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第一話 風と音

この作品は、「ブリッジ・スピリッツ ~橋に宿る妖精と橋獣のものがたり~」のサイドストーリーとして作ったものです。ブリッジ・スピリッツにでてくる橋の話とリンクしております。

  その少年は、橋が好きだった。


  時間があれば

  自転車に乗って

  橋を見に行く。


  橋の上に立ち

  川を見る。


  橋の下にもぐり

  橋脚を見る。


  橋の形も

  橋の音も

  全部好きだった。


  けれど

  学校の友だちは言う。


  「また橋?」

  「変なやつ」


  少年は笑う。


  「橋ってさ」

  「いいんだよ」


  でも

  うまく説明はできなかった


  その日も少年は

  橋に来ていた


  他の人は足を止めず歩いて行く

  けれど少年は

  自転車を欄干にあずけ

  目をとじたまま

  空を見上げた


  そのまわりを

  やさしい風が舞う


  髪の毛が

  やわらかく揺れる


  少年は

  気持ちよさそうに笑った


  「うん、いいかぜだ」


  少年は耳を澄ました。


  橋の音


  水の音。


  人の音。


  全部が混ざって

  橋の音になる。


  少年は

  橋の音も好きだった。


  その日

  ふと

  少年はつぶやいた。


  「今日は

   橋がうれしそうだな」


  足音。


  話し声。


  自転車のベル。


  自動車のエンジン


  少年は欄干にもたれて

  川を見ていた。


  そして

  そっと目を閉じる。


  音の中で

  小さな声。


  「おと、いっぱい」


  少年は目を開ける。


  誰もいない。


  人は普通に歩いている。


  少年は

  橋の下をのぞく。


  川の水が

  光っている。


  少年は笑う。

  「やっぱり

   この橋好きだな」


  カバンからノートを出す。


  そこには

  橋の名前

  川の名前

  感想


  が書かれている。


  少年は書く。


  「新町橋」


  「新町川」


  そして少し考えて。


  「風と音がやさしい橋」


  そのとき

  また風が吹いた。


  少年は空を見上げる。


  ふと


  聞こえた気がした。


  「いいおと」


  少年は首をかしげる。


  誰もいない。


  橋の上を

  人が歩いているだけだった。


  けれど少年は

  少し笑った。


  「……今の、なんだろう」


  ノートを閉じる。


  少年は

  まだ

  知らない。


  橋の

  川の

  秘密を


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