表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/34

こわれたコサージュ

初投稿です。誤字脱字などおしえてください!





秋も終わり、木枯らしが吹き始めた頃。



いまフェリクスの手には、形の崩れた青い「なにか」がある。

それを見て、フェリクスは嫌な予感がしていた。






「まさか……」






風で顔にかかるブロンドは気にせず、王家に遺伝するアイスグレーの瞳を細めて手元をじっと見つめる姿は、彼に憧れる令嬢たちが見れば卒倒しそうな佇まいだ。



近づいてよく見ると、青い布でできた部分にはベールのように繊細なステッチが施されている。

技術だけでなく、心を込めて丁寧に作られたであろうことが窺えた。



もしこの()()()()予想が当たっているなら、フェリクスは正気でいられる自信がない。

これが、自分が何年も焦がれてやまない人の作品かもしれないのだから。








ここは港近くにある人通りの少ない公園。

ひとり思案するフィリクスに、後ろから声がかけられた。






「フェリクス第三王子殿下、難しい顔をしてるね?」






ケルディアール王国の三大公爵家の一つ、クラプトン家の嫡男ユーリだ。

そして彼は、フィリクスの唯一の親友でもある。


肩にかからない程度のウェーブヘアは、陽が当たりアッシュベージュが明るく透けている。

からかうように微笑むグリーンの瞳はなんとも甘い雰囲気で、令嬢たちにもマダムにも人気の令息である。






「お前が失くしたパイプを探していたら、これを拾ったんだ」






「ひどい壊れよう……あれ?この金具どこかで見たような形だけど」






たしかに、強い力がかかったようにひどく変形して潰れているものの、ユーリの言うとおり留め具だけは形を保っているようだった。

その金具はうすいクリップのような形をしている。






「…ああ。ブローチやコサージュのあれに似ているね。男性用の小ぶりなものだと、ちょうどこのくらいじゃないかな?」






「言われてみればそうかもしれない。これを見ていると、なぜか胸騒ぎがする」






「ふーん……いやそれより、パイプを見つけないとまずいんだよ」






あまりの必死さに押されて手伝いに来たのだが、今のところ見つかっているのはコサージュだけだ。

しかも驚くべき事に、彼は煙草を吸わない。

パイプのフォルムや手触りが好きらしく、もっぱら観賞用だ。






「はあ…自業自得だ。しかも、吸わないのになぜ持ち歩くんだ?大事にしまっておけばいいものを」






「普段から手に持ちすぎて、ないと落ち着かないんだ。ある意味ホリックだよ」






「吸わないのに中毒とはな」






ユーリは頭の回転が早く、性別に関係なく人身掌握が上手い。

だが、優秀なくせに趣味がなんというか、ユニークなのだ。



令嬢たちにも教えてやりたいところだが、すでに周知の事実らしく、その上で「ミステリアスだわ!」とか「肌身離さずなんて少年みたい」となっているらしい。理解しがたい趣味だと思いながら、フェリクスは小さくため息をつく。






「まあいい。見つけたら報告する」






「ありがとう。持つべきものは友だね」






フェリクスがもう一度ため息をつきながらかわいそうなコサージュ(仮)を眺めていると、あることに気づいた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ