お爺ちゃん、着替える
やっと復活できました!
遅れてしまって大変、大変すみませんでした!
儂らは穂村が羽田さんに抱きついたままなのを眺めていると、準備を終えた人が順々に歩いてくる。
こっちに歩いてくるのは……ヒナとカナかの? 楽しそうにストレートの髪を揺らして歩いてくる所、ヒナじゃな。
カナは眩しいのか、おでこ辺りで手を立ててる。
「ヒナとカナが来たみたい」
「よっと……どうせならみんなで楽しみたいからね~」
「なんで私を見るんですか」
えぇ~だってこういうのは、鳴の得意そうだからと羽田さんから離れた穂村が、意地悪そうなニヤニヤした顔でこちらを見る。
儂を何だと思ってるんじゃ? それに穂村の前ではそういった事やってないはずじゃが。
解放された羽田さんは源野くんに静かに隠れてしまった。
「先程も音羽さんが意味深に鳴を見ていたが、何かあるのか?」
「私はよく分かって無いんだけど……」
源野くんの言葉に適当に返しておき、先程から静かで位堂さんの事を忘れてたの……そういえばどこに行ったのかの?
儂は周りを見渡すとヒナとカナの方に位堂さんがいて、何かを話していた。
何か盛り上がっているようじゃな、ん? 奥に見えるのは雫じゃな、凄くどんよりしてるのはなんでじゃろうな。
「やぁ……鳴」
「雫どうしたの? 何時もよりテンションが低いようだけど……」
「気にするな、どうせ私のなんて……」
雫は、話している3人を通り過ぎて私の方へ歩いてきて喋りかけてくる。
何のこと? と思ったが、視線が儂の胸の方に向かっていた為なるほどと思って黙っていた。
のだが……案の定、穂村が反応してくる。
「胸が小さいからって、落ち込まなくてもいいじゃない~」
「お前は! 今度こそ、その黙らない口を抑えてやる」
からかい混じりの穂村の言葉に雫は、掴みかかるように追いかける。
多分、昨日遊んできた時もイジられたんだろうな~と儂は思った。
そんなやり取りをしていると、話ながらこっちに3人が歩いてきた。
「そういえば、音羽さんと澪さんはどうしたんですの?」
「えっと、話があるみたいなんだけど、私も知らない」
位堂さんがこっちに聞いてくるが、儂も内容がよく分からないんじゃよ。
ヒナとカナは「今日は何する?」「砂の、お城でも作る?」などの話をしていた。
なんか絵になる……て言ったら殴られるかの? そんな2人じゃないが。
少ししても2人がやってこないので、儂達は着替えに更衣室へ向かった。
羽田さんが離れなかったけれど、穂村が半強制的に引っ張って放り込んだ。
「……」
「ん? どうしたの、鳴……て、大胆~」
全員に渡して名前の書いた袋に入っていたのは、露出大の水着……もはや紐に近い。
儂はとりあえず、着替え途中の下着のまま……両手でそれを持って、無言で床に叩きつける。
その袋をあさって見ると、もう1つ袋が。
「えっと……『こっちが本当の水着、驚いた?』」
再び同じ動作を紙ですることになるとは思わなかったわ! 音羽、絶対儂をからかっておるな?
前みたいな、想像しただけで鼻血を出す儂じゃないわい!
「なんか、鳴が珍しい事をしているな」
「まぁ、あれは誰だって恥ずかしいよね~」
雫と穂村が叩きつけられて床に落ちてる、紙と水着を見て呟いた。
位堂さんは「流石に私も、それは……」と言って、それに同意なのかヒナとカナも頷いていた。
みんな水着に着替えて、更衣室に出ていくのを見て……残ったのは羽田さんと儂。
何もみんな言わない所を見ると図ったな。
「羽田さん、様子が変だけどどうしたの?」
「……」
羽田さんは静かに更衣室の壁でうずくまっているだけ、声をかけても返事は帰ってこなかった。
なんか昔を思い出すの……あれは、みんな誰も信じられない時の事じゃ――
――とダメじゃな、つい昔話をしてしまうわい。
しょうがないの、少しくらい話を聞いてやるかの。
儂は静かに、羽田さんの方へと歩いて行く。
何がトリガーなのかは分からない……だけれど、話をしないことには始まらない。
「「……」」
儂は静かに、羽田さんの隣に腰を落とす……少し汚れてるが別に構わんじゃろ。
そのまま何もしない時間が数分も続いた……。
少し和らいだのか、羽田さんがぽつりと呟いた。
「昔ね、お母さんとお父さんがいたの……」
元気の無い声でちょっとずつ、声に出していく。
内容は両親がいたらしい、だけれど今はいない……それが意味するのは……。
「そう、それでどうしたの?」
追求するのではなく静かに、頷き聞くだけでにする。
話が終わると、羽田さんは再び黙ってしまった。
それを見ると、儂は頭を撫でる。
トラウマの理由は恐らく、両親の死因……殺人事件じゃの。
小さい時に両親が死ぬ瞬間を見てしまったから。
その犯人も銃を持っていたらしく、銃を見るだけで体が反応してしまうらしい。
「大丈夫、大丈夫だから」
儂はそう羽田さんに優しい声で言い続ける。
彼女が安心出来る様に、源野くんはどうやってあそこまで戻したんじゃろうな……。
羽田さんは、何かを堪える様に体が震える。
それは、泣くことの羞恥ではなく……そのトラウマのせいでくる恐怖の感情だろう。
なら、儂は静かに抱きしめるだけじゃ。
すると何かが崩れる様に、羽田さんは声を出して泣き出した。
「うえぇぇ――ん」
子供の様に泣き叫ぶ。
まだ根本的な解決をしたわけじゃない、これから変われるかは羽田さん次第じゃ。
泣き止む頃には、元通り……という訳には行かなかったが。
儂だけじゃこれが限界かの。
とりあえず、羽田さんも着替えさせてみんながいる砂場へ歩いて行く。
後ろにくっついて少し動き辛いがの、みんなと一緒に解決できればいいの。
次は、1週間後 3月14日予定です。




