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第三十一話




 毎年一週間にわたって行われる建国祭。街はいつも以上に賑わっており、屋台というものも多く出ています。街中至るところに花やランタンがあります。焼き菓子の甘すぎない、けれど人を惹きつけるいい匂い。子どもたちのはしゃぐ声。少し離れた場所ですが、愉快な音楽も聞こえてきます。


「……あの、お願いなのではぐれないでくださいね? 特に第二……。失礼。ルシア様は」

「大丈夫です。迷子防止の魔道具も持ってますから」


 お母様にどうしてもシグニたちとお祭りに行きたいとルーチェと二人で相談したところ、オルコス卿とアイト卿を護衛につけるならという条件を出されました。お二人にも予定があると思ったのですが、空いているとのことだったので甘えさせてもらいます。


「動きやすいですね」

「毎日ドレス着てると窮屈よねぇ。動きにくいし」

「ルーチェはよく騎士団の訓練所で動きまくってるだろうが」


 またルーチェとアイト卿の言い合いが始まりましたね。最初の頃は驚いていたエルピス伯爵令嬢も今ではまたかと呆れていますよ。私たちは平民の方たちが着る服を着ているのでとても動きやすいです。華美ではなく、装飾も少ない。まさに研究するのに打ってつけ。研究するために装飾なんていらないんですよ。魔塔に滞在しているときだけでもこういうシンプルな服を着ますかね……。


「できる限り敬称は付けないでくださいね。身分がバレると危険ですので」

「これだけ人がいるのなら大丈夫なのでは?」

「人がいるからこそ危ないんです。簡単に紛れることができるので、人を攫い逃げおおせるのに適しています」


 なるほど。人を隠すのなら人の中ということですね。確かに追っている最中に人混みに入られてしまうと見つけるのが難しそうです。魔法での追跡もこれだけ人がいると大変ですしね。それに、一応ルーチェと私は国の要人なので事件に巻き込まれるとお祭りが中止される可能性もありますし……。国の一大行事なので中止はそうないとは思いますが、皇族が巻き込まれるとなると大問題ですからね。国の信頼にも関わりますし。


「念のため、この魔道具を持っていてください。何かあったときに魔力を込めていただけば、即座に私に位置情報が送られるようになっています」


 そう言われて渡されたのはバングル型の魔道具で小さな宝石がはめ込まれています。オルコス卿の腕には同じ魔道具で一回り大きい宝石がはめ込まれているものが着けられています。おそらく、あれが親なのでしょう。子である宝石の魔力に反応して位置が分かる。こういう複数の情報を管理するタイプの魔道具は珍しいです。昔、複製できないかなと魔塔のガラクタ倉庫を漁ってやってみたら怒られました。今となってはいい思い出ですね。その後の説教二時間という地獄さえなかったら……。


「これだけじゃバレませんかね?」

「魔法を使うので大丈夫です。他の人たちには私たちは街の住民にしか見えませんから」


 今日は身分などは気にせずにお祭りを楽しみましょう。年に一度のお祭りなんですから。






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