第18章:長い道のりと自己受容
°°°°° リタの視点 °°°°°°
エリーゼ!
私の声が響き、橋の残骸のおかげで通った大きな峡谷に反響した。
エリーゼはまだシアクの腕の中で眠っていた。シアクは彼を抱きながら、私にはとてもイライラさせる笑みを向けていた。まるで彼女の顔が人生で一番大事なものであるかのように。
「だから頬をつまむのをやめろ!」
「断る! この特権は私のものだ、何があっても手放さない!」
何かが内側で壊れるのを感じ、彼女を見ているだけで額の血管が脈打った。
深く息を吸って、それを忘れようとした。
一度…
二度…
三度…
しかし感覚は消えなかった。何も悪いことをしていない、しないと誓った少女をただ殴るわけにはいかない…
とはいえ、そう見ていると…あの誓いにはやや疑問の余地がある理由があった気がしてきた…私の弟子に対して。
「シアク…」
「はい?」
「エリーゼを渡せ。」
「嫌。」
即座に、まるで待っていたかのように素早く答えた。
…聞き間違えたか?もう一度言ってくれるか?
「嫌だって。見て、彼が私の腕の中でどれだけ心地よさそうか。起こすのは悪くないか?」
チッ…私の弟子だ。
「そして私は彼の花嫁……親友!」
私を狂わせようとしている…言いかけて後悔したのは分かっている…
彼を知ってからほんの数時間だ…
礼儀として微笑んだ。声を上げる必要は…なかった。
「時間は相対的だよ、エルフなら分かるはず。」
それ以上言わなかった。エルフの中にはゴブリン、狼、人間、ドラゴン、さらにはオークに夢中になる愛好家もいる…特別な趣味の者が常にいるものだ。
エリーゼを取り戻すために何をすべきか考えた。この場所では自然が乏しいため魔法は使えない。ならば物理的にやるしかない。
彼女の手から引き離そうとした時、エリーゼの繊細な顔を見た。
穏やかだった。
誰がどれだけの間、彼の柔らかな手で私を運んだか分からないのに、あまりにも穏やかだった…
シアクの体にもたれて穏やかに呼吸し、いつもの傲慢な表情も、当たり前のことを明かされた時の間抜けな顔もなかった。
なぜか、彼が私のせいでこうなっていると思うたびに複雑な感情が芽生えた…胸の不快感が打ちつけた。
少し苛立って呟いた。
「…分かった。」
シアクは顔を上げた。
「え? 本当?」
「少しだけ、彼が自分で目を覚ますまで。」
「ふふふ~ 師匠にも小さな心があるんだね。」
「殴って取り上げてほしいのか?」
「いいえ結構、彼で十分!」
シアクはすべての歯を見せて笑い、再び歩き始めた。
ため息が漏れるのを抑えられなかった。
この旅は本当に頭痛の種だった。
そしてまだ遺跡から出られていなかった。
峡谷を抜けて近づいた大きな水晶の湖を見た。何キロも他には何もなく、怪物も見なかった。
水晶の水面下では、海底近くの地面全体を覆う線のように紫色の花が輝き続けていた。
本当に美しく神秘的な場所だ。
エリーゼにも見せたい…でも良い思い出にはならないだろう。
腕を見た。シアクによればロストの攻撃で跡が残るはずだったが、腕には何もなかった。
何かが合わないが、何か分からなかった。気を失う前に覚えているのは、突然現れたロストの頭を破壊したこと、腕に焼けるような感覚と強い眠気を感じたこと、いつ意識を失ったかも分からない。
しかし意識を取り戻した時は湖の中にいて、下にエリーゼがいた。シアクが二人を引き上げるまでどう反応すべきか分からなかった。
誰かがすべてを準備したかのようだった。だが不可能だ。誰も私がここへ来ることを知らなかったし、ましてやポータルがこの場所へ連れて行くことなど。
「シアク、エリーゼが私と一緒に湖に飛び込んだ時、誰か他に見なかったか? 本当に一人だったか?」
奇妙だった。エリーゼがどうやって行き先を知ったのか…そしてどうやって歩いたのか…
「轟音がした。でもまあ…時々聞こえるんだ、本堂のゴーレムと戦う冒険者だと思うけど、正直確認はできない。」
基本的に何もない…
考える時じゃない。湖を見て座った…美しい環境だが、時間も資源も無駄にできない。岸を歩きながら近くの花を摘んだ。
そうして湖で小さな魚が泳いでいるのに気づいた。フラデラ髭という、ダンジョン内外で比較的一般的な種のようだ。手に水を感じ、魔法を集中して自分の一部のように感じ、水の一部を持ち上げて陸に打ちつけ、魚を外に出した。
「食料を釣ってるのか? 冒険者に見られたら嫉妬するぞ。」
コメントを無視して鞄を探し、小さな袋を見つけた。その中に識別の指輪があり、手にはめて魚に指輪を向けた。
[若いフラデラ髭、世界のコミュニティで非常に一般的な食料]
やはりそうか…
「かなり裕福なんだね? そんな指輪を持っているなんて…それともエリーゼのパパと結婚したのか?…義母—」
頭を殴った。アスビンのクズと私を結びつけるなど絶対に認めない。
「黙れ! 今日も明日も、永遠にあなたの義母ではない!」
シアクは私の言葉に舌を出した。
「どうかな…どうかな…」
魔法で魚を金色になるまで焼き、シアクに一つ渡して湖を見ながらしばらく食べた。
この最初の旅は惨事だった。エリーゼにほとんど何も教えていない…私は良い師匠ではない。以前の弟子たちはほとんどすぐに去った。一部は才能がなかったからだ…だが…エリーゼは違う…従来の方法で教え、次の太陽の競技会でTakahiroのクズを打ち負かす!
弟子と悪のライバルについての考えに浸っていると、聞き慣れた声が聞こえた。
「し…師匠?」
それは…彼の柔らかな声…完璧に分かったが、聞いた瞬間肩をすくめた。彼の目を見るのがとても恥ずかしかった。
「こんにちは坊や! 私はシアク、あなたの未来の花嫁、覚えてね?」
違うし、なることもない!
振り向いた時にはすでに叫んでいた。恥ずかしさが顔に浮かんだが、隠すには遅すぎた。
私…私…
ゆっくり近づき、エリーゼの驚いた小さな顔にそっと触れた…目覚めたのを見て笑わずにはいられなかった。愛しい弟子が目覚め、彼から目を離せなかった。
エリーゼは触れられている間ただ私を見ていた。小さな手を私の手に伸ばし、その小さな指は少し冷たかった。
それで、少し肩をすくめて彼に微笑んだ。
「良い夢を見たといいな、エリーゼ!」
「はい、見ました、師匠。」
小さな涙が彼の目から溢れ、少し怖くなったが、彼は私の心が永遠に大切にすべきと言う言葉を言った。
「あなたの夢を見たので。」
特別な言葉ではなかった。特別な意味もなかった、少なくともそう信じたかった。
しかしあの間抜けな笑顔と私の手に握られた小さな手が、胸の中で何かを揺さぶった。
なんて面倒な子だ…
目をそらし、何もなかったふりをした。
しかし、あの言葉を長く覚えているだろうと分かっていた。
「師匠、家に帰りますか?」
エリーゼは無邪気な口調で聞いた…
はいと言いたかった…だが輝く粒子を手に入れる必要があった…
「私はシアク、あなたは何て名前、小さな子?」
シアクはエリーゼに頭を下げた。髪が緑の目と対照をなし、好奇心の笑みで彼を見ていた。
エリーゼは答えなかった。ほとんど眠そうな目で、かろうじて目を開けていたが、それでも私の方に視線をそらし、この少女が誰か説明してくれるのを待っているようだった。
どうすればいいか分からずため息をついた。
彼女はシアク、ダンジョンで出会った「知り合い」で、道中同行してくれる。
「その通り、そして実は私が二人を湖から引き上げたんだ!」
シアクはエリーゼを空中に持ち上げた。
「だから救世主で、友達で、信頼できる相談相手と思っていいよ!」
なぜそんな風に言う? 報酬を期待しているように聞こえるが。
エリーゼは再び彼女を見た。目が左右に動き、何が起きているか処理しようとしていた。傷ついた小さなドレスがなびいていた。
「僕はエリーゼです…よろしく、シアク…」
エリーゼは少し緊張した笑みを浮かべた。
「なんて礼儀正しい答え! まあ、なんて良い子なの!」
エリーゼを強く抱きしめて左右に揺さぶった。エリーゼの迷惑な顔が私を見ているのが分かったが、何もしなかった。少し笑えたが、隠した。
「もう! もう十分、シアク、エリーゼを一人で歩かせろ、時間を無駄にした…」
シアクは一瞬止まり、エリーゼを地面に下ろした。彼の顔は少し赤くて迷惑そうだった。
「チッ、水を差す人…もうちょっと彼といたいだけなのに!」
また抱きしめる前にエリーゼの手を取り、前へ歩き続けた。シアクはぶつぶつ言ったが無視した。
「それは差別だ!」
「男は淑女を無視すべきではないですよ、師匠…僕が犠牲になって平和を保ちます。」
お前は子供だ、淑女のことを考えるべきですらない…
「それが一番いい! 来て、愛しい人、私が養う!」
本当に必死だな…
私たちが話している間、エリーゼから小さな笑いが漏れた。
ちらりと見た。とても美しかった。子供の頃、家で遊んだ草原を思い出させた。
その遠い記憶は、こんな人生も悪くないと思わせた。
そんなことを考えたのは久しぶりだった…エリーゼが私たちと暮らすようになってから。
姉がここにいてくれたら…
一瞬悲しくなったが、ナルミ、アウラ、小さなエリーゼの顔を思い出して笑わずにはいられなかった。
たぶん…私たちは一般的な家族には当てはまらない。
でもどういうわけか、私たちは家族なのだ。




