第七十話
学院祭。予想以上にほしいものが見つかって買いすぎましたね。収納魔法があってよかったです。
外部から商人たちが来るとはいえ、あまり期待していなかったのですがね。まさか古本屋が来ていたとは。ほしかった本が何冊もあったおかげでたくさん買ってしまいましたよ。
「……あれ、ルーチェとアイト卿じゃない?」
シグニの視線を追うと、ルーチェとアイト卿が休憩スペースのベンチに座っていました。まさかとは思いますが、ずっとそこにいたってことはないですよね?
手を振ると、すぐに気づいてくれましたね。二人の方に行くと、少しだけ甘い匂いがします。何か食べてたんですかね。ルーチェが食べそうなものだと、クレープでしょうか。
「あら、意外と早い合流ね」
「ちょうど見えたからね。二人は回れた?」
「少しな」
お兄様とエルピス伯爵令嬢は楽しく回れていますかね? 二人だけで話しているところを見たことがないので、少し不安です。お兄様は言葉より態度で示す方なので、分かりにくいところもありますし。
「なんとかするだろ」
「大丈夫じゃない? あの子、ゲームのキャラクターの中でお兄様が一番好きみたいだったし」
「ゲームで好きと現実で好きは違うんじゃないかな?」
まぁ、私たちはお兄様の恋が実ることを祈るしかないのですがね。それに、シグニの言う通り、ゲームと現実は違います。それを理解できないおバカさんもいますけどね……。
「ルシアは夜の仕込み終わってんのか?」
「夜?」
「ちょっとしたサプライズがあるんです」
かなりの自信作なんですよ。学院に許可を取っていますし、楽しみにしていてください。ちゃんと魔塔にも事前申請してあるので、今回は怒られませんよ。
「学院祭で夜……」
「どうかした?」
「……いや、そういえばゲームでも学院祭の夜にイベントがあったなぁって」
そうなんですか? 私はゲームに登場しないそうですし、今回やろうとしていることはゲームとは違うと思いますよ。たまたま同じだとしたら、すごい確率ですし。
そんなことを話していると、お兄様とエルピス伯爵令嬢もこちらに来ました。私たちを探しながら学院祭を満喫していたようで、エルピス伯爵令嬢の腕の中には持ち帰りのお菓子やアクセサリーと、いろいろなものがあります。お兄様が買ったんですかね? エルピス伯爵令嬢は嬉しそうに笑っていますし、お兄様もいつもより表情が柔らかい気がします。上手くいったみたいですね。
「なんで置いていくんですか!」
「一応、私も置いてかれた側よ」
計画を立てたのはアイト卿なので、怒るのはアイト卿だけにしてください。私は協力しただけですからね。主犯はアイト卿ですよ。
「おい……」
「事実では?」
「裏切るのが早いんだよ」
「いつものことだろう」
こういうイタズラや作戦で叱られるのはアイト卿の役目ですから。
それにしても、一日目は何事もなく終わりそうですね。フロル様の言っていた「何かが起こる」は二日目なのでしょうか。それとも、日中ではなく夜? ……どちらにせよ、警戒はしておきましょうか。何をするか分かりませんからね。自分が正しいと思っている人は。




