第7話 いつもと、少しだけ違う
休日、ショッピングモールで昼を済ませたあと、特に目的もなく、館内を歩いていた。
人混みの中で、不意に足が止まった。
見覚えのある横顔が、そこにあった。
――違う。
いや、同じだ。
けど、どこか違う。
白を基調にした服。フリルのついた袖口。
胸元には、淡い色のリボンが結ばれている。
そんな格好、見たことがない。
……いや、それより。
視線が、手元に落ちる。
片手に提げた紙袋の口から、
レースのついた布と、小さなリボンが覗いていた。
(……ああ)
理由は分からないまま、妙に納得する。
肩のあたりで揺れる髪が、左右で軽く結ばれていた。
――結んでるのか。
自分でもよく分からないまま、視線だけがそこに引っ張られる。
そのとき、
「……なに」
ふいに、視線がぶつかった。
低い声だった。
いつもと同じ、少しだけ棘のある言い方。
「いや……」
言葉が続かない。
視線を逸らして、でもまた戻してしまう。
紗夜は一瞬だけこちらを見て、すぐに興味を失ったみたいに視線を外した。
「別に」
そう言って、手に取っていた雑貨を元の場所に戻す。
――いつも通りだ。
なのに、さっきからずっと、どこか落ち着かない。
「……なんか」
気づけば、また口を開いていた。
紗夜が、面倒そうに視線を寄こす。
「……雰囲気、違うな」
一瞬、間。
紗夜の動きが、ほんのわずかに止まる。
「……は?」
聞き返す声は、いつも通り。
でも、ほんの少しだけ間があった。
「いや、その……」
うまく言葉が出てこないまま、視線だけが泳ぐ。
紗夜は一度だけこちらを見て、
それから、すぐに逸らした。
「……別に」
今度は少しだけ短く、ぶっきらぼうに。
そのまま歩き出す。
さっきより、ほんの少しだけ早い足取りで。
少し迷って、
――なんとなく、そのまま後を追った。
並ぶわけでもなく、少しだけ距離を空けて。
紗夜は何も言わない。
けど、追い払うような様子もなかった。
店をいくつか見て、
他愛もないやり取りを、いくつかして。
それだけだった。
それだけのはずなのに、
いつもより、少しだけ長く感じた。
やがて、館内の出口が見えてくる。
「じゃあ」
紗夜が立ち止まる。
それだけ言って、振り返りもしない。
「……ああ」
短く返すと、紗夜はそのまま歩き出した。
小さく揺れる髪と、
紙袋の中の淡い色が、視界の端で残る。
なんとなく、しばらくその背中を見ていた。




