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現実世界に魔物が現れたようです  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:ようこそ、世界の裏側へ!
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其の十三『はろー、にゅーわーるど』

前回のあらすじ:細胞一つで人間卒業

 扉が開き、立花と琳が翔馬たちのもとへと姿を現した。



 「おっ、琳君! お疲れ様ー、どうだった…………琳君?」



 琳は一言も発さずに翔馬のもとへと早歩きで向かった、栞は何かを察したのか一人で先にエントランスの方へと戻ると翔馬に伝えてそそくさと退出してしまった。




 そして琳は翔馬の前に立った。



 「………須崎さん」

 「は……はい」



 琳は生まれてきた中で一番低くそれでいて怒気のこもった声を静かに、それでいてはっきりと口に出した。翔馬は琳のただならぬ気配に冷や汗が流れ顔が引きつっていた。



 「どうして大事なことを後回しにして話してくれないんですかねぇ!!?」

 「ひいぃぃぃ!?」



 琳は恐らく以後数年分の怒りを前借したのではないかというくらいに翔馬に怒った。



 それもそうだ、いきなりもう加入してるだのと言われてすぐわけもわからぬまま細胞移植されてそれでいて人間を辞めるからときたもんだから琳の頭の中はとっくの前にショートしてもう許容量キャパオーバーしているのだ。



 「こういう大事なことってもっと早くに言うべきなんじゃないんですか? それともあれですか、俺がまだ成人もしていない子供だからこれくらいのことなら許されるとかっていう考えなんですか?」

 「ち、違うんだ。決してそんな考えじゃないんだ……!」

 「じゃあどういう考えなんだ? あぁ?」

 「いや、それは………その………」

 「はっきり言えや須崎ぃ!」

 「ごめんなさい! ほんの悪戯みたいな気持ちでやりました! サプライズ的なそんな感覚であまり深く考えていませんでした!」



 琳は胸ぐらをつかんでいた手を放すと、翔馬がその場にへたり込んだ。



 「……私しーらない」

 「あなたもですよ……」

 「………まじ?」

 「大マジです! いきなり人の体に注射器突き刺しましたよねぇ、しかも中身が何なのか言ってないじゃないですか! 二回目は開化細胞って分かってましたけど、一回目のアレは何だったんですか!?」

 「あれはほら、パッチテストみたいなもんで………」

 「だったらそうだとあの時言ってくださいよ!!」

 「す、すまない……」



 立花でさえたじたじとしてしまう怒った琳の迫力。



 その後五分間翔馬に対してお説教をしてようやく収まったらしいが、その代わりそれから一日ずっと翔馬は琳に対してどこか怖がっていたという。




△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△




 「ん、戻ってきたか。お疲………え、どうした琳」

 「別に何でもありません」

 「お、おう? そう、か?」

 「朝比奈さん、ちょっと」

 「ん?」



 琳が戻って来た時、琳の違和感に気付いた涼が琳に何かあったのかと聞くも何でもないという琳。そこへ栞が涼を呼び、事を小声で涼に伝えた。



 琳が「はぁ……」とため息を吐きながらソファーに腰かけると千鶴がにじにじとソファー伝いに移動して琳の隣に座った。



 「どうしたの?」

 「雨宮さん……ううん、何でもないよ」

 「………そうには見えない、大方翔馬が何かやらかしたと思う。香月君の顔、むすっとしてるから」

 「えっ、嘘!?」

 「うん、嘘。でも今ので分かった、何か怒るようなことあったんでしょ?」

 「……まぁ、そうだけど」



 千鶴が醸し出す謎の迫力についつい本音を言ってしまった琳。




 そして千鶴は琳にさらに近寄って琳の頭を優しく撫でた。



 「!?」

 「あっ……」



 突然のことに琳は思わずのけ反ってしまった、千鶴は悲しそうな声を出した。



 「……嫌だった?」

 「いや、そうじゃなくて………いきなりで驚いたっていうか……」

 「じゃあ嫌じゃないってこと?」

 「……まぁ」

 「はっきり言って」

 「……嫌じゃない、です」



 その言葉を聞くと千鶴は再び琳の頭を撫で始めた。

 琳は同級生の女子に頭を優しく撫でられているという現実に段々と恥ずかしくなってきたが折角のこの貴重な時間を無下にしていいものかという葛藤で、先ほどまであった怒りの感情などとっくに消え失せていた。



 「珍しいですね、雨宮さんがあんなことするなんて」

 「……ほんとだな」



 その一部始終を見ていた栞と涼が興味深そうに見ていたことに二人は気づいていなかった。




△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△




 その頃翔馬は立花のもとでこれでもかというくらいにへこんでいた。



 「………ま、そういうこともあるんじゃない~?」

 「……うん」

 「んじゃ仕事戻るから」

 「待って!? もう少し慰めてくれてもいいんじゃないですか立花さん!」

 「めんどくさいし、そもそも自業自得でしょ。私も悪いのは認めるけど」



 立花はダボダボの白衣をひらひらさせて立花は研究室の奥へと消えていった。




 するとすぐさま戻ってきて翔馬の肩を叩いた。



 「私もちゃんと謝ってないからな、ちょっと謝りに行ってくる」



 来るなら勝手にこいよ、と立花は言い残してエントランスへ続く廊下へと消えていった。翔馬はその後を追うように急いで走っていった。




△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△




 「よーっす」

 「あれ立花さん………に、翔馬か? それ」

 「朝比奈ぁ……」

 「うわやめろこっちくんな! つーかなんで泣いてんだお前はぁ!!」



 エントランスに翔馬と立花が戻り、涼がそれに気づくと翔馬が子供のように泣きながら涼の方へと近寄りそれを涼が拒んでいた。



 そんな二人を無視して立花は一人でさっさと琳のところへ向かった。



 「香月琳、いるか」

 「あ、立花さん」

 「……お取込み中だったか?」



 立花は琳が千鶴に撫でられているところを見て少し気まずそうにしたが千鶴が短く「大丈夫」と言って琳の頭から手を離した。



 「香月琳、さっきはすまなかった」

 「あ……いえ、もう気にしてませんから。こちらこそすみません、わざわざ謝りに来てもらって」

 「そうか、良かった。おい須崎」

 「なんですか立花さん………」

 「いつまでそうしているんだよ、何のために来たんだ」

 「はっ!」



 翔馬は急いで琳の方へとやってきていきなり土下座し始めた。



 「あ、あの……翔馬……さん?」

 「すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」




 翔馬のその叫びは、エントランス全体に響き渡った。




 「俺が琳君のことをあまり考えず楽観的に見ていたために、君を怒らせるような真似をして、本当に申し訳なかった!!」

 「別にいいですって、もう気にしてませんから」

 「本当にか……? 本当に許してくれるのか………?」

 「許します! 許しますから泣かないでください!」



 いつものイケメン要素がすべて吹き飛ぶのではないかというくらいに泣きじゃくり琳に抱き着いた。







 その後無事に翔馬は泣き止み、また一から、今度は懇切丁寧に、そして重要なことを漏らさないように琳にここに至るまでの歴史や今後のことや説明をした。








 こうして琳は庭園の守り手(ガーデンキーパー)のメンバーに温かく迎えられ、無事メンバー入りを果たした。

少し立花のキャラがぶれましたかね、きっと大丈夫だと信じましょう。

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