執務に打ち込み、新たに子をもうけることなど考えず、ましてや他の女性と再婚するなんて毛頭ないまま1年ほど暮らしていた。


また、ほぼ全く社交もしなくなったので、体裁を気にしたアメリアの祖父が相手を探し始める。

そこに、財産目当ての子爵家ダリアが売り込み、なし崩しのように再婚した。

再婚から3年あって、やっと生まれた女児が、ミリーナだ。


いつしかクロードは、ダリアたちと最低限しか接さなくなったが、長女にだけはとても優しいのもおもしろくない。

そんな経緯もあって、アメリアは継母に嫌われ、母とすら呼ぶなと言われている。






「ご配慮ありがとうございます。ですが、ダリア様に気にかけていただくほどのことではございません」




「…殿下にお渡しするのでないならいいでしょう。早くお見せ」




「恐れ入ります。ポストマンが間も無く到着しだい発送しますので、ラッピング替えはできないのです」




「本当に生意気な…このわたくしが言っているのよ!令嬢の分際で、公爵夫人の言うことを聞かないと言うの?!」




アメリアの父クロードは、もともと柔和で理由なく人を避ける人間ではない。

再婚に気が進まなくとも、ダリアを蔑ろにはしなかったはずだ。

むしろ「父が引き合わせたこともあるのだから」と大切にしようとしたのではないのだろうか。

しかし今まさに体感している、この傲慢さと自己愛である。

自分の世界が強すぎる。


ミリーナも然り。

もし、クロードがアメリアにだけ優しいというなら、たしかにどうかと思う。

でも、アメリアの父は、ミリーナにも優しかったはずだ。

それがあの子は、母の甘言にそそのかされ、嘘をつき、ものを隠し、いつからか自発的にアメリアを陥れるようになった。

そんなことが10年も続いていたら、心も離れるだろう。


ため息をおさえてそんなことを考えていると、侍女の控えめなノックの音が響いた。




「失礼致します。国営デリバリーのポストマンが到着いたしました」




「わかったわ。荷物をお渡しするからエントランスにお招きしてくれる?」




「かしこまりました。アメリアお嬢様」




ルナという、侍女長に次ぐベテランのメイドだ。

一瞬にこりと笑顔を向けてくれ、礼をするとすぐに姿を消した。

ポストマンを呼びに向かったのだろう。ダリアは、ストレスが溜まるとアメリアだけでなく侍女や騎士たちにもつらくあたるので、彼らからの好感度も低い。

助け舟を出してくれたメイドに感謝しつつ、別れの口上を述べ


ようとダリアに向き直った瞬間、手に持っていたギフトが浮いた。

急に距離を詰めたダリアが、アメリアが潰さないように優しく抱えていたプレゼントの箱を、下から突き上げるように叩いたのだ。

ハッとしたのも束の間、大切なギフトをダリアに奪われた。

マーサが息を呑む音が聞こえる。嫌な予感しかしない。




「…ダリア様。今すぐにお返しください」




「ほほほ!二人してそんなに慌ててしまって!やはり、フェリクス殿下への贈り物ね?」




「お願いします。話を聞いてください」




「アメリア、あなたよくも、ミリーナから奪ったフェリクス様の隣に居られるわね!図太くて呆れてしまう!!……許さないわ。こんなもの!」




「だめっ…!!」




アメリアが叫びながら伸ばした手は、もう少しのところで箱には届かない。

それを見てほくそ笑んだダリアは、突然、箱からパッと手を離した。

そして、ワインレッドで室内着には重そうなドレスの裾を持ち上げる。

床に箱を落とし、踏みつけるつもりだとアメリアが悟った瞬間、ダリアが目の前から消えた。










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