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現実世界に魔物が現れたようです  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:ようこそ、世界の裏側へ!
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其の十八『訓練』

前回のあらすじ:普段無表情な美人が笑うとドキドキが半端ではない。

 琳の初戦闘から数日が経った頃、琳は一人家の中でぼーっとしていた。



 あの事件は魔物の死体や血痕、そして素早い撤収から一切報道されることはなかった。ただ千鶴の獣性などが多少なりとも影響したのかネットの掲示板などでは何かあったのではないだろうかとささやかに噂されているがその真相は知られていない。



 今日は庭園の守り手(ガーデンキーパー)にも呼ばれていないのであれから琳は穏やかな日々を享受していた、夏休み初日からあんな化物に会ってそれから涼に後ろから付けられてわけも分からぬまま極東支部に連れて行かれなんやかんやありながらも初戦闘を終えて、と、ほとんど異常な日々が続いていたためここ最近は何もなさ過ぎて逆に暇を持て余している。



 宿題だって受験生ということでそもそもほとんど出されていないため今日の内に全て終わらせてしまった。しかも今はまだ昼にもなっていない。



 「なーにすっかなー……」



 琳が一人今日の予定を決めかねている時、琳の携帯が着信音が鳴った。



 「総一郎………珍しいな、あいつが電話なんて」



 電話を掛けてきたのは最近ご無沙汰だった幼馴染の総一郎からだった。


 


 「どした珍しい」

 『いや、ちょっと気になることがあったものだからな』

 「……? なんだよそんなに渋って」

 『……お前さ、如月神社の奥の森で見た化物覚えてるか?』



 覚えているに決まっている、あんな出来事忘れたくても一生忘れることが出来ない。というか覚えているかもなにも、琳はほんの数日前にあれと同系統の奴らと戦ったばかりだ。



 「当たり前だろ。忘れられるわけがねぇ」

 『………そいつらが街に現れたって言ったらどうする』



 その言葉を聞いて琳の心臓は飛び跳ねた。

 何故総一郎が知っている………もしかしてあの時誰かが………そう思考を巡らせる琳だがここはひとまず焦らず知らないふりをしてことをやり過ごすことに決めた。



 「……出たのか?」

 『いや、そういう噂があるだけだ。しかも場所は一之瀬さんの家の近くらしくてな』

 「まじかよ……」

 『それでさっき連絡を取ってみたんだが、本人が言うに一日中家にいたけど知らないっていうから、ただのデマっぽい』

 「……そうか、なら良かった」



 その時、携帯越しにインターホンの音が微かに聞こえた。



 『悪い、誰か来たみたいだ。また』

 「あぁ」



 どうやら客人が来たらしく、総一郎は電話を切り、琳の耳には「プー……プー……」という音だけが聞こえていた。









 十分後、再び総一郎から電話がかかってきた。



 「もしもし? もう用は済んだのか?」



 次に聞こえてきた声は、総一郎ではなかったが確実に聞いたことのある声だった。


 

 『おーっす琳、あたしだよあたし』

 「えぇ…………」

 『えぇーってなんだよ! てめぇ、しばくぞ!』

 「おっかないですね。朝比奈さんがそっちにいるってことはやっぱり……」

 『あぁ? なんだよ、もしかしてわかっちまったか?』

 「まぁ、ある程度は」

 『なら話は早ぇ、今すぐ支部に来い。場所くらいもう分かんだろ?』

 「……分かりました、すぐ支度していきます」



 琳は電話を終えるとすぐに着替えた。



 特にお洒落をする必要もないので近場に出かける程度の格好に着替えると琳は鍵の付いている机の引き出しから黒の武器(ブラックウェポン)を取り出した。



 初戦闘の日以来、いつ何時何があっても戦えるようにと涼から常に持っているように言われていた。というより、琳が庭園の守り手(ガーデンキーパー)に加入した時点で黒の武器(ブラックウェポン)はすでに琳の所有物になっているのであの日からいつでも持ち出してよかったのだが、琳は無くすと困るからと言ってずっと涼に預けていたのだ。



 琳は普通の携帯電話とデバイスモード状態の黒の武器(ブラックウェポン)をズボンの両ポケットにそれぞれしまって出かけた。




△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△




 バスに小一時間ほど揺られながら琳は例のテナントビルに到着した。


 エレベーターに乗り、パネル部分に黒の武器(ブラックウェポン)をかざして地下にある支部へと降下していく。

 エレベーターはすぐに止まり、目の前にはもうすっかり見慣れてしまった光景の一つになっている庭園の守り手(ガーデンキーパー)極東支部のエントランスが広がっていた。



 「あ、香月君。どうされました?」



 エントランスに入ると栞がにこやかに話しかけてきた。



 「朝比奈さんに呼ばれたもので。何か聞いてませんか?」

 「いえ……私は特に何も……」

 「そうですか……」



 二人が困り果てていると、栞の携帯電話が鳴った。



 「はいもしもし、あ、朝比奈さん……えぇ、たった今来ましたよ。分かりました、伝えておきます………たった今朝比奈さんから連絡がありまして、模擬戦闘訓練室まで来てくれとのことです」

 「確かここより下のところでしたよね?」

 「はい、あちらのエレベーターから降りていただくと到着します」

 「ありがとうございます」



 栞のアドバイスを受けたためおぼろげな記憶に頼ることなく琳は模擬戦闘訓練室まで無事にたどり着いた。そこにはすでに黒いシャツとホットパンツ姿の涼が槍状に変形させた黒の武器(ブラックウェポン)を担いで待っていた。



 「よっ!」

 「よっ、じゃないですよ。どうしたんですか?」

 「あれ、察しついてたんじゃなかったのか」

 「てっきり俺や葵の時みたいに総一郎に説明会でも行うのかと……」

 「あぁ、あれは今翔馬と千鶴がやってるよ。葵もそこだ」

 「じゃあ俺は何で呼ばれたんですか?」

 「お前……見て分かんねぇのか?」



 「訓練だよ訓練」涼はそう言って槍を琳に突きつけた。琳はほんの数秒頭の中で今自分の身に起こっていることとこれから起こるであろうことを予測した。



 そして悟った、これ逃げられないやつだと。



 「お前ももう立派な戦士だ、これから先戦うことがどんどん増えていく。そのためにも早いうちからお前を鍛えなきゃなんねぇ。つーわけで、しばらくあたしとタイマンだ」



 琳はそれには返事をしなかった、だがその代わりに黒の武器(ブラックウェポン)を刀状に変形させて自己流なりに構えた。



 「言っとくがあたしは優しくねぇからな、覚悟しとけよ」

 「お手柔らかに、お願いします」

 「死なない程度にしごいてやんよ! んじゃ、行くぜ!!」





 そうして、涼によるマンツーマンの訓練が行われた。

 言うまでもなく、つい最近まで一般人だった琳は底上げ強化された体に慣れておらずそもそもその体に慣れるところからだったので琳は今まで感じたことのない疲労感を感じることになった。

涼はあまりきわどい格好でも気にしないタイプ、というか人に指摘されるまで気づかないタイプ。

そして客観的に考えてようやく恥ずかしがるタイプ。

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