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其の八十九『機密文書』

前回のあらすじ:アジト潜入

 「ラプソディー………プロジェクト………」


 立花は画面に映し出されているその言葉を復唱した。

 疑問でも驚愕でもなく、ただただ映し出されている言葉をそのまま自分の口で喋っただけだ。

 そこにどんな感情が込められているのかは分からない、立花自身も定かではないのだろう。



 「なんだ…………これは…………」



 立花でさえ理解が追い付かない謎の機密計画文書。

 立花は恐る恐るマウスを動かし、その計画書を開いた。



 『maohotamooaitaoytogatyoamoyuoptp038-iw3-8m,pf,av0ay04-yu-a,f-8-l^a.-i-ai-ra,-t8a^a.^8t@aj@,vak;japinva]/z:.:kapupujo7qw3r3k;m;g,gvaoibantpay0,,ohok@9b,cmoghkq@@utopa,@lom@ph0kq,p:,p,@0whmtojpmaytomap,p,p:p,pha0ompam@boavu@k@wutkpan8oguapmpaypmgpa,pfhapmvp:aphopghoa―――――』




 だが、そこに書かれていたのはただの不規則な文字列だった。

 無論、これは一部を抜粋したもので実際はもっともっと遥かに長い。

 その場で持ちうる知識を動員できるだけ動員して解読してみようと試みる立花だがなんのことかさっぱりわからない、意味のない文字列にしか見えない。



 「さっぱりわからん! こりゃ本当に完全なランダムな文字列になってるな。栞でも解けるかどうか……ま、一旦後だ後!」




 立花はここで解読できないことを悟るとすっぱりと諦め他に何か有意義なものがないかと色々データを漁って見たがこれといって目ぼしいものも見つからなかった。

 強いて言うならモニターに映像を映し出すプログラムのソースコードくらいで、実行しても何もいない薄暗い牢屋のような部屋が写っているだけだったので無視した。



 「これ、地下とかあるんですかね? ここだけだとしたら明らかに狭すぎる気がするんですけど……」

 「あたしも同感……だからさっきからそういうのがねぇか探してんだけど……千鶴ぅ! あったか?」

 「……全然。痕跡すら見つからない」

 「だそうだ」



 つまりこの空間はさながらインターネットカフェのような個室になっているというわけで、あのモニターに映っていた牢の数々はこの場所からはいけないだろうということが推測された。

 


 「これからどうするんすか?」

 「ひとまずデータの解析を栞に任せたいからな、一回戻るぞ」

 「はいっす!」

 「でもお前らは帰れ」

 「へ?」



 やる気満々だった葵だったがそれは涼によって静止された。

 


 「琳はまぁ、このまえ一応家に帰ったとはいえ、お前たちはかなりの間自宅に帰っていないだろ? きっと警察の方にも捜索願が届けられている……っつってもいま警察機能してるのか分からんが………ともかく、一回家に帰って最低でも一日家族と一緒にいろ。これは命令だ。良いだろ立花」

 「構わん。正直なところ、ここいらで一つ方針を決めておかないといけなくてな。このままだと全ての状況にぶっつけ本番でいくことになる。三日月相手にそれはちょいと避けたい。それに――――――」



 少し疲れた。

 と、立花はため息を吐きながらグーッと体を伸ばして欠伸をした。



 「親というのは、こと子供のことに関しては文字通り何でもする生き物だ。帰って安心させてやれ、生きている間に。まだ、()()()であるうちにな」



 そう言った立花の表情は何処か悲しげな顔をしていた。




△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△




 「た、ただいま~………」



 葵は自宅の玄関の鍵を開けて空き巣が侵入するかのようにゆっくりと自宅へと入っていった。

 すると茶の間の方からやややつれ気味の両親がドタドタと大急ぎで玄関へとやって来て葵の姿を見るなり棒立ちして目を大きく見開いて固まっていた。



 「た、ただいま~………」

 「……………………葵? 葵なの?」

 「う、うん」



 両親は目の前にいるのが何日も家に帰ってこなかった本物の娘だと分かると涙をボロボロとこぼして葵を抱きしめた。

 それは総一郎の家でも同じで、葵と総一郎の二人はもらい泣きして両親を抱きしめ返した。









 一方、琳も自宅に帰らされていた。

 


 「ただいま」

 「ん? お、おかえり」



 こちらは割と淡白な感じだった。

 確かにまだ家に帰ってきてまた出て戻ってきて、その一連の流れの時間はまだ丸一日も経っていない。

 別に文乃自身、琳のことを心配していないわけではなかったが引き留めもしなかった。



 文乃は琳に冷蔵庫から麦茶をコップに注いで出して、しばらく奇妙な沈黙が空間を支配した。

 五分ほど経った頃だろうか、文乃が「コンビニいってくるけど、なんか買ってくるものある?」と尋ね、琳は特にいらないと言った。



 ほどなくして文乃が帰宅するとその手にはタバコが一つ握られていた。

 琳もタバコについてはあまり詳しい方ではないから銘柄についてはよく分からないが、有名な奴だというのは分かった。

 


 「セブンスターだっけ? それ」

 「当たり」

 「タバコなんて吸ってたっけ」

 「いや? 琳が出来た時にやめた」



 文乃は木製の椅子に座ってフィルムをはがし、箱を開けて中から一本取り出して口に咥え、銀色の開閉式のライターで火をつけた。

 文乃が息を吸うとタバコの先の火が煌々と燃え赤くなり、息を吐くとモクモクと特有の臭いを持った煙が出てきた。



 「ふぅ…………」

 「やめたのに何で吸ってんのさ?」

 「ま……そういう気分だったからかなー」



 すると、インターホンが一回鳴り、文乃はタバコを咥えたまま玄関の鍵を開けて誰が来たのか確認した。



 「……なんだ。あんたか、()()

 「頼むからその名前で呼ばないでくれ。今は()()()だ」

 


 外に立っていたのは、()()だった。

 文乃に「雨宮」と呼ばれて酷く不機嫌そうな顔をしながら。

気が付きゃ一周年!

これからもよろしくお願いします!

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