第5話 ハッピーエンド村が饅頭地獄すぎた件
頭の中で整理しておきたいことは沢山あったが、とりあえず俺とパトライトは宮廷から馬車でハッピーエンド村まで送ってもらった。あのダイゴロウとかいう俺の体に入っている奴が作った村らしい。ぱっぴーエンドか。馬鹿馬鹿しい。人間の人生の九割はバッドエンド
で終わるんだ。ハッピーエンドが許されるのは夢の国か御伽噺だけだ。
ん? 待てよ? 御伽噺。そう言えば、俺はこの世界に来る直前、書斎に陳列されていた幼少期に閲覧した書籍のタイトルを眺めていた記憶がある。その本のタイトルの一つに、ハッピーエンド村の饅頭怖い、というものがあった。俺はちょっと興味を持って明日読んでみようと思い眠ってしまったんだった。
ハッピーエンド村の地獄絵図。どんな内容だったか、子供の頃なのでもう覚えてないが、タイトルからして落語の饅頭怖いになぞらえた物語だろう。となると、このハッピーエンド村の特産品は、饅頭ということか。
「ハッピーエンド村は冒険者たちを支援し、世界がハッピーになるように尽力している村です。グレイ様は後進を育成したいとおっしゃって、この村をお作りになられると聞いた時は、なんて立派な志の持ち主なのだろうと、私、感動いたしました」
俺の隣にいたパトライトが胸に手を当て、感極まった様子で捲し立てる。
「だがその冒険者たちが、この国の傭兵として徴用され、対外戦争をしているんだろう」
俺の言葉は核心をついたようで、パトライトはうつむきつつ「何故勇者様はオシト陛下の横暴に無関心なのです」と逆に質問を返された。もう、自分に嘘をつくのは止めよう。俺はかつて世界を勇者ダイゴロウの中の人ではない。体は同じだが、心は別人だ。だかこんなところで事実をぶっちゃるのもなんだろうから、と、俺はパトライトを村にあるであろう酒場に招くことにした。
だが、村に入った途端、俺の眼前には、通りを挟んで何店舗にも渡る饅頭屋が立ち並んでおり、村人達や冒険者と思しき者達は皆饅頭を頬張りながら歩いていた。一体何故村が饅頭屋だらけなのか、理解に苦しむ。
酒場もおつまみは全て饅頭だ。俺は試しにその饅頭を手に取り二つに割り、外へ出てちょろちょろしていたネズミに食べさせてみた。すると、饅頭に群がったネズミ達が次々と倒れて死んでいってしまったのだ。
こっこれは・・・毒饅頭じゃないかっなんでこの村の奴らはこんなものを食べてるんだ!? 一体何故この村の住人や冒険者と思しき鎧を着込んだ者達は平気なんだ。パトライトなら何か知っているかもしれない。
「私、この村のことは饅頭が名産品ということ以外何も知りません。毒饅頭だなんて、言いがかりですよ」
「だがネズミが死んだんだぞっ」
「たまたまネズミには有害だっただけじゃないですか」
間違いない。この女、何を知ってて、すっとぼけている。そしてこのハッピーエンド村とかいうふざけた名前の村には何かヤバイ秘密が隠されている。パトライトをしばき上げて無理やり吐かせるか、それとも俺の体をした勇者をとっ捕まえて吐かせるかの2択だ。
否、いくらサキュバスとはいえ、女をしばき倒すわけにはいかない。ダイゴロウを探し出す。バッドエンジェルズ侵略の話を引き受けて、奴と共に向かうその過程で、やっちまおうと俺は心に決めた。
パトライトに俺の真実を話すのは控えることにした。俺に隠し事をしている女を信用するわけにはいかないからな。




