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ビーストギア Another  作者: 戮
アリア編3

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俺も怪人

第四話 俺も怪人


 画面の中。


 黒い存在が、ゆっくりとキッドの前へ立った。


「…………」


 紀人は何も言わなかった。


 さっきまで騒がしかったコメント欄も、一気に空気が変わっている。


『誰だこいつ』


『さっきの奴じゃないよな?』


『サクラ(仮)吹っ飛ばしたぞ』


『敵?』


『いやどう見ても敵だろ』


『キッドめっちゃ怒ってる』


「……そりゃ怒るだろ」


 紀人は小さく返した。


 画面の中の自分を見る。


 覚えている。


 サクラへ伸ばした手。


 あと少しだった。


 その直前。


 黒い奴が現れて、サクラを吹き飛ばした。


 そこから先は。


 自分でも、ところどころ記憶が曖昧だった。


 何を考えていたのか。


 どう戦っていたのか。


 ただ。


 腹が立っていた。


 それだけは覚えている。


「…………」


 紀人は再生を続けた。


     ◇


 画面の中で、キッドが黒い存在へ飛びかかる。


『うわ』


『速っ』


『完全にキレてる』


『さっきまでと動き違わない?』


「…………」


 紀人も眉を寄せた。


 確かに違う。


 サクラと戦っていた時とは。


 もっと雑で。


 もっと荒い。


 速さと力だけで押している。


 相手の動きを読むより先に、拳を振っている。


「……俺、こんなだったのか」


 黒い存在が攻撃を受け流す。


 キッドは構わず追う。


 また拳。


 また蹴り。


 距離を取られても、すぐに詰める。


『落ち着けキッド』


『怒りすぎだろ』


『サクラ(仮)のことで頭飛んでる』


『誰か止めた方がいいんじゃね?』


「…………」


 止めろ。


 今なら。


 画面の外からなら簡単に言える。


 でも。


 あの時の自分には。


 たぶん、何も聞こえていなかった。


     ◇


 黒い存在が距離を取った。


 そして。


 何かを取り出す。


「……ここ」


 紀人が画面へ顔を近づけた。


 メモリー。


 自分が使っているものと、よく似ている。


 あの時も気づいていた。


 けれど。


 戦っている最中には、細かく見る余裕なんてなかった。


『え?』


『それキッドのと同じじゃね?』


『メモリー?』


『こいつも使えるの?』


『何で?』


「俺が聞きたいよ」


 紀人が呟く。


 画面の中で。


 黒い存在がメモリーをセットする。


 蓋が閉じる。


 次の瞬間。


 身体が変わった。


『うわ!』


『怪人になった!?』


『鳥?』


『ワシっぽい』


『さっきより完全に怪人じゃん』


「…………」


 紀人は黙って見ていた。


 ワシのような怪人。


 自分もワシのメモリーを使う。


 同じ種類の力。


 なのに。


 姿はまるで違う。


「何なんだよ……これ」


『同じメモリーなのに違くない?』


『キッドはヒーローっぽいのにこっちは怪人』


『使う奴で変わる?』


『そもそもメモリーって何なんだ』


「だから俺に聞くな」


 いつものように返す。


 でも。


 声には、ほとんど力がなかった。


     ◇


 戦闘が激しくなる。


 空中へ飛ぶワシ型の怪人。


 キッドが追う。


 しかし。


 届かない。


 地上から攻撃する。


 かわされる。


 黒い存在が上空から攻撃。


 キッドが受ける。


『キッド不利じゃね?』


『飛べないのキツい』


『さっき飛べるって言ってた奴どこ行った』


「俺だよ」


 紀人が反射的に返す。


 でも。


 その直後。


 画面の中の自分に異変が起きた。


「…………」


 紀人の表情が止まる。


『え?』


『キッド?』


『なんか変じゃない?』


『頭……』


 紀人は無意識に再生を止めた。


     ◇


 画面の中。


 自分がいる。


 いや。


「……これ」


 紀人はスマートフォンを持ち直した。


「俺?」


 頭部。


 ヒクイドリを思わせる異形。


 腕。


 カンガルーの特徴が、装備というより身体そのものへ近づいている。


 脚。


 ノミの異質な形。


 ヒーロー。


 そう呼ぶには。


 あまりにも。


「…………」


 紀人は画面へ顔を近づける。


 何度見ても変わらない。


 間違いなく。


 自分だ。


「こんな姿……してたのかよ」


 あの時。


 身体がおかしくなっている感覚はあった。


 力が増していく。


 頭の中が熱くなる。


 止まれない。


 でも。


 自分の姿を、自分で見ることはできなかった。


 今。


 初めて。


 外から見る。


『怪人じゃん』


「…………」


 その一言に。


 紀人の指が止まった。


『キッドまで怪人になってない?』


『これ、さっきの黒い奴と何が違うの?』


『メモリー使いすぎると怪人になるとか?』


『大丈夫なのこれ』


『むしろキッドも元から怪人側?』


「……違う」


 思わず。


 すぐに言った。


「俺は怪人じゃねえ」


 誰も聞いていない。


 でも。


 あの日。


 黒い存在にも同じようなことを言った。


 お前だって怪人じゃないか。


 そう言われて。


 紀人は否定した。


「……俺は」


 そこで言葉が止まった。


 画面を見る。


 どう見ても。


 怪人に近い。


「…………」


 サクラも。


 元は人間だった。


 それが怪人になった。


 なら。


 自分は?


     ◇


 紀人は再生を再開した。


 画面の中では。


 キッドの姿がさらに異形へ近づいていく。


『ヤバいヤバい』


『これ止めないとダメなやつだろ』


『誰か何とかしろ』


『キッド本人分かってんの?』


「……分かってなかったよ」


 紀人が小さく答える。


 全然。


 分かっていなかった。


 ただ。


 黒い奴を倒す。


 それしか考えていなかった。


『怒りで変わってない?』


『サクラ(仮)やられてからおかしくなってる』


『感情で暴走するタイプ?』


「…………」


 怒り。


 サクラ。


 怪人。


 メモリー。


 全部が頭の中でつながりそうになる。


 でも。


 まだ何も分からない。


「俺も……」


 紀人は自分の手を見る。


「怪人になるのか?」


 答えはない。


 画面の中では。


 異形となったキッドが黒い存在へ向かっていく。


 その姿だけが。


 嫌になるほど。


 はっきり映っていた。


     ◇


 その時。


 映像の向こうから声が飛んだ。


『サクラがお前のそんな姿を望んでるか!』


「……え」


 紀人が顔を上げる。


 北山。


 画面の中。


 北山がこちらへ向かって叫んでいる。


『サクラがお前のそんな姿を望んでるか!』


 もう一度。


 確かに。


 サクラ。


 そう言っている。


『え?』


『今サクラって言った?』


『サクラ(仮)の名前知ってるじゃん!』


『仮じゃなかったw』


「そこじゃねえよ」


 紀人が反射的に突っ込む。


 コメントはさらに加速する。


『この人何者?』


『キッドと知り合い?』


『サクラとも知り合い?』


『さっき元同門説あったよな』


『全員同じ道場とか?』


『空手の先生?』


「…………」


 紀人は画面を止めた。


「先生……」


 北山の顔を見る。


「なんで分かったんだ?」


 あの日も。


 あとから聞いた。


 なぜサクラだと思ったのか。


 北山自身も。


 分からないと言っていた。


 ただ。


 そんな気がした。


 それだけ。


「そんな気がしたって……」


 紀人は眉をひそめる。


「そんなので分かるか?」


 答えは出ない。


 北山も知らない。


 紀人も知らない。


 なのに。


 あの言葉は。


 確かに届いた。


     ◇


 再生する。


 北山の声を聞いたキッドが止まる。


 異形になっていた身体が。


 少しずつ。


 元へ戻っていく。


『戻った!』


『何だったんだ今の』


『サクラの名前で戻った?』


『やっぱ知り合いじゃん』


『先生っぽい人の声効きすぎだろ』


「…………」


 紀人は画面を見つめた。


 サクラ。


 北山。


 自分。


 そして。


 メモリー。


「何なんだよ……」


 分からないことばかりだった。


 サクラがなぜ怪人になったのか。


 黒い奴はなぜメモリーを使えるのか。


 同じメモリーでも、なぜ姿が違うのか。


 自分は、なぜ怪人のような姿になったのか。


 そして。


 北山は、なぜサクラだと分かったのか。


 何一つ。


 答えがない。


「…………」


 紀人は停止した画面に映る自分を見る。


 元のキッドの姿。


 ヒーロー。


 少なくとも。


 見た目は。


「……俺は怪人じゃねえ」


 もう一度。


 小さく呟く。


 でも。


 今度は。


 さっきほど強く言えなかった。


 自分が本当に何なのか。


 その答えを。


 紀人自身も。


 まだ知らなかった。


※本作は、作者とChatGPT(AI)による合作作品です。物語の企画・原案・世界観・キャラクター設定・物語構成・展開の方向性など、作品の根幹となる部分は作者が制作しています。それらの原案や設定、作者との相談・修正・指示をもとに、ChatGPTが文章化、表現の調整、推敲などを担当しています。作者とAIが互いに案を出し、検討と修正を重ねながら、一つの物語として完成させています。

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