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終末世界の元暗殺者  作者: くろふゆ
第四章 囚われの半人半魔と契約者 illegal contract
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033話 神崎遥VS火口鉄平

 多くの廃ビルがそびえる寂れた場所に、神崎遥は悠然と立っていた。


 父である神崎士道とは、現在別の任務に当たっている。


 あくまでも軍の手伝いをしている遥と、軍の《中将》を務めている士道とでは、割り当てられる仕事が違うのは当然のことだ。


 そして今、星一つない闇夜の空を、遥は魅入られたように見上げている。


 広がる宙の暗黒に右手を伸ばした。別に何かを掴みたかったわけではないが、心とは別に体が勝手に動いていた。


 ふと視線を下に向けると、そこには遥の重力操作の魔術により、多くの人間が上から強烈な圧迫を受けることで潰されていた。高重力により血管が破裂して、全身から血を噴き出している者もいる。酷い者はトラックで引かれたかのようにぐちゃぐちゃになっている。


「つまんない、実に退屈だわ。あー、私って強過ぎるのよねぇー。殺したりなぁい♪」

「……だろうな。こんな下っ端相手じゃ、お前さんの相手は務まらねぇだろう」


 ゆっくりと振り返ると、遥の背後にある崩れた瓦礫の上に、目付きの悪い男がいた。


 背は遥よりも十センチは高く、176センチ程だろうか。


 その体は灰色の外套の上からでも鍛え込まれていることが分かる。燃え盛る炎のように赤い髪の毛を、整髪料でライオンの縦髪のようにツンツンと立てていた。


「……一体誰かしらぁ? これはお姉ちゃんうっかり。もー私ってばドジなんだからー。そうだ、今度はドジっ子路線で行こうかしら。普段はしっかり者の姉が自分にだけ見せるだらしない姿。うん、そそるんじゃない? あ、まだ生き残りがいたのね。殺さなきゃ☆」

「オレの名前は火口鉄平ひぐちてっぺい。魔術結社【暁の光】に所属する平の戦闘員ってとこだ」


「【暁の光】……それなら犯罪者ね。あなたたちの目的はなんなのかしらぁ? 見たところ、あなたは私より少し年上の、普通の高校生って感じだけど」

「【暁の光】は実力主義なんだよ、だからオレみたいなガキでも組織に入れてもらえる。と言ってもオレはまだ、下っ端を少し超えたくらいの雑兵だけどな」


「……そう。頭が悪そうな見た目の割に、自分の立場はきちんと理解しているのね。偉い偉い。それなら、これから自分がどういう運命をたどるかも、ちゃあ~んと理解しているわよねぇ」

「ノンノン、待て、待て。戦う前に一つ提案がある」


 火口が手を前に突き出して、人差し指を左右に揺らしながら、遥の言葉を遮る。


「何よぉ、さっそく命乞い? 見逃してあげないわよ。あなたはミンチになるのだから」

「神崎遥――お前、【暁の光】に入らないか?」


「それなら、もう一度聞くけど、あなたたち【暁の光】の目的は一体なんなの?」

「国家転覆」

「……はぁ、それじゃあ、あなたたちはテロリストということね。一国家である日本とまともに戦って、少しでも勝ち目があると思っているのかしら?」


 遥が馬鹿にするように、軽くため息を吐いた。


「ならば聞くが、神崎遥。お前は今のこの国の形を正しいと思っているのか? 政府は独裁政権を行い、上の人間が下の人間への激しい搾取を繰り返している。それが原因で、少しずつ国民に不満が溜まっていき、各地で魔術による犯罪が横行している。その烏合の衆でしかない魔術犯罪者たちを教育し、明確な意思と目標を持った組織として構成したのが、今の【暁の光】のリーダーだ。オレたちは日本政府……もとい日本軍を相手に戦い、本当の自由を取り戻す。そしてこの国を再び繁栄させるんだ。そのためには悪をなして巨悪を討つ、それぐらいの覚悟が必要となる。まぁ、【暁の光】のリーダーの真意は別にあるのかもしれないがな。しかしそれは、今のオレには関係のないことだ」


 火口は真剣な顔をすると、その茶色い瞳で遥の目を真っ直ぐに射抜く。


「オレももう一度だけ問おう。神崎遥、【暁の光】に来い。当面の敵は日本軍だ。オレたちと世界を変える力が、お前にはある!」

「話が長い。断るわ、馬鹿馬鹿しい」

「おいおい、即断かよ。……そうか、オレの上司にお前のことを勧誘してこいって言われているんだけどなぁ」


 火口が頭の後ろをガシガシと掻きながら残念そうに呟いた。


 その後、ニヤついた顔を引き締め、目付きを鋭くして囁くように口説く。


「【暁の光】なら、お前が知りたい『真実』も、その『望み』も叶えてやることができるぜ」

「…………なぜ、そのことを知っているのかしら」


 遥の纏う空気が冷たいものへと変わる。吹き荒れる突風。広がっていく圧倒的なまでの支配者のオーラ。迸る魔力の波動。相対するだけで冷や汗が浮かぶ圧。


 その場を強大な魔力と禍々しい殺気で覆い尽くし、火口の逃げ場をなくした。


「悪いけど、私は【暁の光】には入らない。そのようにあなたの上司に伝えてほしかったのだけど……。残念ね、あなたはここで殺さないといけないみたい」


 遥の両手のひらから生まれる、巨大な《重力弾》。空気が歪み、生き物のように蠢く。


「いやー、オレもこんなところで死にたくないんでね。お前とは絶対戦いたくねぇよ。命がいくつあっても足りねえ。それじゃあ、ちっとばっかし全力で逃げさせてもらいますわ」


 火口がそう言うと同時に、廃ビルで覆われた辺り一帯は火の海に包まれた。

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